小坂、ザリチュと語り合う
校正して再投稿しました。
内容には変化ありません。
小坂邸のリビングに戻ってみれば、リビングのソファにはクローディアが座っており、本を読みながら寛いでいた。
「おや?待っていてくれたのですか?」
尋ねてみれば、クローディアは本から俺へ視線を移すと、俺の問いには答えずに尋ね返してくる。
「終わったのか?」
クローディアにしては珍しい反応だと思った。質問を質問で—というお決まりの口上を述べようかとも思ったが、彼女の表情は真剣そのものだ。応じてやるべきだろう。
「ええ。意外にあっさり片付きましたよ」
クローディアは一度頷いたのみで、しばらくは俺を見つめていたが、やがて本へと視線を戻した。
「頰に返り血がついておるぞ。ちゃんと拭っておけ」
クローディアの言に、おっと—と、呟きながらハンカチで頰を拭う。結構、べったりと付いていた。
教えてくれたお礼をせねばなるまい。徐に近寄ると、クローディアから本を取り上げて告げる。
「師匠、本が上下逆さです。はい、どうぞ」
上下を正して返してやれば、しばらくは動きを止めていたクローディアであったが、僅かに頰が赤くなると、うむ—とか呟いたきり黙り込む。
相当心配してくれていたらしい。くつくつと笑いながらリビングを後にした。
(次は…アビスさんに顔を見せるべきかな)
階段を上がり、踊り場を通過しても、二階からは物音一つ聞こえてはこない。アビスはアムルタートと共に、自室にいると思われる。タンパク質がリビングにいないところを見るに、クルスも自室だろうか。
(ファーレンさんは外かな?)
ファーレンが屋内にいるならば、もう少し騒がしい。きっと、ロロナのところにでも出かけたに違いない。
(…ああ。アビスさんとアムルタートさんか)
森精族は、獣人ほどではないにしろ、すこぶる耳がいい。下手をすれば、一里先の話し声まで聞き取れる—事はなかろうが、壁一枚二枚を隔てた程度では、彼女の聴覚から逃れる事はできないのだ。そんな訳だから、アビスとアムルタートの二人に気を遣って外出したのだろう。
—コンコン—
アビスの部屋のドアをノックすると、ややあってから声が返ってきた。
「今、開けるのである」
アビスがドアを開けると、僅かに魔力の残滓が見て取れる。妙に開けるのが遅いと思ったら、ドアの前にいるのが誰か、竜眼で確認したものであるらしい。
「よく帰ってきたであるな」
アビスは廊下へと出てくると、破顔しつつ俺の肩を叩く。部屋の奥にはアムルタートがいるのであろうが、招き入れてくれるつもりはないらしい。やや声量を落としている事から、おそらくはアムルタートが寝ているのだろうと思われる。
労ってくれた事に目礼を返してから、僅かに開かれた室内に視線を向けた。
「アムルタートさんの様子は?」
アムルタートの容体を問えば、アビスはガリガリと頭をかく。大きめな嘆息もこぼれ、随分と苦心したのであろう様が見て取れた。
「とりあえず水分だけ取らせて、先程ようやく寝たところである」
言い終えたアビスは苦笑を浮かべてみせた。けれども、弱音は何一つこぼさない。何に対して心を砕いていたのかは知らないが、言わないならば聞き出そうとするのも憚られる。アビスを労うだけに留め、ついでとばかりに伝えておいた。
「彼女が目を覚ましたら、何時でも構いませんので、声をかけてください。消化に良いものを作ります」
俺の言にアビスは破顔すると、すまないであるな—と前置きしてから続けた。
「何から何まで、本当に助かるのである」
再び目礼し、音を立てないように静かにその場を立ち去ろうとした。ところが、そんな俺の背中めがけて、アビスの声がかけられる。
「後日、話したいである。二人きりで」
肩越しにアビスを見れば、先程までの笑みは消えていた。真面目な話なのだろう。それは、俺にとっても有難い申し出だ。ちゃんと聞いておきたかったのだ。邪神という存在は、本当に悪そのものなのであるのか?—と。
“ようやく終われる”
俺が吸収しようと腕を伸ばした時、ザリチュは確かに、そうこぼしたような気がする。あの時、思わず手を止めて次の言葉を待ったが、結局、ザリチュは黙然としたまま、動こうともしなかったのだ。
「分かりました。私からも話したい事があったので、助かります。私も少し寝ます。何かあれば、部屋へ」
そう告げると、アビスは黙って首肯する。最後にもう一度目礼してから、俺は来た道を取って返す。長い廊下を歩き、角を折れる頃になって、ようやくドアの閉まる音が聞こえた。
オサカが立ち去るのを見届けた後、ゆっくりとドアを閉めた。
(無事にザリチュを討ち破ったか…まあ、あやつならば造作もあるまいな)
アムルタート曰く、ザリチュは生物に対して、滅法強い権能を誇るそうだ。乾きに渇きという、肉体面と精神面の二方向から同時に攻め立てるものでありながら、指向性をも定められるらしく、彼女の仲間達—すなわち、邪神共であろう—には、何の痛痒も与えていないようであるらしい。
その場にいるだけで脅威となる彼女だが、己を過信する事もなく、前線にはまず出てこない。後方から、こちらの消耗だけを誘うやり口は、当時、どれほど手を焼いたのか、想像に難しくない。
(単身での戦闘能力は、高くはないそうであるからな。不死系魔物であるオサカには、権能の効果も薄い。物足りない相手であった事だろう)
ベッドの側まで歩き、サイドテーブルの上に置かれた水瓶を持ち上げ、直接水を喉の奥へと流し込む。
先のオサカからは、僅かにザリチュのものと思わしき、いけ好かない気配を感じた。彼の力で取り込んだのだろう。それが故でもないが、少しだけ喉が渇いた気がした。
(聖剣で滅するならまだしも、その身に取り込んだか。となれば、後は人格の乗っ取りあいであるが…ザリチュ如きでは、オサカをどうこうする事など不可能であるな)
神は基本的に不滅であるため、その身に取り込んでしまえば、それはそれで危険な事になる。本来ならば。しかし、オサカはあれで我が強く、神を取り込む危険性とて既に把握している。まず、あれが負ける事はあり得ないだろう。ザリチュはもはや、滅したと見て間違いない。そうなれば、残すところの問題は、アムルタートの回復のみである。
音を立てないように水瓶をサイドテーブルに戻すと、静かに椅子を引き寄せ、腰を下ろした。
(ふう…まずは一人合流であるか。それにしても、思っていたよりも芳しくない。後…何人、残っているであるかな…)
アムルタートは、かつての我の仲間だ。共に手を取り合い邪神と戦った、聖火神の一人だ。とはいえ、心優しく気性は穏やかで、彼女自身の戦う力は0に近い。当時も、後方支援がアムルタートの役割であった。今回の事とて、ザリチュから逃げ回り、古城へ流れ着いたのだろう。
(一体、どれほどの苦労を重ねた事か。可哀想に)
寝息を立てるアムルタートを見下ろして、大きく嘆息する。眉間を揉みつつ、過去の己がした決断の正否を問うた。
(あの時は、聖剣を邪神達に奪われぬ事が第一と考えていたが…本当にそうか?地上に戦う術を持たぬ聖火神達をも残して、迷宮の最奥へと引きこもった事が…本当に正しかったのか?)
アムルタートは不滅・再生という権能を持つ神である。不死系魔物と近しくはあるが、魔石を持ちはしない。今日まで無事に存えてこられたのも、偏にその権能が故に違いない。
(それにしても…)
オサカはアムルタートを不死系魔物であると思い違え、己が血を与えていたが、別に血である必要はなかった。要は魔素と水分があればよかったのだ。マナ・ポーションの一つでも与えておけば、同じ結果が得られた事だろう。それを思えば、オサカのそそっかしさが、少しだけ面白く感じられた。
(少し思考がそれたであるな)
頰を揉み、慌てん坊な友人の姿を意識の奥へと引っ込める。緩んだ口元が引き締まったのを確認してから、再びアムルタートへと視線を落とす。
アムルタートは薄らと汗をかいていた。頸から顔にかけて、テカテカと光る汗粒が見える。前髪が湿り額に張り付いた様は、妙な色気を覚えさせた。
拭ってやるべきか逡巡するも、起こしてはまずい。手にしたハンカチは、膝の上に置いた。
(地上に出てから、どれほどの月日が経った事であるか。イチロー達からは、それらしい便りはない。となれば、未だに聖火神は一人たりとて見つかっていない事に他ならぬである)
もしかすると、かつての仲間達は皆が皆、既に倒れたのではなかろうか?—と、嫌な予感が過ぎる。ここで眠るアムルタートこそが、聖火神最後の一人なのではなかろうか?—とも。
(そうなれば…我は…)
例えそうであったとしても、オサカと共にあれば、邪神掃討も夢ではない。上手く立ち回れば、囲まれでもしない限り、十分に現実味を帯びていると思われる。例えオサカと二人きりでもだ。
しかし、それでは余りにも悲しいだろう。遅きに失した事は理解している。千年以上も墓土臭い迷宮の中にいたのだ。外の世界はもはや別物で、文明そのものも、かつての技術を感じさせるものは遺構すら見当たらない。
(そういう意味では、あの古城は懐かしかったであるな)
地上に出てから唯一目にした、かつての世界の残滓。旧文明の遺産である古城。あの時、オサカには気付かれなかったが、我は安堵していた。ようやく、ここが間違いなく己の生きた世界であると、実感が持てたからだ。
(…ダメであるな。考えがまとまらないである。聖火神は可能な限り助ける。邪神は倒す。まずはこれだけで良いであるな)
ふぅ—と、息を吐きつつ首を振る。思考が取り散らかり、意識を深く没頭させる事ができない。聖火神の一人でも見つかれば、そこから何らかの伝手が得られると考えていたのだ。けれども、期待は見事に裏切られた。いや、そうと決まった訳ではないが、戦闘能力のないアムルタートが一人でいるなど、あり得ない事だ。となれば、考えるまでもなく、彼女は孤立しているのだろう。或いは、他の聖火神は全滅したのかもしれない。
(神は基本的には不滅であるが…死んだとなれば、転生を果たすまでに、どれほどの月日を要するのか…転生したとて、奪われた力は返ってはこないである。記憶とて、戻る保証もなし。…はぁ…まいったであるな)
少し楽観的に考え過ぎていたのかもしれない。しかし、落ち込み、塞ぎ込んでもいられない。己が甘かった事は深く反省して、次展開を考えるべきだろう。もっとも、その次展開を考えるのに、思考がまとまらない訳であるが。
(今回は、アムルタートを助け、かつザリチュを討ち滅ぼす事が叶った。大金星である)
ザリチュはただ死んだ訳ではない。簒奪者に全てを吸収されたのだ。そうなれば、基本的に不滅の神といえども、もはや復活はあり得ない。事実上の消滅だ。将来の憂いが一つ消えた事をも合わせれば、上々の結果であると納得すべきなのだろう。
—ゴォン—
鐘の音に我に返り、なんとなしに立ち上がる。さて、どうしようか—と少しばかり考えたが、とりあえず換気をする事にした。
閉じられた窓を開けてみれば、いつの間にか空は茜色に染まっており、坂を下りたところにある隣家の前には、豪奢な馬車が止まっているのが目についた。門兵が開門するのを待っているのだろう。あそこの主人は、確か文官だったはずだ。勤めを終えて帰ってきたに違いない。
「アビス様…」
背後から聞こえた弱々しい声音に、肩越しに視線を向ければ、意識を取り戻したアムルタートが我を見つめていた。
「おお、目覚めたであるか」
「…はい。ご迷惑をおかけしました」
アムルタートの目礼に頷きながら、窓を閉める。ぐるりとベッドを半周して椅子を引き寄せ、アムルタートの側に腰を落ち着けた。
水瓶を持ち上げてみせるも、アムルタートは首を振る。喉は渇いていないらしい。ならば、少し語らうのも良いだろう。
「安心せよアムルタート。ザリチュは既に滅した。我の仲間の一人が、乾きの神力をその身に宿しているのを見たのである」
アムルタートを安堵させるべく、ザリチュの消滅をいの一番に口にしたのだが、一瞬、アムルタートの表情が曇る。これはどうした事かと訝しめば、アムルタートは徐に尋ねてきた。
「…あ、あの…オサカ…さん、でしたか?」
おずおずと問いかけてきたアムルタートであったが、シーツを握る彼女の手には、僅かに力がこもったのが見て取れた。なるほど。どうやら、オサカを警戒しているらしい。
「オサカであれば、ザリチュごときに喰われる事もないである。もはや、お主が苦しむ必要はないのであるな。まあ、警戒する気持ちも分からなくはないであるが、あれの人となりを知れば、警戒も薄れるである」
我の言に、はい—と、力なくアムルタートは首肯する。けれども、その先に何かを口にする事もなく黙り込む。我も声のかけ方に迷い、視線を落として、きまり悪さに頸を摩る。それきり音は途絶えた。
(…な、何を話せば良いであるか…)
勢い込んで連れてきたは良いものの、よくよく思い返してみれば、アムルタートと共通する話題などない。ザリチュの話にアムルタートが興味を示してくれない以上、話題は尽きたのだ。今日までの苦労を労うのも、違う気がする。一体、どの口にそれを告げる資格があるというのか。
「は、腹が空いているだろう?何か食うであるか?それとも、もう少し寝るであるか?」
勇気を出して、今一度声をかけてみたのだが、顔を上げれば、アムルタートは瞼を閉じていた。けれども、顔は満足げであり、目尻からはうっすらと涙の伝った跡が見て取れる。
「よか…た。ハルワ、タートお姉様…ようやく…仇を…討て、ま…」
僅かに口元が動いたきり、言い終える前に寝息を立て始めた。反応が鈍かった事も合わせて考えるに、アムルタートの疲労はピークであったのだろう。
(ハルワ…タート?…ハルワタート?)
ところで、どこかで聞いた事のある音の響きに、我の意識は囚われた。顎に手を当てて思い起こせば、ゆらゆらと水面の如く揺れる真っ暗な脳裏に、何者かの影が浮かび上がる。腰に手を当て胸を張り、脚を開いて佇む影だ。吊り上げられた眉に、眉間に刻まれた皺は、まるでオサカを思わせるが、その背にはどういう訳か、アムルタートを庇っていた。
(…ハルワタート…いたであるな。そんなのが…)
アムルタートとセットであると認識すれば、容易に思い出せた。やがて脳裏の映像は、勝気そうな女性の輪郭を形作ってゆく。アムルタートの双子の姉である、ハルワタートの姿を。陰で我の事をおっさんと呼ぶ、実に無礼な女神だ。一回くらい、ブレスで焼いてやろうか?—と考えた事は、一度や二度ではない。
(仇を討つ?つまり、ハルワタートはザリチュに取り込まれていたのであるか?…ふうむ。これはもしかすると…)
そのハルワタートだが、ザリチュに倒されていたらしい。思わず、ニヤリと悪い笑みがこぼれた。別に胸がスッとしたからではない。ザリチュがハルワタートを倒したのであれば、十全とはいかずとも、その力を継承していた事だろう。なれば、オサカの中にはハルワタートの魔力も眠っている事となる。
(死んでいたのは残念であるが…上手く運べば、転生を待つよりも早く、いや、すぐにでもハルワタートを復活させる事ができるかもしれんであるな)
いや、きっとできる。我がやって退けた事と同じだ。それをオサカにやらせれば良いだけの話なのだから。
(…アムルタート…貴様ら姉妹の再会は、まもなく叶うであるぞ?)
不幸中の幸いとでも言えば良かろうか。ハルワタートがザリチュに倒された事は、僥倖だった。アムルタートもハルワタートがいれば、元気を取り戻すのとて早かろう。
そんな事を考えて、すっかりと機嫌を良くした我は、椅子も片さずにソファに横なると、良い夢を見るべく瞼を閉じた。
「お前…死んでもまだ意識はあるんだな…」
足元のみが白く彩られた暗闇の中、俺は再びザリチュと向かい合っていた。おおよそ現実味のある光景ではないが、これが夢などではなく、己の意識の内であるというのは、何故か良く理解できた。
「はぁ…まぁ、そうね。伊達に邪神なんて呼ばれてないわよ…先に言っておくけれど、今更あんたをどうこうする気はないわよ?」
きまり悪そうに視線を逸らしながら、ザリチュは陳ずる。
その言を、まるまる信用するのもどうかと思われたが、目の前のザリチュは、古城で見た彼女の印象とは何かが異なる気がして、嘘はなかろう—と、判断した。
「じゃあ、これはどういう事だ?」
「…え?何が?」
腕組みしてザリチュに問うも、質問が抽象的過ぎて伝わらなかったらしい。訝しげな顔を作るザリチュを手で制し、言い直す。
「これは、あれだろ?俺の心の中だろ?それを踏まえて尋ねたい。何がどうして、俺とお前は向かい合っている?」
今度は通じたようだが、ザリチュからもたらされた答えは、どうにも首を傾げるものだった。
「…何言ってんの?あんたが私を呼んだんでしょ?」
「…ん?」
俺に呼ばれた—というザリチュだが、当然、こちらにはそんな認識はない。向かい合ったままで互いに首を傾げるも、納得のゆく仮説の一つも浮いてはこなかった。
「まあいい。じゃあ、質問を変えよう。古城で見た時とは、随分と印象が異なるが、それはどうした事だ?」
「…そうね。こんなに楽な気分になったのは久しぶりだわ。ちょっと私自身でも整理がついていないのよ。どう説明したものかしら…」
俺の問いに、ザリチュはしばらく考え込むも、やがて、多分だけど—と、前置きしてから語り始めた。
「私はね、元々は人間だったのよ。死にたくない、魔物化したくない—という一心で、神を呼び出して、神と一体化したの。細かいところまでは思い出せないけど、昔はね、そういう儀式があったのよ」
ザリチュの語る内容は、アビスから聞いた話を裏付けるものだった。首肯を返して先を促せば、ザリチュは当時を思い出すかのように、眉間に皺を刻みながら続けた。
「最初は特に何も変わらなかったけれど、徐々に己の中で…上手く説明できないのだけれど、黒い感情が噴き出してゆくのを自覚したわ。他者を喰らい、誰を犠牲にしてでも生き残りたい…言葉にするなら、そんなところかしら?…ともかく、その思いは日に日に肥大化して、ついに己では抑えられなくなったの」
「それが、古城で見たお前か?」
思わず口を挟んだ俺に、ザリチュは厳しい視線を向けてくる。何事かと思えば、“お前”はやめて—だそうだ。気圧されて頷いてしまった。
「そう。古城で見た時の私が、まさにそれね。生き延びたい。死にたくない。そのためならば、どんなに手を汚してもいい—そう思っていたわ。あんたに吸収されるまでは」
「…今は違う—と?」
“お前”と“あんた”では、如何程の違いがあるだろうか—と、腑に落ちない思いを抱えつつも尋ねれば、ザリチュは徐に頷く。
「ええ。頭の中のもやが、全て取り払われたかのような心持ちよ。…正直、己がしてきた悪行の数々を思い起こすのも腹立たしいわ。もう、本当にどうして…」
はあ—と嘆息し、ザリチュは顔を伏せる。
俺はといえば、黙ってザリチュの言葉を待っていたのだが、再び顔を上げた時のザリチュは、責めるような表情を浮かべていた。
「それよりもあんたよ」
「え?」
いきなり指を突きつけられ、言葉に詰まる。俺がどうしたというのか。なるべく平静を装い、ザリチュの言を聞いた。
「あの時のあんた、私以上に残忍よ。今のあんたと、あの時のあんた、どっちが本当の姿なの?」
思わぬ指摘に目を見開く。確かに、やり過ぎたと思っていた。いくら敵対する相手とはいえ、悪戯に傷付けるようなやり方は、褒められたものではない。猛省し、今後は注意せねばなるまい。
「あー、そうだな。それについては詫びる。どうにも、不死系魔物化してからの俺は、残忍…気性が荒くなった気がしている。おま…ザリチュさんの件についても、酷いものだと自覚していた」
敵対していた相手を、さん付けで呼ぶのもどうかと思うが、他に適当な敬称も浮かばず、呼び捨てはもってのほかだ。きまりの悪さにガリガリと頭をかけば、変なやつね—と、笑われた。
「不死系魔物化の弊害…ね。聞いた事はないけれど、ともかく気をつけなさい。私なんかより、よほど邪悪な存在に思えたわ」
「き、肝に銘じておく」
いつの間にか、俺と彼女の立場が逆転している気がしないでもないが、ザリチュの言葉には、確かな気遣いが感じられて、素直に頷けた。元々は、他者を思いやれる姉御肌の女性だったのかもしれない。
「…さて、ごめんね。眠くて敵わないわ。もうそろそろ私は消えるけれど…師匠ちゃん?いい子ね。あんな子を悲しませちゃダメよ?」
「…見てんなよ…」
アビスといいザリチュといい、神様というものは、人のプライバシーを何と心得ているのだろうか。さっさといけ—と追い払うべく手を突き出して、ふと思い出した。
「…何か、言い残す事はあるか?」
「…アムルタートに…やっぱり、何でもない」
言葉を濁し、ザリチュは寂しげに首を振る。おそらくは、詫びようとしたのだろう。だが、詫びたところで満足するのは己のみ。アムルタートからすれば、許せるはずもない。そこに気が付いて、言葉を呑み込んだに違いない。
「ごめんね。色々と教えてあげたいんだけど…時間を無駄にしちゃったわ。もう、ここまでかな」
「…ああ、十分だ。もう眠れ」
別れを交わす間にも、徐々にザリチュの姿は薄れてゆき、ついには何も見えなくなれば、スポットライトで照らされていたかのように、白く輝いていた足元までが、暗闇に呑まれた。
(邪神…か。元々は悪い奴らじゃなかったのかもな)
己の所在すらも判然としない闇の中、天を仰いで嘆息する。ザリチュを手にかけた時には後悔などなかったが、今は違う。他に手がなかったのか?—と、苦い思いに駆られていた。
(いや、ダメだ。彼女はアムルタートと明確に敵対してしまっていたはずだ。手打ちにして終わりなど、アムルタートが納得できはしないだろう)
それに、ザリチュとて、己を取り戻せたのは死んでからの事だ。俺に取り込まれてから後の話だ。そう思い返して、これでよかったのだ—と、言い聞かせた。
「ん?…んん?」
身体の重みを感じて目を覚ませば、そこは己の自室であった。ゆっくりベッドから身を起こし、やや汗ばんだ額を拭った。足元には読みかけの魔術書が転がっており、どうやら読書中に根落ちたらしく、栞が外されていた。記憶を頼りに、覚えのあるページへと栞を差し込んでから枕元に放る。
(少し寝過ぎたな)
サイドテーブルの上に置かれた腕時計を見て、既に夕刻である事を認めると、立ち上がって大きく伸びをする。背中から、パキパキと小気味良い音がなった。
(…残忍ねぇ)
思えば、この世界に来て、最初に戦ったのはスケルトンであった。棺桶から身を起こそうとするスケルトンの魔石を、躊躇なく砕いたのが始まりだ。それから聖剣の迷宮を抜けてクローディアと出会うまで、ひたすら戦いの連続だった。その中において、何ら感情を揺さぶられる事がなかったのは、偏に不死系魔物化の賜物に違いない。
(その一方で、徹底的に相手を叩き潰そうとする、まるで闘争心の塊のようなものを感じるようになった。これも、不死系魔物化によるものなのか?)
はあ—と、深く嘆息しつつ部屋を出る。残忍といえば、俺の他にも一人、そういう手合いに心当たりがあった。クルスである。
(あいつは俺の因子から作られた存在だからなぁ)
ザリチュから警鐘を鳴らされるほどに己が残忍であるならば、クルスとて注意が必要であろう。そうでなくても、彼女の言動には眉をしかめる事が多い。
(何かしら、注意を促しておくべきだろうな)
クルスの部屋は、俺の部屋の隣に位置する。ドアの前へとやってくれば、シャキン、シャキンと不思議な音が聞こえるではないか。何やら嫌な予感を覚えるも、人のいない場所の方が話しやすい事もあろう。一旦深呼吸してから、思い切ってドアをノックした。
「開いているであります」
誰何の声すらなく、入って良いと告げる声に、女の子なのに不用心だろ—と思わなくもなかったが、一先ずは気にせずにドアを開けた。
—シャキン、シャキン—
やはり、謎の音はクルスの部屋から聞こえてきていたものであるらしい。何の音だ?—と視線を走らせるが、音の正体を見破るよりも先に、クルスと視線が交差する。
「あ、閣下でありましたか。何用でありますか?」
「ん?ああ…ちょっとな…」
ところで、こうしてクルスと話す間にも、例の音は止まない。いよいよ気になって、引き続き音の出所を探した。
—シャキン、シャキン—
音はクルスの手元から聞こえていた。それはクルスの親指と中指に嵌められていた、葉巻カッターの刃が擦れる音であった。一体どこで作ってきたものかと、僅かに首を傾げたが、クルスの魔法は具現化に特化したものである事を思い出して、合点がいった。
(…そして?この部屋の有様は…)
そこいらには、大量に切断された枯れ草の束が転がっている。更に床には、枯れ草で作られた人型と思わしき手足のない人形—否、手足はあったのだろう。切り落とされる前は—が、転がっていた。
(うわぁ、帰りてぇ…)
この状況はどうしたものか?—などと考えるまでもない。クルスは手にした葉巻カッターで、しきりに人形の手足を落としていたらしい。残忍さ云々を問われれば、限りなく黒だ。激しい口の渇きを自覚したが、ここで引き下がる訳にはゆくまい。ごく自然を装って、クルスに尋ねる。
「その…それは何をやっているんだい?」
俺の問いかけを受けたクルスは、満面の笑みを浮かべてみせる。それにつられて、俺も僅かに笑ってみせた。
「それで、何用でありますか?」
後ろめたい事などないかのように、クルスは朗らかに問い返してくる。俺の問いに答えるつもりはないらしく、今もなお、シャキン、シャキン—と、まるで警告のように、葉巻カッターが鳴らされていた。
「居眠りしていてな。これから夕食を作る。すまないが、皆には遅くなる旨を伝えておいてくれないか?」
「お安い御用なのであります」
快活に応じつつ、クルスは立ち上がると、手に持っていた人形を足元へ落とした。
—グシャ—
かと思えば、あえて人形の頭部を踏みつけてから一礼し、俺の脇を抜けてゆくクルス。頭部の潰れた人形は、既に左手が切断されていた。
(クルスよ、すまん。お前の暗黒面は…実は俺から引き継いだものである可能性が高い)
俺はクルスの背中に詫びると、調理場へと足早に逃げ込むのであった。
「クローディア大師匠、どう思います?アビスさんとアムルタートさんの関係?」
「…お主、好きじゃのぅ」
自室で遠距離通話の魔道具改良に勤しんでいたところ、ファーレンが訪ねてきた。
コロコロと嬉しそうに笑っては、事あるごとにアビスとアムルタートの関係を、ロマンスにこじつけようとしている。そういうのに憧れる歳頃なのかもしれない。
—コンコン—
「はーい、空いてますよー」
「…何でお主が答えるんじゃ。わしの部屋じゃぞ?」
ノックの音に、わしに何の断りもなく、勝手に許可を出すファーレン。割と何時もの事なので、注意は一応するものの、視線すらファーレンには向けない。慣れたものであるし、ファーレンは聴力に優れる森精族だ。きっと、近付いてくる足音だけでも、何者かの判別が付いているに違いない。
さて、ドアを開けて現れたのは、クルスであった。決して部屋の中には入ろうとせず、慇懃に礼をしてから口を開いた。
「閣下が居眠りをしてしまったらしく、これから準備を始めるため、夕食は少し遅くなってしまうそうであります」
「ああ。承知したわい」
クルスの言伝に礼を告げ、わしは魔道具改良の作業に戻る。
「では、失礼するで—」
「ちょっと待ってくださいよクルスさん!一緒にお話しましょう!」
クルスも用は済んだのだろう。ドアを閉めて立ち去ろうとしたようだが、そこをファーレンに捕まったらしい。チラリと視線を向ければ、露骨に顔をしかめるクルスが、ファーレンの顳顬へと銃口を押し付けていた。
(あれで退かないとか…凄いのぅファーレン)
くつくつと笑みがこぼれたのは、クルスの災難を哀れんだものだろうか。或いは、ファーレンのガッツに呆れたのかもしれない。
どうやら、クルスはファーレンの熱意に根負けして、付き合う事にしたらしい。背後で椅子を二つ引いた音がした。
「クルスさんクルスさん、アビスさんとアムルタートさんの関係って、どんな間柄だと思います?」
魔道具から魔石を取り出して、中に刻まれた魔法陣を具に見る。音声の出力はもう少し絞って良いし、拡声機能を使用しない限りは、魔道具所持者以外には、音が聞こえないようにせねばならない。そうすると、どのような魔法陣に作り変えるが効率的であろうか。
(もう一枚制御用の魔法陣を増やすか?…他の魔法陣は圧縮して暗号化し、複合情報のテーブルとなる魔石も別に組み込む…むぅ、単価がえらい事になるのぅ。没じゃ)
腕組みして考え込むわしの耳に、ファーレンのはしゃいだ声が届いた。また先程の質問をしているらしい。しょうもない—と思いつつも、クルスがどう答えるのか気になって、背後に意識を向けた。
「アムルタート様はアビス様にとって、都合の良い女だったのでありましょう」
は?—と、あまりの答えに凍り付く。我に返り慌てて振り返れば、クルスはなおも続けようとしているところだった。
「アムルタート様は心優しい性格をしていらっしゃるそうであります。また、アビス様から見て下位神であらせられるそうであります。となれば、アビス様は己の力に任せて、無理やり言う事を聞かせ—」
「ストップ!ストップ!」
わしが動くよりも早く、大きく手を振ってファーレンがクルスを止める。
己の発言が遮られた事に、不満げな顔を見せているクルスの肩を揺さぶりながら、ファーレンは次に問い質そうとした。
「何でそうなるんですか?きっと愛はありましたよ?二人は相思相愛の間柄ですよ?」
決めつけるのも違うと思うが、ファーレンの中ではそういうストーリーが出来上がっているものであるらしい。滔々と愛のストーリーを詩歌の如く歌い上げ、最後には言い含めるかのように、クルスへと頷いてみせるファーレンであったが、対するクルスは渋い顔を作ると、あっさり切って捨てた。
「愛?そんなものは脳が見せる幻想であります。子作りを円滑に行わせるための脳内麻薬であります。或いは動物的な行為を自己弁護するために用いる幼稚な言葉にもなったりするであります。もしくは、何の気持ちもこもってなくとも、囁やかれれば女は安心する不思議ワードの事でありますか?それとも—」
「やめいやめい!そういうのはいかんぞ!」
まるでクルスご自慢の機関銃のように、彼女の毒は止まらない。堪らず声を上げ、慌ててクルスを制止する。クルスはやはりクルスであった。
(このところ、少しはまともになってきたと思っていたものじゃが…まだまだじゃのう…)
知識ばかりが膨大になっても、そこに経験が伴っていないクルスは、この手の捻くれた主観を育てている事がままある。言いたい事は分からないでもないし、実際に否定しきれない場面とてあろう。けれど、もう少し真っ当な価値観を育んでもらいたいと思う。それが不可能でない事は、ここ最近の彼女自身が立証できているのだから。
「クルスよ、お主はまず愛を知ろう、な?オサカの事をどう思う?」
クルスの肩を掴んで尋ねれば、クルスは目を見開いた。いきなりの質問に驚いたのかもしれない。
(オサカの事は好いておるのが知れておる。そこから愛を語れば、クルスにも分かりやすかろう)
ちなみに、この質問にはファーレンも期待しているのか、グッと顔をクルスへ近付けて、耳をピコピコと上下させている。ペシペシとクルスの頬を耳が撫でるが、お構いなしだ。
クルスはそんな耳を煩わしく払いながらも、大人しく問われた事には答えた。
「閣下は閣下でありますよ。オサカ帝国初代元首、タテワキ・オサカ閣下であります」
クルスの珍回答には、ガクッと肩の力が抜けた。ファーレンもそれは同じであるらしく、耳が力なく垂れ下がる。
「…それっぽいですよ、大師匠」
「そうじゃのぅ…クルスの野望が垣間見えたのぅ」
わしとファーレンの二人は、視線を交わして嘆息した。クルスのオサカに対する恋心を聞きたかったのだが、随分と斜め上な答えが返ってきたものだ。
(そういう事を聞きたかった訳ではないのじゃがのぅ)
まあ良いだろう。話が変な方向に進み出したが、わしはこの流れに乗る事にする。クルスの恋愛観はこの際捨て置く事にし、話を逸らすのだ。このまま、何ちゃら帝国の野望でも語ってもらおう。その方が精神衛生上、よほど健全に違いない。
(そうじゃのう、この子は生まれたばかりで、見目とは裏腹に、まだ精神は幼い。オサカへの想いとて、依存なのか恋心なのかの判断がつくまいて。ゆっくりと成長を見守ってやるべきじゃ)
まだ、クルスに愛を語らせるのは早かった—という事だろう。つい先程は、何やら深い言葉を吐いていた気がしたものだが、まだまだ上っ面だけのものであり、本質の理解には程遠いようだ。
(全く、感心して損したわい)
そんな事を考えて、思わず苦笑する。まだまだクルスはこれからなのだ。いずれ、内心の地歩を確立し、オサカを見る目から色眼鏡が消えた時、改めて問う事にしよう。愛とは何か—と。
「クルスさん、話が逸れてますよ。そういう事を聞きたい訳ではないのです!」
横から上がった声に、ギョッとした。わしの中では回避する方向で結論がでていたものだが、ファーレンが話を戻そうとしたのだ。思わず、机に立てかけてあった長杖を掴み、ファーレンの頭部へと振り下ろしてしまった。
「やめいっ!」
「あたっ!」
ところで、ファーレンを叩いたその時、パコン—と、信じられないほど軽い音が鳴った。
「うぬっ?」
「何でありますか?今の音は?」
頭を抑えて蹲るファーレンはさておき、わしとクルスは思わず顔を見合わせる。頭部を叩いたにしては、あり得ない音であった気がする。例えるならば、中身のない容器を小突いたかのような、軽い音だったと思う。
「…き、聞き間違いかのう?」
森精族という種族はポンコツである—というのは、ファーレンを揶揄って口にする事こそあれど、本当にそう思っている訳ではない。己の手にした杖と、ファーレンの頭部を交互に見やりながら呟けば、これはクルスが拾った。
「もう一度叩いてみるであります。脳症をブチまける勢いでお願いするであります」
「やめてくださいよ!僕の頭が潰れちゃいます!」
—パコン—
ファーレンが泣き喚く最中、またしても音がした。ちなみに、まだ叩いてはいない。わしは杖を振るってすらいないし、ファーレンはしっかりと頭部をガードしている。
これはおかしい—と、わしらは顔をしかめつつ、視線をかわした。
「何の音だと思います?」
「確かめるのであります」
「どうせくだらんオチだとは思うが、見てみるべきであろうな」
—パコン—
再び聞こえた音に、ファーレンの耳がピコピコと動く。そのまま立ち上がると、ファーレンはわしらを手招きしつつ、部屋の外へと出てゆく。どうやら、音の出所は別の場所であるらしい。
「…行ってみるかの?」
尋ねればクルスも頷いて返したので、二人でファーレンの背中を追った。
先導するファーレンについて歩き、一階に下りた後は食堂の脇を抜け、調理場を通過する。鍋の前で腕組みしていたオサカが、訝しげな視線を向けてくるも、とりあえず捨て置いた。
「この先です」
そう言ってファーレンが掴んだ扉の取っ手は、調理場から中庭へと出る裏口の扉だった。
「じゃあ、行きますよ」
「うむ」
ファーレンが扉を開き、中庭へと出れば、確かに、パコン—という例の音が、明瞭に聞こえた。
「…なんじゃあれは」
「不思議な光景であります」
「なんでしょうね?」
音の出所を探して視線を巡らせるまでもなく、中庭には一際目立つ一団がいた。オサカが主人たる三体の魔物だ。不定形の系譜に属するアーサーさん、おそらくは犬型魔獣と思われるエル、そして、元雛鳥の現コカトリス、ヒヨさんである。
アーサーさんが錬成陣で拳大の金属質な何かを作り出すと、それをエルが中庭の隅へと咥えて運び、数個重ねる。
すると、それに向けて、ヒヨさんの尾である蛇が、離れた位置から石を咥えて投擲するのだ。
—パコン—
放たれた石は見事に金属質の何かを捉えて弾き飛ばすと、エルは大喜びして跳ね回り、ヒヨさんも自慢げに羽を広げて見せれば、アーサーさんも伸び縮みして感情の高ぶりを表現している。
なお、そんな三体の魔物を、タンパク質は二階の窓から眺めていたりする。
「何ですかこれ?」
「何かの遊びでありましょうか?」
ファーレンとクルスの二人は、どういう訳かわしに尋ねてくる。そんなもの、知る由などなかろうよ。
「…こいつら、何処に向かって進化しておるのじゃ?」
わしの呟きを拾う者もいはしない。
次のラウンドが始まったらしく、三体の魔物達は、再び遊戯に興じ始める。
奇妙な光景に、呆然として立ち尽くしていると、オサカが食堂の窓から顔を出した。どうやら夕食ができたようである。




