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【本編完結】マッシヴ様のいうとおり  作者: 縁代まと
番外編章

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1105/1106

【番外編】勝ち逃げするより、そこで待ってろ 中編(バルド&サルサム&オルバート&リーフ)

作中の時期:最終回後。全世界への報告エピソードから百年後

出演キャラ:バルド、サルサム(地の文のみ)、オルバート、リーフ等


簡単なあらすじ:

流れた時間を振り返りながらラキノヴァへとやってきたバルド。

ふと思い出すかつての『相棒』はすでにこの世を去っていた。



 人間とエルフ種のハーフの成長速度や寿命には個人差があり、老化するタイミングも人それぞれである。

 リーフの場合は人間がベースで耳も丸いが、老化速度は普通の人間よりもだいぶ遅い様子だった。神の遺伝子を持つ救世主たちよりゆっくりだ。

 ただし純血のエルフ種から見ると老けるのが早く見える、そんな塩梅である。


 もう少し幼い少年の姿なら、あんな情けなくなるような感想を抱くことはなかったんだろうな、とバルドは閉口しながら出発前の説明を聞いていた。

 どうやら転移魔石を使うのはリーフらしい。


 サルサムの子供たちはそれぞれ別の方面に才能を受け継いでおり、リーフは兄らしい振る舞いの他に空間把握能力と計算能力の高さを持っているようだ。

 しかしバルドが最後に会った頃にはそんな様子は見られなかったため、リーフも会わない間に努力を重ねたのだろう。


(……っし、リーフも頑張ってるんだ。俺も変にネガティブになってヘマ踏まないようにしないとな)


 バルドは心の中で両頬を叩くと、転移魔石によるふわりと浮くような浮遊感に身を任せた。


 そうして辿り着いたのが目的地であるベレリヤの砂漠地帯、トバルアークである。

 気候は温暖だと呼べる程度だが、一面が砂ばかりで隠れる場所がほとんどないため、照り返しも相俟って暑く感じられた。

 各所で砂上専用バギーのエンジンを噴かす音が聞こえ始める。

 バルドも一台あてがわれており、運転を担当することになっていた。

 後ろに搭乗可能な人数は四名であり、その中にはリーフも含まれている。


「魔獣は隠れているため我々が近づいても襲ってくることはありません。なので索敵に適した魔導師や召喚獣を等間隔に配置しています」

「このまま前に進んで見つけては掘り返して退治するローラー作戦、って感じだな」

「はい。地味な作業になりますが頑張りましょう!」


 バルドに笑みを向けたリーフの表情は母のリータに似ていた。

 うんうん、やっぱりサルサムにだけ似てるわけじゃないよな、とバルドは己に言い聞かせるように呟いたが――バギーを発進させる直前にリーフがじつに自然な動きで長く大きな包丁を抜いたのを見て目を逸らす。

 こういう日常の一部のように物騒なものを取り出すところは、やはりサルサムに似ていた。


「……君は僕とは違うベクトルでも面倒くさい人間だね」

「うるせ。あと小声だとしてもツッコミを入れるな、俺が独り言大好き人間みたいになるだろ」


 バギーのエンジン音で掻き消されているが、作戦中に変な目で見られるのは御免だぞ、とバルドはオルバートに釘を刺す。

 そうこうしている間に先導するバギーが出発し、バルドもそれに続いた。

 一匹目が発見されたのはものの十分も経たない頃で、東側の砂中に潜んでいるところを浮遊したイルカ型の召喚獣が見つけたらしい。


 潜み、自身が存在することで世界を侵すことを目的にしたその魔獣はふたつの首を持つエビの姿をしていた。

 シマエビに似ているが暗い緑色をしているせいか虫の一種に見える。

 そして大きい。一抱えあるクッションのようだ。


 跳ねる力も強く、一般人が見つけたなら弾き飛ばされて大怪我をする可能性があった。だが掘り出したのは歴戦の戦士や才能豊かな若い世代たちである。

 あっという間に追い詰められたエビ型の魔獣は攻撃をやめ、一転して逃げ出したがリーフの見事な包丁捌きにより空中分解していた。


「ははあ、リーフもやるなぁ……」

「でも背ワタまで取る必要あったのかな」

「アイツって料理が得意だろ、武器類は扱いが下手らしいんだけど調理器具ならなぜか上手く扱えるんだってさ。だから料理の延長みたいな感覚で……って、だから喋るなっての!」


 ついつい返事をしてしまう君のほうが気をつけるべきじゃないかな、とオルバートは悪びれる様子もなく言う。

 オルバートは伊織や家族には甘いが、自分自身であるバルドには未だに角の立つ対応をすることが多いのだ。これでも前よりマシになってるよね、というのは伊織による感想である。


 そうしてバルドたちは次々と魔獣を見つけ出しては退治していった。


 しかし次もエビ、更にエビ、またまたエビ、エビ、エビ。

 これは……とバルドが冷や汗を流したのと、リーフが困ったような顔をしたのは同時だった。


「これ、分裂型の魔獣かもしれませんね」

「眷属は潜んでても意味ないらしいから、たぶんそっちだろうな……」


 分裂して繁殖紛いのことをする魔獣はワールドホール閉塞作戦後に増え始めたタイプだ。母体となる魔獣を倒さない限り、時間の経過と共に増えるため厄介な魔獣の代表格だった。


「チビ共を探すより先に母体を始末したほうがいい。今までのエビは同じサイズをしてたから、そいつらと差異のある奴を優先して探そう」

「はい。まあ、まったく同じ姿をしていたら更に面倒ですが……分裂タイプの母体は大抵が分裂体より大きいので大丈夫なはず」


 リーフは包丁に付いたままだった魔獣の体液を拭き取りつつバギーへと乗り込む。

 再び探索が始まり、太陽が西へと傾いた頃――索敵担当の魔導師と召喚獣が反応した。それも複数が同時に、だ。


 つまり、それは対象がとても大きなことを示していた。

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