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一匹の獣人が神になるまで  作者: 狐魂
第2章~危険地に身を投じる狐~
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常習犯正子

 「罪を焼き焦がす(ジャスティス)太陽の籠手(ガントレット)。この重み…容赦がなく振り下ろすそのイカれ具合…当たりだっ!」

 島田が振り下ろした金属バットは手慣れた動きで目標のあばら骨を、最低でも防いだ手に決して無傷とは言い難い破壊をもたらす筈だった。しかしバットの接触部分に突如現れた籠手は、ただの公務員ならば確実に骨の一つでも砕けるであろう一撃を何も無かったかのように衝撃を消し去った。

「あつっ!…でもっ!」

 籠手に触れたバットが一瞬遅れて火の様に熱くなる。反射的に手を離してしまった島田はもう片方の手で空中のバットを拾い相手にフルスイングした。

「ほほう…よく握り直す勇気を持てたものだ。称賛に値するぞ犯罪者」

 不意を突かれた警察官は不恰好で隙だらけのフォームにも関わらず、飛び退きバットの攻撃範囲から逃れた。

 今身につけているこの籠手は名前の通り太陽に匹敵する熱を持っている(はず)。もし一度でも触れたならばもう一度触ってみようなどとは思う筈はない。しかしこの籠手は〈執行者〉の能力によって産み出された物。他の大抵の能力と同じ様に少なからず弱点はある。そしてこいつはその弱点を知っている。

一 正子(はじめ せいこ)さん(29才)…お噂はかねがね聞いておりました」

「正義の産声がお前たち悪人にも轟いていた事は喜ばしい限りだ。しかし…(お前たち)正義(わたし)の事を知って尚震えて縮こまっていないというならば、纏めて牢獄にぶちこむだけだ。残虐に捌きkill(ジャスティス)刺付きの断罪鎚(ハンマー)

 まずは〈執行者〉(暴行罪)だ。その言葉と同時に手に握られた明らかに殺傷用の武器が空気を切り裂き目の前を通る。咄嗟に下がったが自分の持っているバットより凶悪で聞いたことの無い音がしたので人伝に聞いた噂を一瞬信じられなくなる。

「よ、よーし…」

「なんだその目?貴様ら如きのちっぽけな覚悟!今ッ!ここでへし折っておく必要があるな!」

 水の都署署長一 正子(29才)能力〈執行者〉。なんでも犯罪を犯した者に容赦なく能力で出した凶器を振り下ろすという。しかしそんな事ができるのには理由があると言う者がいた。考えてみれば当たり前なのだが〈執行者〉の武器、防具では傷付かないとか。触れられた一瞬痛みや熱さを感じるだけ、殺傷能力はゼロ。と現場を見たやつが言っていた。そして今対峙してみてその話は本当だと分かった。触れない程熱かった金属バットに熱が全く残っていなかったからだ。気は乗らないが相討ち覚悟で一歩踏み出す。しかし殺意の高過ぎるハンマーが振り下ろされたと同時に相討ちする覚悟を粉々に砕かれ間一髪で地面に退避した。考えてみれば当たり前なのだがあんな凶器、かすっただけでも痛みで悶絶するだろう。それが直撃したなら例え一瞬だろうと動く事も出来なくなる。

「は…ぁっ!痛っ!それにあっつ!し、死ぬ!あんなのに当たったら…っ!」

「安心しろ。死亡例はない」

 情けなく尻で後退すると地面に落ちていたガラス片で指を切った。腰をついた時に割れたのだろう。リモアが持ってきて使い終わった後ポケットに入れ、忘れていた注射器だった。

〈執行者〉(麻薬所持罪)残虐に捌きkill(ジャスティス)刺付きの断罪鎚(ハンマー)…罪だと知った上で扱うか。その罪深さ、一生掛けて牢獄の中で償うがいい!」

「そんな物を…!死ぬ!痛みで!」

「死亡例は無いと言っただろうが馬鹿者ッ!だが安心しろ犯罪者、痛いのは一瞬だけだ。お前の仲間になるやつが言っていた」

 凶悪なハンマーは何度も行われたかの様な滑らかな動きで打ち上げ、空中コンボを決めてから島田の体を解放した。力を失った島田の体は地面に落ち、体から()()()を上げながらピクリとも動かなくなった。

「とりあえず連れて帰るべきだな」

ユ「正子ちゃん、実は正子(ジャス子)にしようかちょっと迷ったらしいわよ」

レ「ム?ギリギリ大丈夫な気がするのだが」

ロ「いや大丈夫じゃないっスよ!絶対いじめられるっス」

レ「ジャスコはいかんのか…」

ユ「どうかしらね?小学生からシャルウェラちゃんと競うくらい闘争心が強いから返り討ちにしちゃうかもね」

ロ「へぇー同級生なんスね」

ユ「いいえ?」

ロ「?」

ユ「女の子の年齢を言うつもりはないわ。少なくともその時にはもう今の可愛い女の子よ」

ロ「いや結構年っスね…あ、あと木の数えかたで女の子って言うの紛らわしいっスからやめて欲しいっス」

ユ「数え方は一緒よ」

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