ネルンスト式の時間展開(一次近似)
1)ネルンストの式を応用し、電極内部液濃度を一定[a]としたとき、 で表せば、その原始関数をF(x)とし、これを時間の関数F(x,t)に拡張できる。このとき、
の極限は、
となる。F(x,t)が実際どういった形になるかは不明だが、最初の近似として、F(x,t)=f(x)g(t)という掛け算形式に展開できたとすれば、
と表記できる。その際、g(t)はtの極限で1となる(
)。
2)そのような関数(数列)はいくつか考えられる。電気的に考えれば、
I(t)=(電位/抵抗)(1-e^(-(抵抗/リアクタンス)・t) のような式になるだろう。これを電位に読み替えると、tが0→100の場合、(電位/抵抗)=1、(抵抗/リアクタンス)=0.05を当てはめれば、それなりのグラフに見える。
3)I(t)=(電位/抵抗)(1-e^(-(抵抗/リアクタンス)・t)、すなわちA(1-C^(-Bt)) (C<1)のような数式(①式とする)が、今回のg(x) には最適のように思える。
I(t)=(電位/抵抗)(1-e^(-(抵抗/リアクタンス)・t) は具体的には、電流の流れていない自己リアクタンスLのコイル、 オームの法則に従う抵抗素子R、起電力Eの直流電圧源およびスイッチSからなる回路における、コイルに流れる電流I(t)の時間変化を示す式である(過渡現象時を想定している)。
4)一方、金属の電極が金属イオンを含む溶液中で平衡になっているときのButlerの式は、活性化の山を金属側から1-α、溶液側からα、活性化の山を越えて金属イオンが移動する分布がボルツマン則に従うとして、過電圧をηとしたとき、 とされる(詳細は各種文献参照)。見難い場合は、
ここで変数はηで、η=E-E_eq 、E_eqは参照電極を用いて測定した当該酸化還元対 Ox/Red の平衡電極電位なので、時間をtとして簡単にEtと記す(この場合、Etを単にtとした方が解り易いかもしれない)。
Butlerの式を①式にするには差項のα=1にすれば良い。αが1ということは、電極応答に於いて活性化の山が電極側に偏っている、と解釈できる(考えてみれば、当然か)。
抵抗と気体定数の記号が同じRなので混乱するため、改めて抵抗をReと置くと、 が
5)ここまでRL回路で考えたが、RC回路の方が電極応答に近いのではないか、と思えてきた。RC回路の場合、となるが、これではButlerの式と関連付けられない。
※ 上図の左でスイッチを閉じた状態。
そこで一旦目を閉じて、E=IR より、 として、
を
と読み換えることができれば、あとは4と同じ議論で、
が、
または
に相当することがわかる。
6)Butlerの式 でα=1として
とし、それを電位に読み換えて
としたものがg(t) なので、結果的に、ネルンストの式は以下のように拡張される。
最初に定めた g(t) の性質上、 なので、E0=1 となるから、下式に行き着く。
因みに、Na電極の場合、140.0 mmol/Lと160.0 mmol/L間の電位差を考えると、n=z=1、F=96485.3321、R=8.31446262、T=273.16+25 として、以下となる(単位はV)。
以上