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Story.63―――継承の時/さらば██よ

お久しぶりです、僕です。あけましておめでとうございます。(大遅刻)

去年の九月に投稿してからしばらく姿を消していましたが、投稿を再開しようと思います。目標として、春までには第二部完結を目指したいです。

今年も、よろしくお願いします。


「――? 〝魔祖十三傑〟第十一座の気配が、消失した?」


 ノアが、突然そんなことを口走る。あのヴォーティガーンが、この短時間の間に反応を消失させた? 不可解だ。〝魔祖十三傑〟との戦いは確かに短期決戦だけど、『木花咲耶姫』の時だって半日はかかったのに。


「ふむ。恐らくだが、『円卓の騎士』三名に討伐された可能性が高い。先程までの『目明かしの誓い』の状態や魔力の流れから推測すると……ガウェインが死亡し、ベディヴィエールが討伐した、と言うことか。

 ガウェインめ、無茶してくれたな」


 私の口を使ってマーリンが語った。

 まさか、日中最強のはずのガウェインが戦死するなんて。


(『円卓の騎士』とて、そういう者なのだ、クロム。怪我をする時は怪我をするし、死ぬ時は死ぬ。そも『円卓の騎士』というのは人造人間(ホムンクルス)の集合だ。人造人間(ホムンクルス)は無敵じゃない。例えそれが聖霊の分霊の化身だとしても、だ)


 マーリンは、私に脳内でそう語って、そのまま続ける。


「ともあれ、これでモルガンに専念できるというもの。私が知っている限りのモルガンの情報を教えよう。そうだな……モルガンの経歴からさかのぼろうか。

 モルガン・ル・フェイ。それは数千年前に一柱の聖霊から生まれた妖精――〝始原の精霊〟ヴィヴィアンの片割れ、〝終末の妖精〟。モルガンは時々表の世界に自らの分身を送り、終末の時を計っていた。そのうちの一体が、時の騎士王――アーサー王に恋した。

 そして彼女は自らをモルガン・ペンドラゴンと名乗り、アーサー王の王妃となった。その時には既にグィネヴィアは私の幽閉されている『永久牢獄塔』に封印されてしまっていてね。新しい王妃として間にモードレッドを成した。

 まぁそこから逆算するとだね」


 マーリンはそう言って一旦会話を断つ。結論を言い渋っているのだろうか。


「……どうしました、マーリン殿?」カナリアが問う。すると、マーリンは言葉を紡いだ。

 

「――いや、こんな話をしている暇は無くなった。モルガンが、そろそろ動き出す」

『えっ』


 そこにいる全員の声が重なる。


「要点だけ教えよう。これからいうことに従って行動するんだ。

 まず、モルガンは出自から分かる通り妖精だ。妖精には、自らの存在を定義するための重要なパーツとして三つの部位がある。それぞれ翅、心臓、そして脳髄。この三つを破壊すればモルガンは倒すことができる。

 そして協力者の存在について言おう。彼の名前は訳あって言えないが、その特徴は次のとおりだ。一つ、人間のような姿をしている。二つ、妖精。最後に、たまにとても古い訛りで喋る。以上だ。彼を見つけて作戦の一部に加えてくれ」

「はい、わかりました」


 ニコラ先生が全ての情報を紙に書き出してポケットにしまう。


「さて、私はそろそろここから退去することにする。他に質問はあるかね?」

「……では、私から」


 カナリアちゃんが、マーリンに問うた。


「――――エクター師匠は、無事ですか?」

「ほう、そう来たか。安心しろ、エクター・ド・マリスは危険という状況じゃない。けど……ふむ。そろそろ行ったほうがいいかもしれないな。このままここに残っていると君、師匠の死に目に会えなくなってしまうぞ」

「……! マーリン殿、場所を!」

「案ずるな、カナリアとかいう英雄の卵。そこまで私が転移してやる。だが〈夢幻郷アルカディア〉からだと座標の調整が難しい。遠くの地点へ飛ばされても文句は言えないぞ」

「それでも良い! 早く、私を!」


 マーリンは、私の身体で『亜原初魔術:魔法・夢月(ヴルトゥーム)』を使ってカナリアちゃんを転移させた。うわ、魔力結構ごっそり持ってかれる。


「では、私は退去する。また何かあればこのクロム・アカシックを経由して呼んでくれたまえ。ではな!」


 するり、と何かが自分の体から抜けた感覚がして、一瞬腰が抜ける。

「大丈夫ですか?!」と駆け寄ってくるアリスを制して、私は立ち上がった。うぅ魔力の欠乏が辛い……。呪力もほとんどないし。次戦う時は本当に〝反聖剣〟『不壊』の原理(アロンダイト)一本で戦うしかなくなるのか。


「……体に異常はあるか、クロム」

「――大丈夫です、先生。それよりもう、モルガンが」

「ああ。マーリン殿から話は聞いている。我々は一刻も早く件の『協力者』を探さなければならない」


 そうニコラ先生が言うと、近くから「あの〜……」という声が聞こえてくる。その方向を見ると、ウリスさんがオズオズと手を挙げていた。


「どうかしました? ウリスさん」


 私が問いかけると、ウリスさんは言った。


「私、その人知ってるかも」

『えぇぇぇぇぇ?!』

「どこで! どこで見た!」

「えっと、〈ロンドン〉だと有名な人でね。なんでも〈理想郷アヴァロン〉を追い出された王だーとかなんとか言ってる、〈ロンドン〉の気前のいい管理人みたいな人なんだけど」

「それで、名前は?」

「名前は……確か、


  オーベロンって言ったかな」




 ――――転移したカナリアは、未だ漏れ出す龍泥に塗れた大地を疾走する。

 修行の最中で手に入れた、精霊の力を借りて水面を走る技法――「水精走法」を使いながら、龍泥に触れることなく自らの師匠の生体反応がある方向へ進んでいく。

 その道中でも溢れ出てくる邪悪なる小翼竜レッサー・ファヴニールを、手に握る〝六業剣〟妖翼の双剣(ツイン・ファンタズム)で切り伏せる。

 切る。走る。切る。走る。切る。走る。…………

 その繰り返しで、エクター・ド・マリスのいるところへ近づいていく。

 そうした旅の果てに、カナリアはある一つの村を発見した。未だ、龍泥に汚染されていない貴重な人名の残る村。その村の中に、ひたすらに暴れまわる闘気が一つ。


「あそこか!」


 カナリアは速度を上げていく。

 不思議な結界で守られているのか、この村だけは龍泥が一切なく、中から自然発生することはない。しかし、それでも外から邪悪なる小翼竜レッサー・ファヴニールは侵入してくる。

 ある一軒家。

 そこには、〈文明異界領ロンドン〉から抜け出し、文明的な生活よりも原始的な生き方を選んだ、物好きな一家が住んでいる。

 しかし、龍泥の発生を契機に湧き出した邪悪なる小翼竜レッサー・ファヴニールの進行を食い止めるために戦いに出た父親は帰ってこない。そして今、この瞬間。彼が守り通そうとした小さな幸せも摘み取られようとしていた。


「ひぃっ」

「やめて、来ないで!」


 遺された母親と息子は玄関の扉を破壊して侵入してきた一匹の邪悪なる小翼竜レッサー・ファヴニールに襲われそうになっていた。

 逃げようとしているのだろうか。バタバタと足を動かすも、腰が抜けているのか立つことができない。

 その様子を見て油断したのか、邪悪なる小翼竜レッサー・ファヴニールはゆっくりと、ゆっくりと、恐怖をにじみださせるかのように近づく。

 そして遂に――口を開く。

 その様子は、まるでオオカミのように獰猛な牙をのぞかせ、見る者に本能的な恐怖を与える。

 もうダメ、とでも思ったのだろうか。母親は息子を抱き寄せ、涙ぐんで言う。「――――助けて」


 その瞬間、邪悪なる小翼竜レッサー・ファヴニールが爆ぜた。


 まるで人ならざるものの業の様に、ただ一瞬で細切れになったのだ。

 しかし、それはただ力任せに、速度任せにふるったのではない。ちゃんと邪悪なる小翼竜レッサー・ファヴニールの魔核を刻むように、亀裂が走っていた。

 母親は異変に気付き、顔を上げる。

 そこには、赤いストレートロングの髪を玄関から入ってくる風に翻しながら、泥のついた双剣を払っている一人の少女の姿があった。


「あ、あの……」

「大丈夫だ。もう問題はないだろう。私は用事があるので、先に行く。礼はいらないさ」


 そう言って少女は去っていった。

 そしてその少女―――カナリアは、村の中心部にある生体反応へ向かっていく。

 村の中心―――なにやらトーテムポールのような高さ約六メートルほどの石碑が立っているところに、彼はいた。

 片手に大剣を持ちながら、その大剣で軽々と横薙ぐ。前方から迫ってきていた大量の邪悪なる小翼竜レッサー・ファヴニールは、その一撃で消し飛んだ。

 そして後ろから迫ってくる邪悪なる小翼竜レッサー・ファヴニールを、もう片方の手で握っているレイピアで細切れにする。そのレイピアさばきは、カナリアが先ほど親子を助けるために行ったものを、より洗練させたものという印象を受ける。

 しかし、エクター・ド・マリスは、上から迫りくる邪悪なる小翼竜レッサー・ファヴニールの存在に気づけなかった。邪悪なる小翼竜レッサー・ファヴニールはここぞとばかりに魔力をまとった爪を立てる。


「エクター師匠、危ない! ―――剣技、解業。〝六業剣〟妖翼の双剣(ツイン・ファンタズム)、三の業〝無威徳無常の伺嬰児便(キリーク・ドゥルガー)〟!」

「な―――カナリア!」

「助太刀します、エクター師匠!」


 そこから始まるのは、一方的な蹂躙だった。

 変則的な太刀筋、圧倒的な膂力。

 全方位からくる攻撃を素早く見切り、弾き、カウンターを食らわせる技量。

 そうして数分がたったころ、あたりにいた邪悪なる小翼竜レッサー・ファヴニールはただの泥になっていた。


「やりましたね、エクター師匠」

「ああ、そうだね、カナリア……」


 勝利の余韻に浸っていた時、その時は来る。


「グッ……ガハッ!」

「エクター師匠?! 血、血が!」


 エクター・ド・マリスは吐血した。黄土色の地面に、血しぶきが舞う。

 そして彼は苦し気に言う。


「……私も、後先長くないようだ。さすがに、数十年前線から離れていきなり〝魔祖十三傑〟と対決とは、老骨にくるものがある」

「師匠、安静に……」

「カナリア、静かに。私も、まだ戦える。だがまぁ……私は、次の一振りで息絶えよう。だからカナリア、少し話をしよう。私の、『円卓の騎士』としての始まりを」

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