暗黒 ①
設定にない事を滔滔と語るウェラさん
ウ「魔王!彼の者は向かい来る人類の軍勢をちぎっては投げちぎっては投げ!その様は伝承や神話に語られる悪魔その者であり5人の英雄に斃されるその時まで悪業を重ねたという。…聞きたいかね?」
ガ「それは…」
ウ「英雄の中には突出した才能を持つ者が2人、片や放たれる万の弾丸から身を守り、放たれる魔法は億の命を瞬時に消し去り同じ数の命を救ったという大魔法の使い手。片や一太刀の内に数千、数万の斬撃を繰り出し…万物を両断する片刃は空に輝く星をも砕いた。そんな2人が居たそうだ」
ガ「…」
ウ「…ふふふ…どうしたんだい?まだ始まってすらいないというのに。顔が真っ青じゃないか」
ガ「チェンジで!」
ウ「却下する!彼らはある夜、今や失われた最低災厄の兵器である核すらも跳ね除ける…」
「さて…と。質問はもう終わりだろうか。美味しい物もご馳走になった事だし今日は家に帰らせて貰うとしよう」
「そうですか。来客用のお菓子は腐る程置いてあるので何か包んできます」
「いや、それは結構だよ。これ以上贅沢をするのは少し…ね」
シャルウェラとロイドは椅子から立ち上がるとハグをして名残惜しそうに別れの挨拶をした。
「初めて来てくれたんじゃしもうちっとゆっくりして行っても良かったんじゃないか?」
「ふっ…そうだな。いつになるかは分からないが今度纏まった時間が作れたならそうさせて貰うさ」
「おぉう。またねウェラちゃん」
「うん、また会おう」
リビングの扉を開け廊下に向かったシャルウェラにロイドとノーステリアが続く。ガルは見送る気にならず椅子に座った。
(いい…匂いだった…。それはそうとウェラちゃんの話でなんか気になることでもあった?)
(いや…卑怯な罠で失った昔の仲間を思い出したから。少しな)
(それって力取り戻した前の話だろ?仕方ないって)
(そうだな。仕方ないな)
ラック……。ボン!ドン!ドン!
外から爆発音が聞こえる。全く…誰が掃除すると思ってんだ。
程なくして玄関に行っていた2人が戻ってきた。
「ロイドさん、少し話たい事があるんですが」
「ん?ええよ」
「ガル君…それは人前でしてもいい話?」
「さっきから気になってると思いますけど、そこでする事が無くて机に頭を擦り付けているコイツの話です」
自分の話だと分かると気だるそうにしていたレグナスが頭を上げこちらを見た。
「惨い…」
「レムグナムスくんか。どうかしたんかい?」
「はい。まずは関係から、コイツは今年高校卒業予定の18歳で俺とは…」
「弟だ!」
「は?」
「え?」
「!!」
突然の暴露にその場に居た全員が驚き固まった。
「我もごく最近まで知らなかったのだがな、会ってみて確信した!」
「語弊が有ります!その表現は適切とは言えません!コイツは見た目から入って今までの全挙動を見て頂いた通り、学校の成績も赤点ギリギリ。常識も少しズレているんです。挙句、自分には理解が及ばなかった家系図の話を曲解して何とか考えられる狭い範囲に思考を押し留めているだけに過ぎません」
「そ…それで?」
「ロイドさん。覚えはありませんか?」
「な、何に…?」
「ロイドさんには伝わっていないかも知れませんが、あの!不幸が起こった…」
「…!!国彦…!」
レグナスは言われた事を思い出したのかそれとも理解が及ばなくなったのか、静かに話の行方を見守っている。
「そうです。国彦さんの子供がレグナスです」
「そうだったのか…隆彦がまさか不倫なんぞ、とは思っておったが…う…ん…?…18…なら…国彦…は…10歳…!?」
おっと…とんでもない地雷が…。
「ロイドさん。混乱している中申し訳ないですが、一緒に初めから整理してみましょう」
「う…む。そう…じゃな。そうしよう」
「はい、まずは国彦さんが居て?」
「国彦くんが居て…10歳で…こど…」
「俺もあまり詳しくないので深く突っ込んでは考えない様にしましょう。10歳ならもしもがあってもおかしくない年齢です」
「"つっこむ”なんて…まぁ…」
随分早熟な10歳も居たもんだ。
「それから18年で育ったのがレムグナムスと」
「今にして思えば嫁も見つけんで…結婚する気が…?」
「真相は分かりませんが相手が誰であれ産んだのでしょう。なに、捨て子なんて珍しくもありません。しかしうちに届いた手紙によると案外身近で見守っていたのかも知れませんよ。もうその手紙はありませんが。燃やしたので」
「手紙か…どういった内容なんじゃ」
「腕っ節だけは強く育ったので近所付き合いくらいには助けてあげて下さいと。結局不幸の連鎖で引越ししましたけど、今日やっと呼び寄せたら今回ので家が壊れたらしいです。番犬代わりに家に置いてやってくれませんか?」
「そう言う事なら我が家で歓迎しよう!よろしくしようレムグナムスくん」
「…」
「よし」
「うむ!こちらこそだ」
「い、今主従関係のようなものが見えたわ!」
適度に思考停止してくれて助かった。こんなところでAR使いたくないからな。さ、風呂入ろ。




