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三好長慶との邂逅

 超順の眼前には齢十六であるにもかかわらず、自分の年齢を遥かに凌駕している威風を漂わせている男がいる。彼を見ていると、これが本当のカリスマかと納得されられてしまう。 

 彼の名前は三好利長、後に三好長慶と呼ばれる乱世の雄である。現在の研究では信長が興した統一政権の基盤をつくった人物として評価されている。

それにしても、私にとって彼と問題を起こすのは避けたかった。これは三好長慶が後に多大な権力を有し、私の構想の弊害となる可能を加味したからではない。彼は本願寺、興正寺と良好な関係を築く政治上のパートナーであり、真宗が都市寺内町を形成するためのパトロンともなっていく、重要人物であった。戦国時代で一番真宗に寛容といっても過言ではないだろう。彼のおかげで元亀に始まる大坂本願寺合戦の際に、信長に対抗できる勢力を築くことができたのである。

 つまるところ、私は三好長慶とは今後自然発生的に友好関係が形成されることを大前提と様々なプランを立てていた。だが、この状況は下手をすれば、その大前提が崩壊し、計画そのものが頓挫してしまう。

 まず事の発端をもう一度思い起こす。私の宿舎に押し寄ってきた武士団を福井親子が返り討ちにし、かつ大将首を挙げたのである。これは穏便に済まなかったための自衛なので仕方がないだろう。ただここが大名領国であったら、喧嘩両成敗法が友好となり、福井親子は処刑であったのだが。堺であったことが不幸中の幸いであった。

 しかし、その大将は細川政権における重要人物木沢長政の息子であった。この息子は父の権力をいいことに、屈強なものを連れ、畿内各地で横柄な態度で人を貶めていたという。時に財産を奪い、時に村を燃やし、時に身売りを助長したり、とんでもないことをやっていたのだという。ある一部の人間にとっては、これは喜ばしい事実であるが、木沢長政及び細川政権にとってこの行為は戦争開始の合図にほかならない。

 不幸か騒ぎを聞きつけた三好長慶が駆けつけたのである。堺には偶然滞在していたようだ。そこで問題は露呈。福井親子は再び抵抗しようとしたが、流石に三好長慶には叶わず、福井親子を含め全員が捕縛された。そして、信だけを解放し、解放した信を使者として、彼らの責任者である私が呼び出された。

 流石にこれは胃が痛い。下手をすれば私が三途の川を渡る羽目になってしまう。私は小さくため息をつく。流石の蓮秀もこれには助力が難しいらしく。「ごめん」と可愛く(キモく)謝罪された。上司なんだから、部下の尻ぐらい拭ってもらいたいものだ。…甘えか。

 私はばれない程度のため息をつく。

「貴殿が安芸国佐東郡の坊主超順か?」

三好長慶は低い威厳のある声で超順へ誰何を問う。それに呼応するように超順は下げていた頭をあげて、「そうでございます」と短く告げた。

「単刀直入に言おう。この件は無かったこととして、晴元様に取り計らってやろう」

 その言葉に私は目を丸くするしかなかった。しかし、冷静に考えて、これには裏があるようにしか思えなかった。こちらも単刀直入にその裏を尋ねてみることにした。

「もちろん、対価があるのでしょう」

 三好長慶はギョロとした目をこちら向けた。そして私を見下ろすようなポジションに顔の位置を変更した。これはおそらくマウンティングと言うやつであろう。まるで高校占めてる番長みたいなやつだ、と私は思った。

「ああ、そりゃこれほどの問題。タダで帳消しは…な。本願寺へ恩が売れるといっても、こちらは赤字だ。釣り合いが取れねぇ。もう少し色を付けてほしいところだ」

 超順は数秒間思案し、言葉続ける。

「それで要求は?」

 その台詞に長慶は鼻で笑う。

「はん、決まっている本願寺の戦への介入だ。それくらいは理解があってもいいと思うが」

 これには後ろにいた蓮秀も驚いたようで、「あっちゃー」とつぶやいていた。それもそのはず本願寺は天文一向一揆の戦争責任をとらされ、様々な不利益を被ったのである。ただ、これは武家より戦への参加をしつこく迫られ結果であった。本来的には、証如の先々代の宗主実如上人は本願寺とその門徒が何かしらの戦争へ介入することを禁じる遺言を残したため、本願寺の戦争介入はありえない話であった。

しかし、戦争に参加した結果がこれである。武家らに嵌められたのである。証如は同じ轍を踏まない。それに不信感をもっている。故に本願寺としての戦争参加はかなり悪印象を与える結果となる。今後の計画に問題が生じてくるので、超順は本願寺としての戦争参加を避けたい。

「確かに本願寺の介入は膨大な戦力を得られます。しかし、目的はそれだけですか」

 超順はあえて訝しむように長慶へ質問を投げかける。長慶はそれが気に入らなかったのか、「チッ」と舌打ちをしつつ質問への回答を用意した。

「当然膨大な戦力などは必要ない。俺がほしいのは、本願寺が味方をしたという事実だ。その事実だけで、相手は怯えて、降参、または自害すると推測している」

「しかしその相手は誰か」

「なぜ貴様らに教える必要がある」

 長慶は割り込むように告げた。ギラリとした眼光がこちらを向いている。一瞬身震いしそうになった。その身震いをなんとか耐えしのぎ平静を取り戻す。

 しかし、一体戦の相手を教えたくない理由はなんだ。まず政敵である可能は確実であろう。かつある程度の宗教権力が味方だという箔が必要だと言うならば、武力も多少持っている。しかも本願寺が動員しやすい畿内一円。そうなると奴か。

「木沢長政か」

 超順のつぶやきに、長慶ははっとした顔をして驚く。そしてまた余裕そうな顔に戻る。そして拍手しながら、

「慧眼、感服するよ。少ない情報でよくその回答にたどり着いた。その通り。でもな俺があいつを殺らなくても、結果的に貴様らは木沢と戦をおっ始めることになるんだぜ。それに俺が味方をしてやろうっていうんだ。むしろ、美味しい話だろうが。一方の俺は赤字だぜ」

「それはおかしいですね。木沢長政は現在畠山氏の実権を握っている。彼を倒すことで、河内国を攻めやすくなる。つまり、…そうではないですか」

 超順はあえて知ってることをすべて言わなかった。とりあえず、超順は先程からの長慶の横柄な態度をどうにかしたいと考えてやった行動であった。結果的に三好長慶ははじめて余裕そうな顔をしかめたのだ。主導権を握った。

「どこまで知っている」

 長慶の声には怒気と焦りが交じっていた。そして、これ以上何か重要な情報を知っていようものなら、斬るぞ、と言わんとばかりな雰囲気であった。よもやここまで思い通りに行かないとは思わなかったらしい。しかし、未来で情報を知っている私にはそのことは筒抜けであった。彼にとっては曲者であろう。主導権を握ったところで話を転回する。

「本願寺も権力争いに巻き込まれたのでは堪ったものでありません。なので提案があります」

「いいぞ。良い許可する言ってみろ」

 私は勝利を確信し、思考回路の循環を加速させる。これは私達にとっての黒字となる。そして予め予想していたアレにも対処ができる。超順はほくそ笑む。


Twitter:@kento.syousetsu

先程「齟齬」という題名で更新しましたが、なんだかよく考えると面白くないため、一端削除しました。

申し訳ありませんが、もう少し更新をお待ちいただければと思います。


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