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アモルファス  作者: 霧音
第四部 諸国巡り・弐
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三十七ノ八、メダリオン

「今のは?」

 ロナウズは再度同じ質問をしたが、その問いの意味は別だ。


「龍王『水鏡』のメダリオンだ」

 レコーダーは軽くあらましを説明する。

「禍牙は淀みと病をもたらすが、本来の水鏡は癒しと繁栄を司る存在。毒水の広がりを抑え一帯を浄化する作用が期待できよう……難点は、まぁ効果が上がるまで時間がかかることだな」

 レコーダーの言葉通り、水中ではゆっくりとメダリオンが発動している。


「私は翠嵐の術は得意だが、水鏡のものは苦手でね。メダルは古い知り合いに貰った一品だが……まぁアリステラを救うためなら致し方ない」

 レコーダーはその人物が誰かまでは説明しなかったが、魔人の知り合いとなればその類の何者かと思われた。


 ロナウズも多くは訊かずにいる。

「こんな小さな物で……なんとかなるというのか」

 率直な感想である。


「……四大龍王たる水鏡の力を侮ってはならんぞ。そもそもアール湖の水にも水鏡の加護がある。穢れた水がどれほど注ぎ込まれても……循環している限り、いずれは浄化する」

「いずれは?」

「言ったろう、時間がかかるのが難点だと」

 メダルが投げ込まれた湖面は、未だ何の変化も見て取れない。


「ともかくもこれで、あとは数時間耐えるだけだ。それよりも――」

 レコーダーはロナウズに向き直り、指を指す仕草で言う。

「残る問題は、そなただ」

「……」

 問題、そう指摘されてはロナウズ自身も受け入れるのみだ。


「そなたをある場所に連れて行かねばならんが、幸いにしてすぐ近くだ。構わんかね?」

「……」

 もとより拒否する意志はなく、仔細を問う必要も感じない。

 ロナウズはただ頷く。


 レコーダーは先程と同じようにロナウズの肩に手を置く。

 瞬くより早く、次の場所へと運ばれた。


 少し、視界が翳った気がした。

 先ほどまでの空と水の青い視界から、オフホワイトの空間へと移動していた。


 とても静かだ。

 それが室内だと理解したのは、見覚えのある景色だったからだ。


「ここは……? アリステラ聖殿――」

 そう言いかけて、気付いた。

「では……ない……」

 似ているが、何かが違う。


 レコーダーはくるりと回るようにして周囲を見回し、言う。

「ここはデュオデキム十二宮が九、アリステラの宮の中だ」

「アリステラの、宮……?」

「人の子らがアリステラ聖殿と呼ぶ塔の――オリジナルだといえば、わかるかな?」


 デュオデキム天体配置図にある十二のハウス

 それを地上に写したとされるのが十二神殿でありその九番目――それがアリステラ神殿である。


「……? しかしアリステラ神殿は遠い昔に解体され、移されたはず」

 その移設された先が、先ほどの埠頭近く、アリステラ聖殿の塔である。

「その通り。古よりの塔自体は他所に移されたが、しかし内部の機構はそのまま……ここにある」


「では、ここは……この塔はどこにあるのだ?」

「アリステラの外れ、古の交易街道だ」

 ロナウズは暫し考える。

 そこは四辻にも連なる旧街道。バスク=カッド邸など古き貴族屋敷の立ち並ぶ区画にも近い。


「あんなところに? いや、あの辺りには塔などないはず」

 塔はおろか聖殿関連の施設は全て、大昔に移設されている。


 レコーダーはそれには答えず、まずはここに連れて来た意味を説明する。

「これが何処であろうとも、そなたは今ここに来る必要があった。理由は……わかるな?」

「……!」

 レコーダーと話すロナウズの背後に、人の気配がある。


 ロナウズが振り返ると、それは五人ほどの祭祀官だった。

「貴方がたは……アリステラ聖殿の――」


 見知った顔がある。

 それは幼少期、アリステラ聖殿で力の制御を受けていた頃にいつも儀式を担当していた祭祀官たちである。


 ロナウズは知らなかったが、彼らはの正体はオペレーターである。

 オペレーターらしく、数十年ぶりの再会であっても顔色一つ変えることなくその場に立っている。彼らが来たということは、同じ儀式を執り行うということだろう。


 レコーダーは言う。

「まずは彼らの治療を受けたまえ。今のそなたは私の手にも負えぬほど不安定だ」

 ロナウズも、その件に関しては反論はないが、疑問は残る。

「しかし、彼らは聖殿からどうやって此処に? 外はあの通りだ」


 レコーダーが幾らか消滅させたとは言え、アリステラの街中に水の魔物は溢れている。

 ロナウズですら突破に手間取う有様だった。

 とても戦闘向きでない彼ら祭祀官が抜けられるとは思えない。


「――なぁに。此処と、港の聖殿は元々一つの機構。地表からは離れて見えるが、内部では繋がっているのだよ。特殊な回廊によって」

「内部?」

「地面よりも下だよ、此処は」

 地下、というだけではない。


 それはゲートなり、リフターなりを意味する表現であったが、ロナウズはその存在は知らない。けれどレコーダーのおかしな移動を二度も体験して、今更なにを驚くだろう。


「なるほど……。子供心に聖殿の広さについては疑問を抱いていたが……」

 仕組みはわからなくても、地下で移動出来るという一点は納得した。


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