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Story.61―――円卓の騎士

遅れて、ほんとに……ごめんね……。

てすとべんきょうが、いそがしすぎて……グホァ!(絶命)


「――我らの本当の役割は、人類の敵たる〝魔祖十三傑〟を討つことです」


 視点は変わり、三人の騎士が一体の邪竜と合間見える。

 そこでは、新たな屠龍(ドラゴンベイン)が始まろうとしていた。

 ヴォーティガーンは不的な笑みを浮かべながら佇んでいる。まるで――そこにいる騎士たちが、敵ではないと思っているかのように。

 そんな様子に一人の騎士・ガウェインが痺れを切らして攻撃を仕掛ける。


「さっきからニヤニヤしやがって……これでも食らえ!」


 太陽のような灼熱を纏う聖剣――〝陽聖剣〟日出処の天子に、(ガラティーン・)我は至る子の座へとビハインド・デュナメスが振るわれる。

 それは全てを浄化する神聖なる炎。

 はびこっていた泥を一瞬にして蒸発させるに十分な熱量を持っていた。しかし――――それを容易く、ヴォーティガーンは〝聖魔剣〟邪滅の鉄槌(バルムンク)で受け止める。


「ほう。私の泥をいとも容易く薙ぎ払って見せるとは……しかし、その火力では私は灼けんぞ?」

「おう。誰がこれで終わりっつたよバカが!」


 ガウェインはパチン、と指を鳴らす。

 すると、何もないところから――――炎の拘束具が、ヴォーティガーンに巻き付いた。

 それは抵抗を許すことなくキツく絞まる。


「ぐっ、おぉぉ!」

「まだだ。

 ――――不可説の炎熱。灼ける轟雷。数多の(ちり)と知りながら、その焔は火を()べる。

 あらゆる力の天秤を、この炎に傾ける。

 三度の滅却、それに決別を申せ。

 召来するは我が剣、我が力。ここに焼却を命ず。

 ――――『原理解放(ビギニング・オープン)』、〝陽聖剣〟至高天に(ガラティーン)輝ける炎(・プロミネンス)!」


 じゅぅ、という音がした。それは、なにか液体が蒸発する時のような――そんな音がしたのち、ヴォーティガーンの姿は見えなくなった。


「だが、こんなところで終わるタマじゃねぇことはわかってるぜ。どうせこの泥が本体なんだろ?」


 ガウェインがそう虚空に問うと、地蔵から答えが返ってくる。


「いかにも。この私の大魔術『邪道魔術・邪権章典、拓かれたり(イビル・ファヴニール)』で生み出された龍泥(りゅうでい)が本体だ。だが魔核は一つのみ。即ち、私を殺したければ――――龍泥の中にある魔核を砕くことだ」

「上等だ」

「だが、私がそう易々と魔核を砕かせる気があると思うか? すでに手は打ってある。周りを見てみるがいい」

「――――ッ!」

「気をつけてください。ガウェイン、エクター二世。あれは――とてつもない魔力の塊ですよ」


 辺りを見渡すと、そこには小さな龍――否、ワイバーンの姿をした泥が立っていた。

 まるで狼か何かが二足歩行するかのようにじっと前傾姿勢をとってベディヴィエール達を観察している。

 そして殺せると思ったのか――――その小さな龍の群体が、ベディヴィエール達に襲いかかる。


「くっ! お、重い!」


 GURUAAAAAAAAAAAAAAAAAAA! と吠えながら斬撃を繰り出す。それをベディヴィエールは剣で受け止め、弾いた。

 そして、左腕の義手を機関銃(ガトリング)に変形させて、小さな龍を撃ち抜く。


「ほう、銃撃者(ガンナー)とは珍しいクラスだな。よもや騎士であるが銃を使うものがいたとは!」

「……銃に感心するのも良いが、こちらを見てもらわないと困りますよ」

「む――――ッ、な! いつの間に私の胸を貫いた?!」

「いつの間に……? 何をバカなこと。あなたがベディヴィエールに気を逸らしている時ですよ」

「それでもあり得ぬ。貴様が通ってきたのは龍泥だ。私の身体だ。しかも近づくまでに邪悪なる小翼竜レッサー・ファヴニールが貴様を襲うはずだ!」

邪悪なる小翼竜レッサー・ファヴニール……ああ、あの小さなワイバーンのことですか。あんなもの――私にとっては六撃で十分だ」


 エクター・ド・マリスはヴォーティガーンの胸に突き刺した剣を引き抜いた。

 血が流れるように、堰き止められていた泥が噴き出す。

 一定のダメージを受けたのであろう。ヴォーティガーンはその形を保てなくなり、液状の泥となってしまった。


「ふぅ。次出てくるのはいつでしょうか」

「ごめんなさい、エクター二世。私が実力不足なばかりに」

「問題ありませんよ、ベディヴィエール。

 そんなことより、トリスタンからの連絡はありましたか?」

「はい。()()()()()()()()()()は存在してします。エクター二世はその村の救出へ行ってください」

「了解しました」


 そう言って、エクター・ド・マリスはその生き残っている村を守るため、全速力で駆け出した。

 

「んじゃ、オレはまだここに残っていろってことか?」

「はい。ガウェイン、あなたはまだ私と一緒にヴォーティガーンと戦ってもらいます」

「おうよ。まだ奥の手は残してあるぜ」

「あれはなるべく使わないように。王からもそうお達しがあったのでは?」

「何年前の話だ、ベディヴィエール。ま、いざって時にしか使わねぇけどよ」

「――――それが、今にならないよう願うことだな、ガウェイン!」


 泥の中から形を成して現れたのは、ヴォーティガーン。しかし、以前と違う点は――――


(明らかに、魔力量が多い! もしや、魔核を持っているのでは?)

「ふむ。貴様、そこに気が付いたか。無論、この身体には魔核がある。貴様らを相手どるには、魔核を使わねば勝てぬと判断したからだ。

 ――――だが、この姿をとらせたからには覚悟せよ。貴様らに、龍の怒りを見せてやろう!」


 そう宣言したヴォーティガーンの身体が、変わっていく。

 背中からは羽が生え、額からは角が浮き出る。

 そして――〝聖魔剣〟邪滅の鉄槌(バルムンク)がヴォーティガーンの中に取り込まれ、それを爪へと変化させる。


「これなるは我が力の結晶なり! さぁ恐怖するが良い、死に体が!」

「……なるほど。すごい魔力だ。だが――こんなもの、第五座(アレ)に比べたら、どうってことないです! 行きますよ、ガウェイン」

「おうよ。すぐに蹴り付けてやる」


 勇者たちは駆け出した。そこにある邪悪へ向かって。

 邪竜は牙を向いた。ただ、己が目的を果たすために。

 その覚悟の強さ比べが――始まった。

 初撃は機動力の高いベディヴィエールがとった。左腕の義手を剣銃へと変化させてトリッキーに攻める。

 刀で斬りつけ、怯んだすきに脳天に銃弾を捩じ込む。腰に差した剣は、未だ攻撃には使われていない。


「ふっ、そんな攻撃、私に通用すると思うな!」

「知ってますよ。私は足止めです。ではガウェイン、お願いします」

「任されたぜ」


 ガウェインはその場で跳躍し、推定十二メートルほど跳ぶ。そして――――〝陽聖剣〟至高天に(ガラティーン)輝ける炎(・プロミネンス)を頭上へ掲げる。


「――――不可説の炎熱。染めるは黒。大雷は、若人の上げる叫び声が如し。伏して控えよ。我が力は、天界を裂き、輪廻の輪を灼く。

 降誕の時、されど今は終末の時。四度目の再臨、それを滅却する。

 呼び起こすは我が剣、我が力。ここに荼毘を命ず。

 原理(ビギニング・)暴走(フェイタルエラー)――――『燃えよ剣(ヴィジャヤ)、我が()身と共に鉄槌あれ(ガラティーン)』!」


 強烈な熱風が、ヴォーティガーンへと降り立つ。

 更に、その〝陽聖剣〟至高天に(ガラティーン)輝ける炎(・プロミネンス)が発する聖なる炎に身を包んだガウェインが、大きなエネルギーを持って墜ちてくる。

 それはさながら、小さな太陽が地表に降り立つように。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「GURUAAAAAAAAAAAAAAA! 小癪なぁァァァァァァァ!」


 炎が伴った一閃。それは周りの龍泥を一瞬にして蒸発させ――――そのまま地表に生えている野草を燃やした。

 ヴォーティガーンは抵抗しようと、その爪を振るう。


「くぉぉぉ! 裂けよ、この木偶の坊が!」

「――――ガウェインに集中するのも良いですが、私を無視するのは困ります」

「なっ……」


 龍泥が蒸発したことによって移動スピードが上昇したのか、囮に徹していたベディヴィエールが後ろに立っていた。


「ガウェインでさえ命を賭けて立ち向かったのだ。それに――私も続こう!」


 その手には、その華奢な体には似つかわしくない白銀の

超大剣(グレートソード)が握られていた。


「――――原理解放(ビギニング・オープン)!」

  

次回更新は普通に未定だよ

次こそはベディヴィエールが活躍してくれる。

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