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デス・チェンジ  作者: 照綱
第壱章異世界編 初めての異世界救済
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第一話 異世界の雰囲気



 昔から、神様などの神話などを信じなかった。神様など、いるはずもないと思っていた。

 それと同じで、異世界も俺は信じなかった。あんな魔法などというものが日常的に使われる世界なんてあるはずがないと、ーー


 だからこそ、異世界転生や異世界転移は石垣 龍太にはただの妄想に過ぎない、ーーそう思っていた。



* * *



 目の前が見えない。光に浴びて、様々な物が曖昧に見えていく。ーーここはどこだ。明らかに見たことのない光景だ。水の中にいるような感覚。身体の感覚がぼんやりしていて、呼吸が分からない。ーーしかし、その感覚も戻っていき、よく分からない意識から、


 ーーー覚醒する。



「ーーーっは?!」


 戻った意識とともに目が覚める。そこには空色が広がり、所々に白色が混ざる。ーー空だ。


「なんだ、ここ?どこだ。ーー草?」


 どうやら俺はあの『魔法陣』に入った途端に、ここまでワープした、ーーようだ。

 体を起こすとそこには草原が広がっていた。


「外国?ーーいやそんなわけないか。でもだったら本当にどこなんだ?」


 状況を把握するのが自分の知能では難しかった。が、あまり信じられないが、もしかしてという考えが頭をよぎる。


「異世界ーー転移?」


 『魔法陣』に入り、草原にワープした。

 確かに異世界物ではよく見かける機能で、よく見かける景色だ。ーーだけど異世界を信じていなかった彼は、


「まじか、本当にこんな世界、ーーあんのかよ」


 たかが妄想。そう思っていた彼は、その光景に改めて見て唖然とする。

 しかし、いざここにきたからといって何をどうすればいいかが彼には全く検討がつかなかった。

 異世界物の定番は少し察しがついていた。しかし、俺の異世界知識はその程度。あとはもう何が何だかだった。


「ーーー、街ならあるよな。探しにいけば」


 異世界といえど、住む所は必ずあるはずだとおもっている。なけなしの知識でそう考えた。しかし、今のところ周りは全て草原だ。


「途方に暮れることになるか、運が良く少し歩けば見つかるか。ーーそもそも転移ってんならこんな草原のど真ん中じゃなく街に転移させて欲しいもんだな。」


 そもそも自分がさっきやった異世界転移についてがまず全く分かっていない状況だ。どういう原理でこうなっているのか。


「ーー異世界にそんな事求めんのは野暮か。多分魔法もあるだろうし」


 ーーと、簡単に区切りを付けて足を動かし始めた。

 見た所は不気味な気配などは無いので進みやすい。というより、今の現実世界の方が不気味だ。『モノクロ』で映る何も動じないあの世界は本当に恐怖でしかいない。


「ーーん?なんだあれ」


 街を見つける前にある物体を見つけた。

 見た感じだと、巨大な一つ目があり、触手の様な物が絡まって地についている。目は閉じているようであり、動く気配は無かった。ーーが、


「見た目からして、あれ絶対ヤバイだろ」


 遠目からでも分かるその不気味で忌々しい気配には身震いする物がある。なんともグロテスクだ。


「さっさと街を探さねえと、ーーあんなのにやられるのはごめんだ」


 見なかった事にして、早歩きでその場を去る。



* * *



 それから体感的に十分ほど歩くも、特に何も見えず。そもそもの話ーー


「草原、ーー広過ぎんだろ」


 未だに辺りは全て緑に広がっている。この景色を見ていると、何も無いのでは無いかという疑問を浮かべてしまう程にーー。


「こんなん俺にどうしろっていうんだよ。もう少し手掛かりくらいは残してくれていいだろ。」


 あくまで自分の目的は冒険でも生活でもなく、異世界の救済だ。ーーそう言われたのだから、間違いはない。どうして自分なのか、どうしてこの時期なのか、色々悩みはあるが、とりあえず放っておく事にした。というか放っておかないと、この異世界の雰囲気についていける気がしなかったのだ。


「草以外だと見た感じ岩と木しか立体物がないんだが、ーーん、あれって人か?」


 周りをしょっちゅう確認してもそれしか情報はないと思っていた最中、なにやら人らしい影が俺の目に止まった。


「しめた!あの人に街まで案内してもらおう!できるなら異世界について色々聞こう!」


 数十分同じ光景を歩いたので精神的にかなりやられていた為、人影に大いなる希望を寄せた。


「あのー、すいませーん!」


「んっどうした?」


「!?」


 人とは言ったが、近くで見ると、狼の姿をした人という感じだった。確かこういう種族を、ーー『亜人』というのだったか。少ない異世界知識から絞り出した。『亜人』という単語。『亜人』は簡単に言えば、人ではあるのだが、その他に動物の機能が備え付けられたり、体自体が動物だったりする、そんな種族だった、ーー気がする。


「ーーー異世界だ」


「はっ?何言ってんだお前。つまらん商売だったら他を当たれよ」


「ーーあっ、違います違います。えっと、俺ーーー」


 そういえば何と自分を名乗ればいいか分からなかった。異世界を救う者ーーだとなんだか馬鹿にされそうなので、転移者、否、それもなんだか理解してくれなさそうだ。考えた挙句、とりあえずは「旅人」という設定にしておく事にした。


「俺、あっちから来た旅人なんですけど、道を訪ねてもいいですか?」


「何?お前、あっちから来たってあっちは草原以外なんもねえぞ?草原越えりゃ海だけだ。それをお前旅してきたって、ーー相当の変わり者だな」


「ーーあ、あはは」


 いや、異世界の地形なんか知らないって。こちとら住宅街で育った地球人だ。急に異世界転移されて状況把握なんか出来るわけないだろ。ーーと愚痴がこぼれそうになるも、微笑で誤魔化す。


「まぁ、いいか。でも次の機会にあっちに行くなら、気をつけときな。あそこは魔物がよく生息する地だ。いざ出逢っちまったら、助かる事は可能性は低いからな」


「えっ、ーーはい」


 出逢いかけました。さっき一つ目の魔物を見つけました。嘘みたいな話だ。あんな化け物があっちにうじゃうじゃいると思うと、平然とあそこで転移した事に背筋が凍った。しかし、一応ここまで来る事は出来たので、街には行くことができるだろう。


「そんで、そうだ。道だっけ?ガーネット王国のペリドット中心街までの道でいいのか?」


「ガーネ、ーーペリド、ーーえっ?」


 異世界特有の難しい単語が急に出てきたので、頭が混乱する。しかし、特にあてがないのでどこでもよかった。


「あぁ、はい。そこでお願いします」


「といっても、わざわざ詳しく案内しなくとも、ペリドット中心街はあっちに見えてんだろ。ほら」


「え、ーーーあっ」


 よくよく見ると彼が指差した方向にだだっ広い街があった。しかし不思議だ。さっきまで全く見えなかったのに。


「この草原は少し特殊でほぼ全て緑だから分かりにくいが高低差が激しい。だから低い所からだとまるであたりが見渡せないんだ。だからオレはこういう高い所で監視している」


「なるほど。ありがとうございます。ーー監視とは?」


 聞き逃せない単語があったのですかさず聞いてみた。とにかく分からない事づくめなので聞いてみるに限る。


「さっき、言ったろ?あっちは魔物が出やすい。こっちに来る前に警告をするんだ。それが監視であるオレの役目だ」


「そうですか。仕事中すいません。お答え頂き、ありがとうございます!」


「まあいいって事よ。それにお前、本当にここら辺の事何も知らないっぽいからな」


「はい、その通りです」


 ここら辺どころかこの世界の全てが分からない。その為、わざわざ他人の質問に答えてくれたこの亜人に感謝の念を送った。


「あと、ペリドット中心街に入るなら何か許可証を受け持っているはずだ。もちろんあるよな?」


「え、ーー無いん、ですけど」


「まじかよ」


「本当にお前、よく分からん奴だな。特別に俺の許可証をやるよ。オレはしばらくここで監視し続けるからな」


「えっ、でも、俺のじゃないってバレたり」


「割と確認は甘い。表はバレちまうから、裏でも出しとけ」


「そんな雑な、それより貴方はどうするのですーー」


「ああ、もう早く行けよ小僧!お偉い人に見られたら給料下がるだろうが!!」


 『許可証』というカード状の紙をもらう。そろそろ長居する事は出来ないそうなので、彼に一礼して、俺はペリドット中心街へと歩を進めた。



「ーーやっと色々分かってきそうだな」


 ガーネット王国、ペリドット中心街。まずはそこで今の世界の状況を聞き出す。それが、今回の救済内容の一部、ーーだと思う。



* * *



「ーー、すごいな」


 ペリドット中心街の手前には大きく門があり、それに続いて、街に合わせて、十メートルほどの石壁がはらされている。その光景はまさしく世界遺産でも見たような気分だ。

 しかし通る門にはかなり重装な兵士が二人居た。右手に槍、左手に盾と、かなり本格的だ。


「いやいやいや、大丈夫か。これ。絶対追求されるだろ」


 その兵士達の姿にさっきの亜人の言う事が紛い物でないか疑う。しかし、もう後戻りは出来ないので進む事にする。

 門前で深呼吸し、前進する。兵士が近い。門が近い。あの向こうにペリドット中心街。頼む、バレないでくれーーー


「ーーー」


「えっ」


 素通りしただけなのに、特に引き止められる事はなく、ペリドット中心街へ到着。呆気なさすぎて思わず声が出た。



 街中は見た感じだと中世ヨーロッパ風の外観をしている。建物や床、入る時の門も同じで。人混みを見ると、あまり目立ちがないような布地の服の人々。その中には亜人も混ざっていた。所々に兵士らしき人達が立っている。


「これが、異世界の雰囲気か。ーーうん馴染めない。なんだここ、開放的すぎるだろ」


 異世界知識として異世界の街は大体中世ヨーロッパ風の街並みをしている事を知っている。だからこそ想定内だったのだが、それでも壮大的すぎたものに思わず驚愕。


「と、とりあえず聞いてみなきゃ分からないか。ーーでもなあ」


 異世界の人がどういう人柄なのか、何か変な規則でもあるのではないか、そんな不安を『許可証』の時から掻き立てられ、まともに話しかけることも出来ずだった。そんな中ーー


「ん?ーーあれは」


 路地裏を覗くと、異世界物でよくある光景を目の当たりにした。一人の女性が、三人の街人に絡まれていた。

 ちなみにこれを助けるとあの女性が仲間になってくれるーーまでが、異世界物のテンプレだ。逆にそこまでしか知らないのだが。しかし、俺は喧嘩などは弱いし、特に柔道やら空手も習っていない上、今でさえかなり面倒ごとなのに、これ以上面倒を増やすのはごめんだ。


「やれやれ、なんで絡まれるような所にいるのか、街人は必ずゲスい人がいるのか。たまったもんじゃーー」


 何も見なかったように素通りしようとすると、急に頭に激痛が走った。それは突然であったため、吃驚するとともに身体から倒れてしまう。


「うぐっ、ーーうがぁ、あーー、痛いーー、なん、ーーだー、ーー」


 周りから冷たい視線を向けられるが、その配慮をする余裕が今の俺には無かった。頭を抱え、体を丸める。のたうち回る。


「ーーー、ぅ、ーーいっ、てぇーーー」


 やがて激痛が収まると、ある事実に気づく。それはあまりに強制的であった。


「これが、ーーヒントだっていうのか、ーーだったら趣味が悪すぎるぜ」


 恐らくこの頭痛は、あの女性を救わなければ起きてしまう現象なのだろうとそう考えた。なんとも理不尽な設定を背負わされたものだ。



 ーー初めての異世界救済は、とある女性の救出となった。




 

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