第76話 弟は姉の顔色をうかがうものです
本日二話目です。
・ふー、少し疲れたけど、魔力を無駄に放出出来たな。
なんかむなしいな。
意味も無く、雑な身体強化を、魔力を放出しきるまで、何もすること無く待機する。
無駄な魔力を多く込めているから、下手に大きく動いて怪我をするのも嫌だし。
ああ、無情。 いや、ただむなしいだけで、そこまで気にしている訳じゃ無いんだけどね。
まあそんなくだらないことは置いておいて、どのくらい掘れたのかが気になるな。
「キッカお姉ちゃん、スラリン、どんな鉱石が掘れたのかな?」
「私はまだ確認が出来ていないわ。 でも、ミスリルはいくつか見かけたわよ。」
ぷるぷるぷる
(うん、いくつか見付けたけど、仕分けはまだ終わっていないかな。 サラさんがまだ帰ってきてないからね。)
あ、サラお姉ちゃんのこと、すっかり忘れていた。
脳筋お姉ちゃんどこまで掘り進めて行ったんだろう。
「キッカお姉ちゃん、サラお姉ちゃんの居場所分かる?」
「サラの場所かしら、そういえば居ないわね。 スラリンに鉱石の確認をしてもらいつつ、この掘り進めた穴を進んでみましょうか。」
サラお姉ちゃんの掘り進めた穴の終着点は、最初に降りた場所からは見ることが出来ない。
積み上げられた石の影響もあるのだろう。
今更だが、3人そろって採掘をしているというのがそもそもおかしいのでは薙いだろうか。
普通、採掘、補給、運搬、耐久度の確認など、最低でもこの程度の人員は必要なのでは薙いだろうか、素人知識ではあるが。
あ、でも、キッカお姉ちゃんにはアイテムボックスがあるのか。
それは置いておいても人員はやっぱりすくなかったと思う。
まあ、ここの採掘場の場所を隠しているという理由もあるのだけれどね。
キッカお姉ちゃんと共に、積み上げられた石の山を雑に区分して、アイテムボックスへドンドン突っ込んでいく。
ゴツゴツはしているが石の山は片づき、新たな山が生まれた、いや、現れた。
おそらく、何重にも同じような空間が続いているのだろう。
僕は、ライトを付けつつ、キッカお姉ちゃんとスラリンが行っている、好物の仕分けを見ていた。
暇なので余談だが、石と好物は一応分けて発言をしている。
無秩序に掘り返され積み上がった山を石の山、キッカお姉ちゃんとか、スラリンが仕分けを終えた、雑でも区分された山を鉱物の山と呼称している。
本当にこれは自分自身の感性であって、おそらく、辞書とかで正しい意味を調べたら、違う言葉が出てくるのだろう。
知らんけど。
まあこんなくだらないことを考えている間に、2つ目の山が片付いたようだ。
お疲れ様です。 さ、次の山へ行きましょうか。
「あ、念話の存在を忘れていた。」
僕のこのこそっとつぶやいた一言を聞いて、キッカお姉ちゃんは淑女らしくないぽかんとした顔となった。
ウールが従魔になった頃、アンネリー家の皆で結んだ従魔契約の副産物の念話である。
「多分、キッカお姉ちゃんの方が直接のつながりが強そうだから、キッカお姉ちゃん、連絡お願いしてもいい?」
「ええ、分かったわ。」
ここで致命的な問題に気づいた。
あれ、さっき僕ら、魔力を無駄に使って、魔力が無いんじゃね。
同じことにキッカお姉ちゃんも気づいたようだ。
サラお姉ちゃんが掘ったであろう石の山を見て、薄暗い中でも分かるほどげっそりした表情となった。
薄暗い中でその表情となると、外のフレッシュドラゴンゾンビよりよほどゾンビのようだ。
こんなことを女性に対して口にするほど馬鹿でも無いけれど。
それは置いておいて、ここで救世主が現れた。
(僕なら、アンネリー家の皆と念話をつなげられるし、魔力も残っているよ。)
そう、我らがスラリン様である。
僕は跪き祈りを捧げた。
「お願いします。」
念話を僕とスラリンでしていることに、キッカお姉ちゃんは気づいているようであったが、僕が急にスラリンに跪いたことによって何がなんやら分からない、といった表情となった。
一応、ただのおふざけみたいなものなんだけどな。
例えるならゴチになりますみたいな感じかな。
今いまくりかいまスラリンとしていた会話をキッカお姉ちゃんに伝えると、キッカお姉ちゃんの表情は、満面の笑みとなった。
早速スラリンに連絡をしてもらえるように頼んだ。
スラリンが連絡をしている間に、僕はこそっとキッカお姉ちゃんに話しかけた。
「あのさキッカお姉ちゃん、今更だけどさ、念話の時に気づくべきだけどさ誰かから魔力を借りれば良かったんじゃ無いかな。」
「あ・・・はい。 あ、っと、そうですね。」
これを告げると、キッカお姉ちゃんの表情が抜け落ち、無気力な表情となった。
満面の笑みから、無気力な表情への切り替えは見事であった。
少し時間が経ち、スラリンの念話による連絡が終わったようだ。
(エル君、終わったよ、サラさんはこっちに向かってくるみたい、一応空いている空間に掘ったものを寄せて道を作りながら来るみたいだよ。)
(そっか、ありがと。)
「キッカお姉ちゃん、サラお姉ちゃんは今からこっちに向かってくるみたい。 一応掘ったものをどけつつ来るみたいだよ。」
「そうなのね、どこまで掘ったのか、整理が心配だわ。 本当に怖いわ。 まるで、うずたかく積まれた書類の山を見ている様な気分だわ。」
確かにな。 終らない書類のよう、まさにその通りだ。
ただ、あれだな、この世界に印鑑の様なモノはあるのかな?
家紋のための蝋とかはあると思うけれど、ポンポンはんこを押すだけでいちいちサインをしなくても済むようなモノはあるのだろうか?
終らない書類の山でこのことを思い出したよ。
「じゃあ少しの間だけれど、サラと合流するまで、少しでも仕分けを進めましょうか。」
ここからは僕も少しスラリンに教わりながら仕分け作業を手伝った。
簡単に魔力を流して通るのか。
軽く地面にぶつけて砕け散らないか。
色が見えるならば何色か。
大まかに区分するならばこれらだろうか。
宝石とかそういったモノが地面にぶつけられて砕けたり傷ついたりすることもあるかもしれないが、サラお姉ちゃんが採掘を行ったということで諦めている。
だってサラお姉ちゃんだもの。
確かに徐々に嫌になってくる。
少し時間が経過して、少し向こうから
ゴロゴロ ガラガラ
という音が聞こえてきた。
「キッカお姉ちゃん、サラお姉ちゃん帰ってきたかな。」
「そうね、おそらく帰ってきたわね。 良かったこれで終えられるわ。」
確かにそれを喜ぶのか。 僕としても嬉しいけど。
でも、結局いつかはこれを仕分けしないといけないんだよね。
どうしような採掘は楽しいけれど、仕分けとか鑑定とかは嫌なんだよな。
はー。
バッコ ガン ガラガラ
目の前の石の山が崩れた。
そしてひょっこりとサラお姉ちゃんが現れた。
「ただいま。 ごめん片付けをしてくれたんだね。 私がやるべきだったよね、本当にごめんね。」
「はー、まあいいよ。 今度からはちゃんと手伝ってよ。」
これがいつものやりとりなのだろうか。
さすがは双子、すごい気安い感じのやりとりだな。
僕と従魔みたいな感じかな。
まあそれはおいといて、ようやく上に上がれそうだ。
まあ普通に採掘は楽しかったんだけどね。
「そろそろ上に上がるの? あと、この鉱石の仕分けはどうするの?」
「そうね、今から上へ戻るわ。 あとは仕分けね、どうしましょう、お父様に相談して使用人への情報公開を依頼しましょうかしら。」
「そうだね、私もお願いしてみるよ。 キッカ大変だったんだよね。 うん、やっぱり私も頼んでみるね。」
キッカお姉ちゃんとサラお姉ちゃんは情報を公開して使用人に依頼して仕分けを手伝ってもらうようだ。
うん、多分許可は下りる気がする。
ダンジョンの仕組みとかを考えるならば、魔力溜まりに資源が出来る、普通に考えれば同じ仕組みか。
「よし、じゃあ上へ行きましょうか。」
ということで最初に降りてきた場所へと歩いて戻ってきた。
なんか言い方がめんどくさいから、今後は地下広場とでも呼ぼう。
ふー、これから仕分けとか大変なこともたくさんあるけど、採掘は楽しかったな、これからもちょくちょくやっていこうかな。




