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マックスウェル缶コーヒー

作者: 笹木 人志

 A氏は地方の名産物が好きで、特に自販機ものを好んで買っては、SNSにあげていたが、はっきりいってコメントらしいものが付いたことはない。


 そんなA氏が、特に目的らしい目的地もなく、夕暮れに千葉のとある小さい駅を降りて、寂しい国道を歩いていると、ほの暗い街灯に黄色い自販機が浮かびあがって見えた。


 ああ、マックスコーヒーだな。A氏はそう思って、自販機の前に立った。そこに並んでいるのは、なんと一種類の缶のみで、缶のデザインはマックスコーヒーと似ているが文字が違った。

「マックスウェルコーヒー?」彼は、口に出して首を斜めにした。「何かの間違いかな?」


しかも、自販機のサンプルの下に書いてある、HOTやCOLDというラベルがない。今は既に12月だから、きっと全てホットなのだろうか?と自販機に貼り付けられた紙を読むと「温度加減は、自由に決められます。手に持って念じてください」と不思議な事が書いてある。


「こりゃ、ネタになるぞ」とA氏は自販機の写真を撮って、さっそくコーヒーを買った。

手にすると、思ったとおり全然温度管理がされていなくて、冷たい缶が彼の両手の中に収まっていた。

「熱くなあれ」と念じると、あら不思議、缶がどんどん熱くなり始めた。


「これはすごい!」と思い、それを飲むと確かに熱い。と彼は、一気に10本の缶を立て続けに買って、それを両手で挟む様に持って念じてみた。どんどん缶は熱くなったが、唐突にA氏は意識を失って倒れてしまった。


「無茶するから」と自販機の後ろから、一人の悪魔が現れた。「君の持つ体温を奪って、缶コーヒーの温度を上げているんだからね」


「おや、また死んだのかい?マックスウェルの悪魔よ」他の悪魔が現れた。


「ああ、人間って欲を出すと限度を忘れるのかね。」とA氏の腕から落ちた温かい缶を取り上げてごくりと飲み干した。「すばらしい適温の命だ。さてまた別の場所に設置するか」


悪魔達と、自販機は唐突に消えた。


翌朝、通りがかりの地元民が、倒れている男を発見した。死因は、低体温症だった。



 

マックスウェルの悪魔、マクスウェルの悪魔が正解でしょうか。物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェルが提唱した思考実験で出てくる架空の悪魔です。

この悪魔が、一つの容器の間に入れたしきりで、速度の速い分子(温度が高い)と

遅い分子(温度が低い)を選択してしきりを通す事で、しきりの片方の温度を上げられるか

という問題を提起しました。

ここでは、その悪魔がA氏の熱エネルギーを缶に移動させたというしょうもない

話です。


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