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3 四年が経って

本日二話投稿しております。

前話を読んでない方はご注意ください。


そうして村を出てから、早い事で今年で四年が経った。

未だに水晶玉のある場所へは辿り着けていないけど、国から聞いた話だとそろそろ到着してもおかしくない頃だと言う。

村のみんなやお母さん達とも頻繁に文通でやり取りをしている。

相変わらずぽやぽやしながら幸せにやってるみたいで安心だ。


そして、これが一番の変化なのだけれど私達は四年の間に仲間を増やし、今は私を含め五人で旅をしている。

メンバーは私と勇者であるライル。それに剣士のアドルフ、聖女のルル、魔術師のエラだ。

ちなみに私を除いた上記全員が美男美女であることも記しておく。


正直、能力的にも顔面偏差値的にも私のアウェイ感が否めないのだけれど、それは見逃して欲しい。

それに私は私なりに四年間、この濃いメンツの中で何とか自分なりに頑張ってきたのだ。


まず、旅には怪我がつきものだからと薬草学や医学を学び―――まあ、聖女が仲間になったことによっていつでも治癒できるようになったんですけど―――旅が楽になるようにと荷物のより良い整頓法を学び―――まあ、魔術師が仲間になったことによって空間魔法で移動も楽チンになったんですけど―――色々な知識も身についた。

·····例え、もう役に立ちそうにない知識でも!それでも私は私なりにこの旅で成長したと自負してる。

そしてもちろん、ライルも·····。



「ラーイル!おやすみ!!」

「ライル様、おやすみなさいませ」

魔術師のエラが今日も可愛らしく、ライルに笑顔を向ける。

その横で聖女のルルも微笑んだ。


現在の居場所は旅の途中で立ち寄った宿だ。日が暮れたので今夜はここに宿泊することになった。


「おやすみ。明日は朝早くなるから夜更かししないようにね」


そして、そんな実に可愛らしい少女二人に完璧な微笑みを浮かべるのは我が幼馴染であるライルだ。

少女二人はライルのその微笑みに頬を赤く染める。


「·····相変わらずライルにぞっこんだな。あの二人」


そんな様子を少し離れたところでボケッとみていると、隣から誰かに話しかけられた。

横をむくと、そこに居たのは剣士のアドルフだった。

私はその言葉に思わず苦く笑う。


「ほんとにね。最近じゃあ私は近づくだけで睨まれるよ」

「まじか。お前も大変だな」


アドルフが労わるように私の肩を叩いた。

ありがとう、アドルフ。君のその微妙に漂うおかんオーラがいつも私の心を癒しているよ。


そんなことを思いながら「どーも」と返していると、それぞれ部屋に戻ったらしい二人を見届けたライルがこちらに向かってきた。

その姿は四年前とはかなり違っている。


まず、当たり前のことだけれど身長が伸びた。旅に出る前は私と並ぶか私より少し小さいくらいだったのに、今では私の頭の位置にライルの胸がくる。

それに、顔つきからも幼さがなくなってより一層顔面に磨きがかかり、細マッチョイケメンになってしまった。

そしてライルのことは勿論イケメンだとは思っていたものの、村を出てから彼は本当に世界屈指のイケメンなのだということを知った。うちの村の人口が少ないだけで世界にはこんな美形がゴロゴロいるんだろうなと思っていたけど、私は身内の贔屓目なしで見ても今までライル以上の美形とは会った事がない。

正直、幼馴染じゃなかったら絶対に話しかけない人種だ。顔がキラキラしすぎて。


それに性格もこの四年でだいぶ成長して、昔は人見知りが激しくて愛想も悪かったけど今ではあんなに完璧に女の子の相手をするようになった。

その様子はまるで絵本に出てくる王子様のように完璧で、ライルは甘えたな少年から立派な青年となった。若干の寂しさはあるもののの当然の如く、もう私離れなんかは済ませ






「なに勝手にスーに触ってんの。誰が許可した、くそアドルフ」







·····てたら良かったのになあ。


私の肩に触れていたアドルフの手を払い除け、彼を思いっくそ睨んでいるライルに私は一発ゲンコツをお見舞いする。

が、石頭、というかもはや全身鉄製で出来てるんじゃねぇかってくらい痛覚に鈍いライルは私の本気のゲンコツをキョトンとした顔で受け入れる。


「なんで殴るの?」

「なんでもなにもないわよ。なんで私に触れるのが許可制なのよ。あといい加減アドルフを睨みつける癖やめなさい」

「·····だって、アドルフ見てるとイラつくんだもん」


そう言うとライルは私のことを後ろから抱きしめてくる。

私はすっぽりとライルに抱きしめられる形になりながら溜息をついた。


そう。御察し頂けただろうか。

こーんなに立派になったはずの我が幼馴染であるライルくんは何故か未だに私離れ出来ていないのである。


私はライルから見えないように必死にアドルフにジェスチャーだけで謝り倒す。

本当にいつもいつも申し訳ねぇ。


優しいアドルフはそんな私に気にすんな、と言うように手を振ると「んじゃ、邪魔者は退散するよ」と自分の部屋に戻って行った。


アドルフが居なくなったことで宿屋の廊下に静寂が訪れる。


「·····ライル、離して」

「もうちょっとだけ」

「·····ルルちゃんとかエラちゃんに見られたらどうするの」

「大丈夫、ちゃんと確認した」

「宿屋の人だってどこで見てるかわかんないんだから離して」

「·····だって最近そんなに話せてないし、触れてない。それにスー、二年くらい前から部屋に入れてくれなくなった」


少しいじけ気味な声で耳元で喋られてくすぐったい。


「当たり前でしょう。寧ろ、私はだいぶ待った方だからね。あなたは一体何歳まで私と一緒に寝るつもりよ」

「·····じゃあ今日は一緒に寝ないから部屋に入れて?もう少しスーと話したい」

「ダメ。明日は朝早いってライルが言ったんでしょ。私ももう寝るし」

「·····最近、スーが冷たい」

「そんなことありません」


私の返答にライルがギュッと抱きしめる力を強くする。

おい、私の話を聞いていたか。私はもう寝るんだよ。ねみぃんだよ。目がシパシパしてるんだよ。


「·····じゃあ今度、一緒に寝ていいから。今日はもう寝よう。分かった?」


もう半ばヤケクソでそう提案するとライルの表情が一気に明るくなった。


「本当に?言ったからね?」

「本当、本当。じゃあもう寝るから腕離そうね」


私がライルの腕の中でもがくとライルは「約束したから」と念押ししながらもやっと解放してくれた。


「じゃあ。おやすみなさい、ライル」

「うん、おやすみ。スー」


パタン、と扉を閉めてから私は大きな溜息をついた。



「困ったなあ」


割と大きなその独り言は誰にも聞かれることなく、宙に消えてゆく。



◇◆◇


さてと。ここで皆さん、疑問に思ってるんじゃないだろうか。


あれ?ライルくん。君、聖女のルルと魔術師のエラに対しての態度と素の態度、違いすぎない?

と。


ええ、ええ。それは真っ当であり当然の疑問だ。

ライルは普段、あの二人に接してるような完璧な態度―――私は王子様スタイルと呼んでいる―――で人と接している。

その為、あの二人はライルの素があんな残念な感じだということを知らないし、出会って間もない人は皆ライルのことを凛々しい英雄だと思っている。

それほどにライルは隙のない猫を被りまくっている。


そう。だから私は冒頭のように聖女のルルか魔術師のエラ、どちらかに毎日のようにこっそりと呼び出されてはマウントを取られているのだ。あんな完璧な方にお前は相応しくない云々と。


ちなみに冒頭で私に文句を言っていたのは魔術師のエラだ。

エラは私を呼び出す時、大体はプンスカと怒りながら文句を言ってくるのでまだ可愛げがあるけど聖女のルルに呼び出される時は割とメンタルがやられる。

ルルの方が呼び出してくる回数は少ないが、なんというか·····、いちいち物凄くねちっこいのだ。さり気なくマウントをとりながら、あなたの為を思って言ってるのと自分の考えを押し付けてくる。

正直、二人とも滅茶苦茶うざったいので惚れた腫れたなら私に関係ないとこでやって欲しい。本当に。




だが、ご覧の通り実際のライルの素はあのように王子様スタイルとはかけ離れた感じだ。

そしてその事を知っているのは私と、もう一人の仲間、アドルフのみ。


それでは何故、あの人見知りウルトラ愛想無しボーイがこんなことになっているのか。それを話すにも過去に遡る必要がある。



時を遡ること、三年前。

私達が旅に出てから一年後のことだ。














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