最恐の人々
「!?…ぁぐっ!」
たった一瞬の出来事だった。武器を消し正義に相応しい働きの後目を離したほんの数秒後、右手に衝撃を感じたと思ったら地面を転がっていた。
「良くできましたセルギア。ありがとね」
その声に反応して今初めて見えた島田の足首のアクセサリーが光る。現れたのは暗闇の中でこれでもかと炎を自信の周りに侍らせたタツノオトシゴ型の精霊、セルギア(有名でも何でもない)。
「チッ、腕が折れた。…どうやった?どうして正義の鉄槌から逃れられたか教えてくれよ」
「セルギアの事は聞かないんですね」
「関係しているなら聞こう」
「嬉しいです。この子、セルギアって名前なんですけどワタシに一目惚れしちゃったみたいで…えぇ、ついさっき教会で契約したばかりなんです。だから本当は使うつもりなんて無かったんですよ?なのに一さん、酷い事するから…土壇場で思い付いた事しちゃったんです。薬をその凶器で殴られる前にワタシ自ら打ちました。そして火の精霊のセルギアに薬を蒸発して貰ったんです」
普通契約による精霊の力の行使回数はほんの数回、それに相性も良くなければ契約もままならない。一目惚れと言う事は再契約…いや、自発的に力を貸すのだろう。不良だ。ろくでなしがろくでなしと離れられない様に精霊にも周囲に穢れを押し付けるカスの様な個体が存在したか。似た者同士、仲良く収監させてやるしかないな。
「〈執行者〉貴様らなら皆、大ッ歓迎だろうなッ!豪烈猛追の蒼雷犯罪者を逃がサンダー」
どんな物が出てくるか把握している構えに寸分の狂いもなく現れた武装は、ロケットランチャーを数十倍いかつくした様な片手では撃てそうにない兵器。発射口らしい刃は既に攻撃準備が整った状態で発現し、蒼白く発光した刃は完全に姿を目に映した時には対人間用とは思えない程殺意に満ちた雷が発生していた。
主の危機を察した精霊はいち早く炎で壁を作り雷撃から守った。
「ありがとうセルギア」
「ハハハハ!二人に対して雷の数が一つじゃあ足りないな!どれ、増やしてみるか」
再び構えるといかついだけで使われていなそうだと思った部分から刃が飛び出し合計三つの刃から一撃目と変わらない威力の雷が発生した。しかし相手に向けてはいるが一つ一つが狙っている訳ではないからか2つの雷は横をすり抜けていった。
「でも今までの凶悪度から考えて…」
「残りの雷もォッ貴様らの罪を浄化するまでェ!追尾し続けるだろォナァ!」
島田が一歩踏み出すのが見えた。結果は分からなかった。なぜなら辺り一面が煙で見えなくなったからだ。雷と炎の衝突による物だろうが狙いは単純だろう。煙に紛れてて不意討ち、目の前すら見えないがドクドクと脈打つ悪意を感じる。
「愚かァ!効かん効かん効かん効かんこの愚か者がァ!」
正面からの策の無い最速の鉄棒を構えていた武器で防御する。強力なだけでなく体の3分の1を隠せる大きさは何度バットを振るっても受けるのは容易で、疲れが見えた一瞬の隙にその無駄に豊満な胸を蹴り飛ばした。
「あぅぅ!」
「トドメだッァ!」
晴れてきた視界にふと明るいものが映る。全身を炎で覆われた赤い巨人が猛スピードで迫って来ていた。咄嗟に振り抜かれた拳から武器で身を守るが意識が飛び、次の瞬間には地面を転がっていた。
「いい子よ、セルギア」
「…ググ…立て…ん…だと…!……」
「セルギア。終わりにしてあげましょ」
「…から………ゴ……だ」
骨折こそ増えていない物の兵器は使えない程壊れ起き上がれない状態の一からはまだ熱気を感じる。加えて何かしゃべり初めた。
「…なに?負け犬の…遠吠えかしら」
「薬をばらまき…武力を集め…最近の失踪事件は兵力を集めているのだな…?それに続き…証拠を提示したにも関わらず会議会議で動こうとしない上層部。既に入り込んでいると言う訳か」
「セルギア!何もさせないで!」
「これはァ!明らかな国家へのォ反逆行為ィ!」
大きく振りかぶったセルギアの拳が一の目の前で閃光と共に消滅する。消えた訳ではなく、巨人の形を保てなくなったセルギアがタツノオトシゴ型に戻っただけだ。地面に倒れて動かないタツノオトシゴを見て危険を感じた島田はバットでトドメを刺す為走り出した。
「全世界標的無障害聖光爆裂投下!衛星ジャッジメントは…罪を見逃さない」
「そんな…こんな物まで…」
ピストルからマシンガン、ガトリングまであったのには驚いたがとりあえず全て貰ってロイド邸地下室に移した。中には懐かしの手榴弾等爆発物まで見つけ少し興奮した。当然全て貰っておいた。しかし倉庫の空き具合から推測すると60%程はあるのだが、やはり持ち出されているらしく残りは見つけられなかった。
(ハンドガンとかかな。ほっとこ)
(なんか良い事した気分だな!全部犯罪だけど)
(いやいや英さん…)
(バレなきゃ犯罪じゃ…って言えよ!振っておいて終わらせないで!?)
閃光が走った。続いて二度目の閃光。ほんの少しの興奮が冷め、少し考えを巡らせる。
(今のな
ん…オロロロロロ…ど、どうして女子トイレに…?しかもパンツ脱いでるし)
「は?…え?怖っ」
確かに人間の体で動き回り汗で気持ち悪くなった下着を脱いだが、指摘され下を見ると趣味の悪いズボンがしっかり視線をガードしていた。
(あ…〈旅人〉か。把握把握)
(やっぱり無駄に勘がいいなぁ。多分面倒事はもう起きないからお前は寝てていいぞ)
(え?ノーパンで過ごすん?)
(寝たら?)
ザワールドをすると途中に裂け目は開けないのだが今回は盗聴機を設置する可能性もあったので開いておいた。ついでにこの辺り一帯の監視カメラをできる限り破壊、どういう訳かぼろぼろになったり気絶している女二人とタツノオトシゴは戦闘不能だと判断した後、盗聴機の設置。大体3時間掛かったが見失った玉在の動きを知りたいので朝まで盗聴活動。初めて会った時に殺っとけば良かったと少し後悔しながら時間の経過を待つ。
ユ「読者を混乱させにくい様に語り手の違いを少なく、その上でちょっぴりそのキャラらしさを出す、そんなナレーションだったそうよ」
ロ「言い訳っス」
レ「正子とやらは相手の名前を知らない筈だろう?」
ユ「許してあげてね。ガル君が居ない、何か事情があっても別の人が語り手になるわ」
レ「という事はアレが語っていたと言う事か。…事情…確か狂気が何とか言っておったな」
ロ「そうそうもっと危ない事言って正子ビームで処されるがいいっス」
レ「我にそんな物が効くと思うか!」
ロ「効く…効いて欲しいっス!」
ユ「衛星ジャッジメントってもう一段階上の攻撃ができるらしいわよ」
レ「ェ?」




