その後のその後のその後
開始3分でズボンを取ったリモアは迷いもせずにアンジェに渡す。子どもにすら見向きもされない程ダサいのかそれとも取る過程を楽しむタイプなのか。周りを見渡すまでもなく視界に映る商品はどれも使い道の少ない物ばかり。なので恐らく前者だろう。賞味期限の切れる寸前のカップラーメンまたは切れたレトルトカレー、広告や店ですら一度も見たことのない古そうなプ◯キュ◯関連の商品、まさかの白熱電球を使ったランプ。どれもこれも売れなくて流れてきたのだろう。これなら5Nで一回なのも納得だ。配給制とかにすればいいと思うけど。
履き心地は悪くセンスも最低であっても無いよりはましと思いズボンを穿く。奥の方へと進むリモアと白峰姉を見ると一先ず安心と一瞬止めた呼吸を再開する。
(手遅れか…)
(ん?)
「やぁやぁまた逢いましたね、素敵なクールビューティーのお嬢さん」
「…会いたくなかったよ」
(子ライオンってなんや…子猫ちゃんの亜種?え?亜種?)
ゲームセンターの明かりで照らされた暗い空から現れたのは義賊団の風鈴。彼の能力は風を操り風を読む。台風からそよ風、風の出ていない夜でも暴風の吹き荒れる朝でも風鈴にはいつもと同じ。例え人が生む一呼吸だろうと心拍の乱れだろうと些細な違いが在れば読める。
「まぁまぁそんな事言わずに…まずはおそろで嬉しいって喜んでいいかな共に舞い踊りませんか?」
「いいえ」
言いたい言葉より感情の表現が優先されて相変わらず何を言いたいのか分からない。それも大事ではあるが今はリモアに普通に話しているところを見られたくない。当然リモアの存在は風鈴には知られているだろうし防音の為に裂け目を開く事など出来る筈もない。頭をどんなに働かせても両方から疑われずに行動する事は無理かも知れないという結論になった。
「つれない事言わずに…あ、今度お茶でもどうです?最近南区に新しいお店が出来たんですよ。二人で庭の花畑が見える席、いかがですか?」
「い、いいえ…」
ナンパしてお花摘みの店?に誘う成人男性…身の危険を感じて数歩下がった。しかしクレーンゲームがありすぐに後ろに下がれなくなった。
視界が広がったところで風鈴の服が所々煤で汚れているのが目に付いた。
「汚れてしまってますね…気付きませんでした。実は先程までボヤのあった場所に居たのでね。これも僕達の仕事ですから気にしないでいいんですよ」
「もしかして」
「おや、ふと感じる素朴な疑問。少し、ほんの少しだけ君の気持ちがわかる。はい、僕達ゴミ箱義賊団は住民の皆様に暮らしやすい街作りの支援をさせて頂いてます。どう?見直してくれました?」
「いいえ?」
「それは残念です。では今度…もう一人の女の子もこっちに来るみたいだね」
「…」
「あ!風鈴!風鈴さんだ!…えっ!火!火が!燃えてるよ!外!」
「おや?僕の事知ってくれてるん…え?」
風鈴が振り向くとそう遠くない場所で赤々と燃えている炎が見えた。急いで外に出ると火が家を焼く音が聞こえその音でどんどん炎が燃え広がっていくのが確認出来た。
「そんな…すまない、仕事の様だ。…最後にお嬢さん方お二人の名前を聞いても?」
風が風鈴を中心に渦巻きその体を浮かせる。火元に行こうとした様だがまだ名前を聞いていない事を思い出したらしく振り返って遠慮がちに聞いてきた。
「わたしリモア!…で、アンジェリッカプリ「アンジェ」
「アンジェちゃんだね。ありがとう」
風鈴の風読を読む能力は吹いている風を読むその名の通りの力だ。当然〈旅人〉の能力で別の世界を開いたらその時点で気付くだろう。例えすぐ隣の殆ど同じ世界だとしても。だが風の流れがない場所ならどうだろう?例えば密閉されたUFOキャッチャーのガラスケースの中とか。幸いにも目視する様なタイプではなかったらしく気付く事はなかった。後は半径数十センチある魔方陣を使わなくても魔法を使える範囲で〈火炎槍〉を作りだした。燃え広がるまで少し時間がかかったが、5分程で燃え尽きるくらいの魔力量に調整したので証拠は残らないだろう。
ユ「一応言っておこうかしら。風鈴ちゃんは未成年の女の子だったから声を掛けたの」
ロ「その結果金髪の男が女の子に声を掛けるって事案が発生したっス」
レ「ム…声を掛けただけで事案になると言うのか?」
ユ「なるわよ。でも今回の件は普通にアウトだと思うの」
ロ「ユグドラシル…まさかっスよね…?」
ユ「…」
レ「金髪の女性に私の子供になる?と声を掛けられる事案が発生。駆けつけた警官にも同様の…」
ユ「厳しい世界よね」
ロ「ドラゴンがスマホ使ってるんスけど…」




