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元・婚約者は、考える

「ティアさん、今回の、外交パーティーの面々だ」

 学園のある一室にて、ずらりと、上級生たちが並ぶ。きっと、名のあるメンツなのだが、当然、知っている人はいない。

「ティアと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします」

 決まったお辞儀をする。すると、拍手で向かい入れてもらった。

「諸君らに、先に言っておくが、彼女の噂に関して、自分で判断できないような者はここにいないと思っている」

「もちろん」

 黒髪で、碧眼の男子生徒が、頭の後ろに手を回しながら、気さくに答える。

「こんにちは、ティア嬢、俺はアロイヴ・モンブロー。よろしく。フレデリクのことは分かっているつもりだよ」


(いいのかしら、こんなに良くしてもらえて)

(……モンブロー……公爵家にいらっしゃったわ。殿下に、友達口調なのも納得。きっと、爵位が男爵なのも、この中ではわたしだけね……)


「ありがとうございます、期待に沿えるように、尽力しますわ」

「そんなことしなくても、ティアさんなら、大丈夫なのに」

 アロイヴはにこりと笑う。


(いいのかな)


「外交パーティー自体の企画は、学園が行うが、参加者のわれわれは、ゾーリュックの学園の生徒たちにも、誠実さを示し、潤滑油となること、将来の国の為政者として、経験をすることが求められる。よろしく頼む」


 アリスのこれまでに見たことのない、堂々とした姿だった。


(あれから、頑張ったんだね)


 私は、やはり、彼は尊敬の対象だと思った。


◇◇



「ティアさんが、王太子殿下に推薦されて、外交パーティーに一年生なのに、参加するらしいですわ」


 フレデリクとカロリーヌの耳に入るのには、時間はかからなかった。

「フレデリク様あ!わたし、あんな思いをしたのに、ティアさんが、誠実な振りをしているのが、悲しいですわ……!」

「そ、そうだね」

 カロリーヌは、不満をたれ続けるだけだった。フレデリクは、面食らっていた。婚約破棄が成立し、フレデリクとの、婚約の話が持ち上がろうとし始めてから、カロリーヌの様子が変わり始めたのだ。


 元は、ティアに愛嬌を感じないと思っていたことを、偶然、話しかけてきたカロリーヌにこぼしたのがきっかけだった。ティアは、整いすぎて、……つまらなかった。カロリーヌとは会話が弾む。そんな中で、ティアはそれを妬んで、彼女に嫌がらせをするようになった。みんなが言っている。だから、自分が守らねばと思った。


「こんなにつらい目にあったのに……!」

「そうだね」


 でも、ティアはどうしてあんなにあっさりと婚約破棄を……

(いいや)

 迷いなんて、ないんだ。

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