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アモルファス  作者: 霧音
第四部 諸国巡り・弐
314/379

三十二ノ三、光と影

 ともかくも。

 居住区を離れ、長い廊下を歩いていく。

 壁も床も天井も、一つの石材を刳り抜いたように同じ色合いで継ぎ目がないが、もはや岩窟住居とは呼ぶには整備された通路が続いてる。

「造りは……あの砂船シップと似ているが……」

 バーツも何かを感じ取ってか言葉少なである。


「この感じ、ファーナムのギミック・プラントと似てるな」

 アシュレーの耳にも、ギミックの稼動音が聞こえている。

「これが、泉の底の石とやらで動いてるって?」

「らしいな。そうでもなけりゃあ無限の動力の説明がつかねぇ」


 かなり深くまでクロウラーの内部を歩いているが、通路には灯りがぼんやりと点っている。

「この通路も……知ってる」

 イシュマイルにとっては過去に一度、その後も夢の中で何度か歩いているのと同じ景色だ。

「クロウラーっていうのは、誰が修復をしているの?」

 イシュマイルがテッラに訊ねる。

 サドル・ノアで見た、これと似たような洞窟の中はもっと整えられていたし、テッラのいう『死んだ』建物とは違っていた。


 テッラの代わりに、エルが後ろから答える。

「クロウラーには自己修復の能力がある。生き物に近い構造だと考えればいい。さらには修復専用のパーツもある」

「どんな?」

「――人間も、その一部さ」

 エルはこの言葉に含みを持たせる。


「人がそこで暮らすこと、ともに旅をすること。これがクロウラーが生き続けるということだ」

 テッラはそういうと、両開きの扉の前で立ち止まった。

「ここで、わずかだが作物を育てている」


 テッラが鍵を外すと、エルが代わって扉を開いた。

 入ってすぐは足場となっていて、眼下には下に二階分ほど下がって広い空間がある。

「水耕……栽培のプラント?」

「そうだ。ただし、泉の水を直接引いているわけではない。地下水からだ」

 アシュレーがすぐに気付いた。

「じゃあ、ここにも水プラントが」

 テッラは頷く。

「水プラントが一番長く保つ。設置された数も多い。人の住む所ならどこにでもある」


 下を見ると、平行する水路に沿って棚が高くなっていて、数種類の植物が育っている様子が見える。整えられた床や壁にくわえ、棚の周辺が明るいこともあって清潔そうに見える。

 規模こそ違えども、ファーナムで見た栽培プラントにも劣らない施設かと思われた。


「……驚いたな。光を当て続けてるのか」

 バーツは長身を折るようにして下を眺め見ている。

「水の浄化プラントが稼動する過程で、タービンを回して光を作っている。物理的な仕組みさ」

 エルが、テッラに代わって答えている。

「屋外ほど数は作れないが、確実に収穫は出来る。まぁ、赤岩の人数を養う程度にはな」


「水プラントっていうのは、そんなに古くから動いてるの?」

 テッラは程ほどで部屋を出、イシュマイルも続いた。

「そう聞いている。この施設も我等が作ったのではなく、元から在った物を復元しただけだ。結果は……見ての通りだ」


 このクロウラーに住んでいた人々の、かつての生活の一部が再現されている。

「人が住むには水が要る。水がないなら代わりの何かが必ずある。……水の痕跡を追えば過去の――人の足跡も見えてくるものだ」

 テッラは言う。

「流れる水は繁栄を、淀む水からは病と死。水の古代龍はこの両面を司る――」



 その後。

 一行は、岩窟住居の出口まで戻ってきた。


 外の陽は傾いていて、すぐにでも夜が訪れようとしている。

 ここからはオアシス側は見えないが、辺りの砂丘が仄かに明るく見えるのは、砂虫ワームへの対策に立てられた松明がまだそのままになっているためだ。


 テッラは、イシュマイルに言う。

「種のことだが……オアシスの連中とも話してみよう。難しい問題もあるが、お前の言う通りだ」

 良かった、とイシュマイルは頷く。

「もし、上手くいかなくてもサドル・ノアなら力になってくれるはず。……問題は距離だけど」

 イシュマイルはすでに考えていたらしく、アシュレーとエルを見る。


「……ん、私?」

 エルは自分の胸元を指差してとぼけている。

「確かに私はどこにでも行けるが、ここでの仕事もあるのでな」

 エルはそういってアシュレーを見る。

「俺?」

「上級メンバーの証、アストライオスを取得するのだろ?」

「それは、そうだけど……」


 困惑気味のアシュレーを一通りからかい、エルはイシュマイルに頷いてみせる。

「ファーナムのこともある。『ディアンの娘婿』としても、君達の側に付こう」


 アカルテル・ハル・ルトワの動向、そしてファーナム聖殿騎士団にいるという『ディアンの娘婿』の正体。エルにとっては義務と興味が半々である。


「なに。同じ謎を共有するというのなら、ガーディアンに協力することもやぶさかでは無い。我々と君たちは所詮、フローターズ。似た者同士だ」

 素直に協力しよう、とは言わないエルである。


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