選択 前編
「おはようございます。8時です。今週もよろしくお願いします。まずは先週から話題になっている俳優の山田さん、発覚しているだけでも9股…」
一晩中つけたままのテレビは朝8時の番組を放送し始めた。組織周辺に仕掛けた盗聴器からは未だ反応はない。
薬で洗脳された人々は一体何時から作業に移るのだろう。もしどこかに隠れているボスが動くとしたら、きっと毎日繰り返すのだろう命令された工場への移動時だ。まさか毎回重要な人物が命令するとは思えない。効率も悪いし見張りは監視カメラで事足りる。何より自我のある人間が少な過ぎる。
「白髪いいわぁ」
これ以上は時間の無駄だと判断したガルは裂け目で壁の上まで移動した。恐らくもう壁付近で待機している筈の白峰を探すとカフェのテラス席で時間を潰している白髪の不良がすぐ見つかった。
「黒堀テメェ…こないな時間に外におる人なんぞ仕事に決まっとるやろ。テメェみたいなガキにナンパとか絶対無理やわ」
「さんをつけろデコ助。産まれたてに幼稚園児、果てには担任、校長まで口説き落とした俺にはヨォ…そんな些細な事は問題にもならねぇゼ」
二人は思ったより仲がいいらしい。白峰黒堀の関係ならもっと殺伐としていると思ったのだが。
「うっわ…ま…まぁええわ。ガルのやつがスっと来てスっとしてスってなっても知らんからな」
「白峰オメェ何を言いたいのかわからネェ…バカなんじゃネ?」
「あ?ケンカ売っとんのか?」
「爆弾なしならヨォ!いつでも相手してやるゼェ?」
その時ダッさいズボンを穿き片手の機械からイヤホンで何かを聞いているらしい少女が隣の席に音もなく座った。
「…?…あ!」
「オォ?知り合いカ?」
テーブルに肘をつき手で頭を支えている少女はまるで自分には関係ないという様に、一瞬だけ視線を二人に合わせると一言だけ言葉を放った。
「気にせず続きをどうぞ」
「白峰の知り合い?俺ら今人待ってんだけどォ、ちょこっとだけでもお話しよーゼェ」
「…白峰、準備は?」
「いつでもオッケーや」
返事を聞くとガルは白峰にこっちへ来いと手招きすると立ち上がり2歩下がった。
「そのまま3歩だけ進め」
突然の意味の意図の理解出来ない指示に困惑しながら従う白峰。その姿が突然消え代わりに驚きの声が聞こえた。当然だ。3歩進んだら突然目の前から地面が消え20メートルの壁の上なのだから。その声を聞き手探りで裂け目を見つけた黒堀が警戒しながら裂け目を通る。
「これがスっスっスの正体ってェわけカ」
「早くついてこい」
時刻は朝8時12分、壁の上だと誰かの目に映ってしまう可能性もある。しかし今気付いた異変はその心配事の比ではない。足音が、盗聴器から聞こえる洗脳された人々の足音が工場から遠ざかって行く。一番近い工場から順に音が消えていく。玉在荘の方向ではなく外側に仕掛けた盗聴器が最後まで音を拾っていた。その意味は洗脳された人々がスラムの町へ向かっていると言う意味。車の音も聞こえる。何か放送された訳でもない。一体何が起こっている?
「四方向は…ムリだな」
「おいガル!…さん?この写真の人、島田 静っていうだけどヨ。知ってるカ!?あん中に居ると思うカ!?」
「あの黒いのって人間か!?様子がおかしいんとちゃうか?」
肉眼で黒い人間の塊を見た三人の反応はそれぞれだった。
更に近付き見てみると既に車で移動してきた者達は積まれた大量の倉庫の中身を取り出し何かの準備を始めた様だ。倉庫の中身、それは液体の麻薬、粉末、まだ植物の形をしている物、様々だがもし燃やすとしたら成分が広範囲にばらまかれる事は確かだろう。
ロ「先生ー!生徒と教師の交際は大丈夫なんスか?」
レ「黒堀はこーさん?だから問題ないぞ」
ロ「レグナスお前じゃねぇっスよ!」
ユ「島田ちゃんは25歳だから大丈夫よ」
ロ「校長は?」
レ「校長は今年51になったばかりだ。人間性も問題なしだな」
ユ「基本的には結婚できる年なら問題ないと思うわ」
レ「確かにそうっスね」




