爆弾魔
バババババババババババババババッ!
倉庫の入口付近から何かが弾ける様な音が近づいてくる。目の前の男も同じらしく、どうしようもなく注意を引き付けられるその音に自然と何の音かと目を向けた。
「な…ンダァ!?」
「!?」
倉庫の床が…否、建物ごとその下の地面に落ちて行っているのだ。床は割れ、ガラスは砕け、壁はその役割を果たせなくなり歪な穴から荒地を写しだす。それ以上に大変なのは中居る人々で、数秒続く無重力状態の後ボロボロの床に叩きつけられた。
「…!…グァ…!」
「よっ!大丈夫…な訳あらへんか…」
先程の爆発でどこかに飛んで行った扉があった場所から入ってきたのは白髪の男子。予想以上の惨状に苦笑いしながら余裕綽々といった感じだった。
壁はひび割れつつも崩壊しておらず一筋の光も通さない。
窓は原型を留めておらず、外の景色を変わらず確認できる。それにも関わらず地面に散らばったガラス片は光を反射していない。
唯一役割を果たしている屋根は変わらず雨を防ぐ傘にも中の物を出さない蓋にもなっている。外に繋がる入口を除けば完全な密室。逃走できる隙間は無くなった。
「えぇと後はって、指示されてないんやったな」
「馬鹿やろォ…!アイツは得体がしれン!退却ダ…」
「退却な。わかったわかった」
状況を良く理解していないのか軽い調子で黒堀を助け起こす白峰。突然、何重にも重なる呻き声が響き渡った。その中には一際際立つ女性の声も1つ。
「あ…姉貴!?」
「この場合は初めまして、ですよね?ですが貴方もいらないですねぇ」
「野郎も無事だったカ…!」
駆け寄る白峰、痛む体で警戒する黒堀、折れた左手を気にしていないスベルマ。周囲の痛ましさを増す呻き声とは逆にほんの少しだけ楽になった様に見える白峰姉。白峰を見つめる目は危ない物を見る様な目だが姉の方はスベルマも特に気にしている風には見えない。まるで必要としていないかの様だ。
「おい。姉貴の事頼むからな。後は任せろや」
「チッ…気に食わんガ…仕方ネェか」
意識を失う寸前の姉を丁寧に預けると目の前の敵に視線を向ける。
「おい白峰ェ!」
「なんや」
手をこちらに向けタイミング良く振って来た。ハイタッチらしい。しかしその手は空を切った。
「ォッ?」
「え?そんな仲やないやん」
つい反射的に避けてしまった。両者の間に何とも言えない空気が流れた。
「どうやら準備万端の様ですね。こちらも値踏み出来ましたよ」
呻き声がピタッと止み人々が溶けだした。後に残ったのは粉の山。粉末状の何かは導かれる様に流動し床から徐々に上へと広がっていく。それを危険かも知れないと判断した白峰は瓦礫が積み重なり少し高くなっている場所に避難した。そこへ一閃。顔半分まで侵食を広げた植物部分を、自分の視界を覆わない程度に巨大化した腕で薙ぎ払った。
「うわっどうなっとんのや!?」
腕の異様さに怯みはした物の手のひら大の石を巨大な腕に蹴り飛ばし爆破。赤光と共に爆発が起こり腕の一撃を退けた。
「おやぁこれは手厳しい。いい物持ってますね」
「そうやろ?」
「ええ。惚れ惚れする程に。ですがもうチェックメイト、確かこう使うんですよね?」
流動する粉は勢いを爆発的に強め視界全てを奪う。後数秒遅く爆発で空間を作らなければ呑まれていただろう。
「あぁ。だがな、今から負ける方が使うんは格好悪いわ。こうやって使うんやで。〈爆弾間〉!…これで、チェックメイトや」
穴を空ける際爆発に触れた部分から超小規模超連続爆発が始まる。瞬く間に爆発は広がり辺り一面を閃光で覆い尽くす。倉庫内部には1粒の粉も残っておらず、跡には全身を焼け焦げさせた男と無傷の少年のみ。
「…このままガルんとこ帰れば…いい…のか???」
本日2度目の闘志の完全燃焼。こんなしょうもない事にも決めるのに時間が掛かる。そして多分その逡巡にも決着は着かない。
「今回は失敗ですね」
いつの間にか立ち上がったスベルマは殆ど機能しなくなった植物の腕を振り上げ動かない白峰に襲いかかる。そにれ気付いた白峰は取り敢えず危ないので爆破できる植物部分だけ爆散させた。
四方八方に飛び散った植物が玉在の服を悉く奪っていったのだがそれについて何か思う人は居なかった。
ロ「白峰姉は無事なんスか?」
ユ「無事よ。欲しかったのは醜く肥えた食欲の塊、みたいな人間だったのが幸いしたのね」
レ「だが欲望のままに貪っていたのではないのだろう?」
ロ「でもそういう人間集めれば良くないっスか?」
ユ「確か…注射器のちょっと薄いタイプを使って、効果が薄くなった所でご飯を用意。これで判別できるってスベルマちゃんが言ってたわ」
レ「ならば間違いないな」
ロ「原始的っスねぇ」




