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有能令嬢は、役に立ちたい

 外交パーティーの前に、ゾーリュックの伝統の社交ダンスの練習をしようということで、またいつもの場所に集まった。教えてくれる係の女子生徒とアロイヴが、先に覚えておいてくれたらしく、皆に教えていた。


(もう、踊れるようになってしまったけれど)

 フレデリク様の乱暴なダンス……というか、もはや創作ダンスに合わせていたのは伊達ではなかった。私は悩んでいた。

(自分は出来るけど、できない人がいる)

(みんなの役に立ちたいわ。でも、出しゃばっていると思われたら……)

 しかし、もうここではそんなこと考えなくていいのではないだろうか。そわそわしながら足元を見つめていた。

「ティアさん、僕と練習してくれない?」

 アリスランが声をかけてくれた。

「もちろんですわ」

 フレデリク様としか踊ったことがなかったので、あまりに踊りやすすぎて、踊りにくかったが、少しずつ慣れてきた。

「一緒になにかをするのは久しぶりだね」

「ええ」

 話す余裕もできてきた。

「剣じゃなくて、ダンスだなんて、昔の僕らが知ったらなんていうんだろうね」

「変なの!っていいそうですわね」

「あの……この間は、その」

「はい」

「いきなり、抱きしめたりして悪かった。だけど……ううん、全部済んだら話すよ」

 アリスランは、そう言って、無口になった。そんなことを、言われて、想像がつかないほど、わたしは……。

「分かりましたわ」

 ただ、そういって、ダンスを続けた。


「アリスラン様、わたし……その……」

「どうしたの?」

 勇気を出さねば。

「皆さんのお役に立ちたくて、困っている方のお手伝いがしたいんですの」

「ああ、じゃあ、あそこで、苦戦している子に教えてあげればいい。僕が、君から教わるように言うから」

「……ありがとうございます!」

 私は嬉しくなって、おもわず笑顔になった。

「ううん、なんだか、あの時の瞳が帰ってきたみたいで、嬉しい」

 アリスラン様はそう言って笑ってくれた。


◇◇


「ごめんなさい……」

 数分ほどやってみて、相手から出たのは謝罪の言葉だった。

「わたし、ふつうのダンスも覚えるのに数年かかったんですの」

「そうなんですのね」

 私は考えてみる。

「でも、ふつうの……この国のダンスは踊れるということですから、リズム感覚はあるはずですわ」

「……そうですわね!」

 相手の女生徒の目に光が戻る。

「だから、リズム感と手足の動きが必要なのですから、手足の動きは覚えてしまえばいいと思うんですの」

「数年で身につけたリズム感ですもの、きっと、大丈夫ですわ」

「ありがとうございます……!」

 女生徒に手を握られた。思ったことを話して、感謝された。

「いえ、こちらこそ」

 ただ、それだけの事実を感じて、瞳が潤みそうになるのを何とかこらえた。


 そして、わたしたちは、みんなが、休憩というか、そろそろ帰る雰囲気を出している中

「「できましたわー!」」

 なんとか、男子生徒との、実践も含めてダンスを終えることができた。

「きっと、いい日になるね、みんな、楽しもう」

 そう言って、アリスランが皆に言って、解散になった。


◇◇


 フレデリクは、家でため息をついていた。

「僕はしあわせなはずだ」

 謙虚でかわいらしいカロリーヌがそばにいてくれている。かわいげのないティアともういなくてもいい。


(ええ?わたくしより、成績悪いんですの?)

 ティアはそんなこと言わなかった。

(ダンス、もっと合わせてくださいませんか?)

 ティアはそんなこと言わなかった。

(風邪気味なんですの?うつさないでくださいましね)

 ティアだったら、無理しないでほしいと言ってくれた。

(わたし、このピンクブロンドの髪が気に入っているんですの)

 きれいだと思う。でも、ティアの黒髪は透き通っていて……


「クソッ」

 ものを蹴ってから、ベッドに突っ伏した。

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