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第3話 スパダリの魔術ですべて解決!

 恐れていた第三皇子一味の乱入はなかった。翌朝、実に平和な気分でアリスンのスイートルームを訪ねた。


 チェックアウトまでまだ時間がある。ここで俺はある魔道具を取りだした。


「アリスン先輩、貴女はパーティー会場で、ケイシー嬢を突き落としてはいないと仰りましたよね?」


 そう話しかけると、アリスンは震えながらコクコクと頷いた。


「相手は恋仇ですから、つい発作的に突き落としてしまったとしても俺は責めませんけど」


「い、いいえ! 私はそんな恐ろしいことはいたしません!」


「俺は高等魔術科の一年ですが、通常の学生には扱えない超高等魔術も思うがままに使用できます。貴女の仰ってる内容が嘘か本当かもすぐにわかってしまいますが……」


「し、知ってます。あの、スパダ……いえ、アレク殿下が高名な魔術師で魔道具師であることも存じ上げています」


 さすが俺。上級生にまで知れ渡ってる有名人じゃないか。でも“スパダ”とはなんだろう。


 それはさておき。


「これから使う魔術の説明をすると、貴女の記憶を一旦俺が読み取り、その記憶映像をそのままこの魔道具へ録画します。この録画した映像は壁に映し出すこともできます。本当に貴女が無実ならば、それが明らかになりますが、本当に出来ごころでやってしまったのであれば……」


「やっておりません!!」


 まぁ、人間には自分のやらかしたことを、やっていないと嘘の真実として思いこむということもある。あのクズ皇子のせいでメンタルを病んでいる可能性もある。


 でも、彼女の言うことを信じようと思った。



 右手をアリスンの目の前にかざし、左手を魔道具へ添える。


真実を俺の眼に映しイグニスレフレクティオさらに、魔道具へ記録せよ(メモリアビジョン)



 パーティーが始まる前の映像が流れてくる。ケイシー嬢が豊満な胸を強調させるような見事な衣装でご登場だ。


「アリスン様、貴女はここで終わりよ! こんなことがあってもまだ婚約者を名乗れるかしら? 断頭台へ一直線ですわ!」


 アリスンの耳元で囁き、オーホッホッホと小声で笑う。その笑い声、小声でも実現できるのか。さすがは御令嬢だ。


 そしてケイシー嬢は自ら後ろに倒れる。まさに自作自演。「きゃぁ~」という悲鳴をあげて胸を揺らしながら階段を落下する。そして、その後の受け身も見事だ。致命傷を負わずに「アリスン様に突き落とされましたわ!」と周りに訴える。



 本当にアリスンは無実だったのだ。


 読み取った映像をさっそく壁に向かって投写する。ケネトにも確認してもらうためだ。


「見事だな、ケイシー嬢。背中から倒れるのはなかなか度胸がいる。前からダイブとは難易度がケタ違いだ。俺でもできるか疑問だ。ニコラス程度の男を手に入れるためにそこまでするか」


「……感心の仕方がちょっとずれてないか? ここはケイシーを断罪するところだろうが」


 改めて感想を述べると、すかさずケネトからツッコミが入る。


「いや、受け身も見事だ。素晴らしい」


 ここまで度胸のある女の子はなかなかいないぞ。惚れた相手を手に入れるために階段を後ろから倒れる……人を陥れるのは悪いことだが、その度胸は俺も見習わねば。


「まぁ、あの胸の揺らし方は素晴らしかったと思うが」


 ケネトは胸に視線が行ってしまったようだ。


 この動画を第三皇子に見せれば、ギロチンどころか罰金刑も免れる。と、そこで遅ればせながら遠慮がちなノックが聞こえた。


 チェックアウトまでは時間がある。学園関係者とみて間違いがないだろう。


 アリスンに暴行されてはいけないので、俺が出ることにする。


「どなたですか?」


「ア……アレク殿下。あの……ヒイラギ皇立学園の事務局のものです。アリスン嬢は……」


 声で俺だとわかったのか、怯えたような男の声が聞こえた。ドアを開けると数名の男達が控えている。


「アリスン嬢の無実がわかりました。後ほど証拠をお見せします。これから学園に戻りますが、お咎めなしということでいいですね?」


 それどころか、第三皇子にはアリスンへの謝罪と賠償を求めたいところだ。


「しかしニコラス殿下が……」


「ニコラス殿下にも証拠を見ていただきます。それでご納得いただけるはずです」


 アリスンに部屋を出るように促す。と、その前にこれも念押ししておかなければならない。アリスンと俺の名誉のためにも。


「今、この場に私達がいますが、泊ったのは別の部屋です。朝方、今回の事実確認のために部屋を訪れただけです。受付の方に確認されればわかることです」


 清い関係であることをアピールしておく。変な噂になっては可哀想だからだ。

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