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アモルファス  作者: 霧音
第一部 ドロワ
102/379

十一ノ一、瓦礫

第一部 ドロワ

十一、つながり

 ドロワ旧市街。

 日差しは午後のものになっている。

 ファーナム第三騎士団とその遊撃隊は、急ピッチで出立の準備をしていた。


 天空を移動して行く太陽にも急かされたが、それ以上に彼らを焦らせるのは市内の雰囲気だ。

「実に慌しいことですね」

 そう皮肉を言ったのはアーカンスで、聞いているのはバーツだ。アーカンスは、今日はきちんと平時の制服に身を包んでいる。

「夜間にドロワの山道越えとは……昨日も今日も厳しいことです」


 アリステラ騎士団に続きファーナム騎士団も出立するが、その様子はアリステラとは正反対に逃げ出すかのようだ。もともとファーナムに対して良くはなかったドロワ市民の感情が、ここにきてまた悪化していた。


 バーツは瓦礫に腰掛けて何事か考えていたが、不意に口を開いた。

「アーカンス。遊撃隊は、ジグラッドに従って先にドロワを出ておけ」

 書類の束に目を通していたアーカンスは、その言葉に振り向く。

「なんですって?」


「俺はイシュマイルを連れて、ドロワ城に顔を出す。お前らは待ってねぇで、先に出発しとけって言ったんだ」

「……それは構いませんが」

 アーカンスは書類を閉じると、バーツの傍らに来て顔を見る。

「いつお戻りになりますか?」

「……」

 バーツはまだアーカンスの顔を見ない。


 アーカンスは何か思い至ったのか、ふぅと息をつく。

「わかりました、ファーナムへは私達だけで戻ります。しかし、いずれは合流していただきませんと」

「それはわかってる」


 アーカンスは薄く笑って言う。

「ウエス・トール王国に行かれるのですね……。確かに遊撃隊は国境を越えられません。国内で待機しましょう」

 バーツは肩を竦め「すまねぇ」と謝った。


「何かあったら、スドウに逃げ込め。アリステラでもいい、任務を盾にすりゃあ多少の無理も効く」

「貴方のやり方を見習えということでしたら、お任せを」

 バーツの助言を、アーカンスは皮肉で返した。


 正直なところ、アーカンスはイシュマイルは勿論、バーツもファーナムに入るべきではないと感じている。評議会など活動の妨げとなるものが多い上、ガーディアンの掟で関わることを禁じられているバーツの家族も、ファーナムに居る。


「ファーナムに着いたら、私にも一計あります。貴方が戻られるまでに成果を出しておきましょう」

「ほぉ?」

 バーツは、アーカンスの手の内を透かし見たのか、企むような笑みを浮かべた。


 第三騎士団と遊撃隊がファーナムで再起を図る間、イシュマイルたちはアリステラを経由して海路を往復する。

 これならば作戦にも支障は少ないはずだ。

「では、最小限の荷を竜馬に準備しておきましょう。ドロワ城にお連れ下さい」

「あぁ」


 アーカンスは言った後、ふと気付いてバーツに問うた。

「しかし、ドロワ城主が一体何の用事で……」

 バーツも瓦礫から腰を上げつつ、考える。

「さぁなぁ? しかし、どうも妙な気配はするんだよなぁ」

 バーツは今朝から妙な違和感が消えず、考える時の癖で髪を指で梳き上げた。



 イシュマイルは、ドロワの旧市街に足を向けていた。

 ドロワの街に慣れてくると、街の中心にあるのはドロワ聖殿であり、シオンだと感じる。


 旧大通りの見える角まで来ると、聖殿の周囲に人が群がっているのが見える。

(シオンさんに会うのは無理かな?)

 ともかくも聖殿の前まで行ってみると、祭祀官らしき人物が数人、何かの儀式を執り行っている。

(なんだろう……ノア族の儀式とちょっと似てる)

 祭祀官の列に、シオンはいない。


 聖殿の儀式が屋外で行われるなど、イシュマイルはこれまでに見たことがない。見学の作法などはわからないが、ともかく暫く儀式を見ていた。

 しかし、何か様子がおかしい。

(祭祀官長の代理であるシオンさんがいないのに儀式?)


 不意にイシュマイルは、思い当たった。

(もしかして、もう聖殿を出ちゃったのかな?)

 イシュマイルは頃合を見てそっと人垣を分け、昨日出入りした裏口の扉をくぐった。


 聖殿関係者のみが出入りする部屋には、今日は荷を搬入する労働者らがいた。

 彼らはイシュマイルを見咎め、出て行くよう促したがそれに気付いた事務官が取り次いでくれた。

「イシュマイル・ローティアス君ですね? シオン様は奥です」


 聞けば、昨日の仮司令室はまだそのまま残っているらしい。シオンは別室に控えて居て、まだ聖殿内で活動しているとのことだった。

 イシュマイルは事務官に礼を言い目的地へ向かった。


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