第5の扉
2箇所からもうもうと上がる黒煙を見ながらガルは目を細める。扉はまだ存在しているのだが動かない、行動に移す意味がない。現在はリモアの元に戻っているのだが、この距離から地を這う様に進む筈の煙が見えると言う事は対処の仕様がない程大量の薬物が燃えたと言う事だからだ。弁解出来ない。別にする必要はないがただ1つ言える事は舐めていた。とだけ。悪魔と取引すると言う事は超常の力を扱うと言う事。そしてその悪魔が契約相手を乗っ取ると言う事はその契約内容に於いてとことん有利を取れると言う事だ。
結界に牛なんて使っているから低級クソ雑魚ド低脳小間使い悪魔だと思っていたのに。どうやら人間を取引に使って地獄産の植物と交換していた様だ。そうとしか考えられないので思ったより闇が深い事件だった様だ。6段階ある悪魔の内上級くらいまでいったら感じ取れる筈なので今回の悪魔は下から3段目、中級だろう。戦闘特化の白峰の能力なら負ける事はないと思う。黒堀は知らん。因みに上から頂上級、最上級、上級、中級、低級、這い寄る悪意。そう言えば記念すべき第一ボスの小物悪魔は低級だったのだが魔力保有量だけ見れば上級に届きそうだったな。どっかの頂上級の仕業だろうけど。
「…!なんだ!?」
「オラァ!悪りぃが説明は後ダ!コイツを頼む」
白峰が帰って来たら撤退しようと思っていたガルの目の前に門が現れ、リモアの父親の場所へと開く扉から満身創痍の黒堀が見覚えのある白髪女性を抱え戻って来た。声が重なりその場に沈黙が訪れる。
扉と形容するには煌びやかで、一応は取っ手の付いている扉らしき宝石に見える板は透き通る程に透明で、薄い紫にも暗い青にも明るい翠にも見えた。門と言うからには枠部分もある。しかし、幾つものクリスタルが積み重なった様な形状の枠は感動的とも言える神秘さを醸し出しているにも関わらず内にある神々しい輝きの前では霞んで見えた。
「あ…。…!ヤバい!」
透き通るとは見えると言う事。ガルの裂け目の様に不可視ではない。
門があると言う事は通れると言う事。例え宝石が間に有ろうと、価値が、壁としての機能が、その者にとって無に等しいならば、ただの穴である。
宝石板のその向こうに、何かが居た。そしてあろう事かその何かとガルは目を合わせてしまった。直感が告げる。アレは危険だと。本能が告げる。逆らってはいけない存在だと。一瞬の思考すらせず目が合った瞬間弾丸の如く門の前から逃れた。逃れようとした。しかしそれよりも速く何かは門を突き破りガルの体をその手で捕らえた。
「魔法特攻…!?」
ガルは思い出す。あの宝石の輝きはあの時の悪魔の魔晶石と同じ物。ある日の理科の授業中に見た教科書p146の宝石の1つ。魔石。そして日常でも常時発動しているバリアが機能していない事、直接掴まれたガルの体はその形を維持する為にとんでもない勢いで魔力を消耗していく。何も強く握っている訳ではなく、逃げられない程度に、寧ろソフトタッチの部類に入るだろう。だが触れているだけで脅威なのだ。その事が分かっているのか目の前のドラゴンも…口をパクパクしている?
そしてまた気付く。音が全く聞こえない。ある1つの推測に辿り着く。確認する為にも、自分の身を守る為にも裂け目から神器不壊を取り出し突き立てる。と言うよりそれ以外に選択肢が無かった。絶対に壊れないという特性を持つ神器、不壊。もしくはそれに準ずる特例の何かでなければ触れる事も出来ないだろう。因みに概念的な能力だから確実ではないが不壊は無限に存在する世界でもただ1つしかない為置いてある場所に繋げるのは息をするくらいに簡単。
赤黒い鱗のドラゴンには傷1つ付けられ無かったが突然刃を突き立てられた事に驚いたのかガルを握っていた手を離した。空中十数メートルから落下するが強制解除された身体強化を再発動し事なきを得た。
既に透明な赤に覆われた大地はでこぼこしておりその上に居るだけで魔力を削られる。リモア達の方に目を向けると扉は全て消え去り精霊スーリアが水で何かから守っている。一応は確信した。アレはドラゴンの形をとってはいるがドラゴンではない。この現象が何らかの魔法でないならば、能力を持った特例系ドラゴンでないならば、消失だか滅亡だか知らないが未曾有の災厄…と言うより本当に滅亡。宇宙諸共消え失せる可能性のある概念的存在。
そんな相手でも服の消失は免れた。結構紳士らしい
個人的に未曾有はみぞううと読んだ方がカッコいい(何も思い浮かばなかった)
一ヶ月のお休みをしたのですが最近simejiというアプリを使い始めました。このアプリだと空白が作れないのに気付きました。今後気を付けます




