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旅立ち

アーガルは現在、仲間と共に森を歩いていた。

それは今回の異変調査をするためで、アーガルと他四人は一切警戒を緩めることはなかった。



「気を付けろよ…下級とはいえ熟練がやられたんだ」



アーガルのその言葉はどこか自分に言い聞かせるようだった。

だが、それを言われた四人も分かってるのか頷いて警戒を決して緩めない。


その時だった。


アーガル達の進行方向である奥の方から大きなものが歩く音が聞こえる。

そんな音が聞こえるのはフルプレートの鎧を着込んだ奴か魔物しかあり得ない。


故に誰一人として警戒を解かずにゆっくりと自分達の戦い易いように配置につく。


そして、五人が進もうとした瞬間だった。



「っっ!全員!伏せろ!」



一番前で前衛を行う手筈だったアーガルが一番最初に叫ぶ。

しかし、それは遅かった。



その瞬間には後衛の中でもただ一人の魔術師倒れた。

そして、その魔術師の胸には斧が深く刺さっており到底助かれるようなものではなかった。



「ガイス!」



アーガルは咄嗟に魔術師の名を叫ぶ。

しかし、近寄る余裕もなくアーガルは前衛として動くことになった。

振り下ろされる剣を盾でしっかりとアーガルはガードする。


そして、アーガルは抑えた盾を押し込むようにゆっくりと前に出る。

アーガルのユニークスキル『衝撃返しダメージリフレクト』が発動される。

その瞬間、衝撃は剣を振るった本人に返って来て、押し返すことにアーガルは成功する。


そして、落ち着いたアーガルは剣を振るった者をよく見る。



「オーク…キングだと…」



それは驚愕だった。

本能でアーガル危険だと判断した。

しかし、今の冒険者ではそれを倒すことができる人材は少ない。

故に逆に引くこともできない状態にもなった。



「アーガル、どうする?」



アーガルとはパーティ歴の長い弓使いが問う。

彼の名前はレーツという男でアーガルが実力も含めてかなり信頼に置いてる相手である。



「とりあえず、引きつけて逃げるか…誰か一人を逃すかしかないな」


「そうだな…なら、二人を逃がそう」



アーガルはレーツの意見に同意して再びオークキングに向かう。

あと少し遅ければアーガルは死んでいたようでオークキングはすでに剣を振りかぶっていた。


アーガルは時間を稼ぐことと出来れば倒したいという思いを乗せて剣をガードする。

そして、再び衝撃を返そうとした瞬間だった。



「え?」



自分の腕が無造作に上げられる。

切られた訳ではない。

盾が弾かれて衝撃を返すことに失敗したのだ。

そう、無防備にアーガルは弾かれた状態で呆然としていた。


オークキングはそれを見て好機と見たのかここぞとばかりに体当たりをしてくる。


アーガルの体は簡単に吹き飛ばされて血反吐を吐く。



「アーガル!」



レーツはそう叫んで咄嗟に弓を引く。

しかし、時すでに遅くレーツは愛弓と共に真っ二つになっていた。

レーツは一瞬、何が起きたのか理解できずに下半身と上半身がお別れを告げていた。



叫び声が聞こえる。



アーガルがそう考えるがそれは誰のか分かっていなかった。

他二人の声なのか…はたまた自分の声なのか判断すらつかない程に頭が真っ白になっていた。



「くそっ!来るな化け物!」


「アーガルさん!俺たちだけでも…」



一人が必死に短剣で応戦していた。

そして、もう一人がアーガルを背負って逃げようとしていた。

しかし、そんな中でもオークキングは静かに短剣で応戦していた男を殺してアーガル達に迫り来る。



「アーガルさん、ここを抜ければまだ巻けます…」



アーガルを背負った男はそう言って必死に前へ前へと進む。

そうして、数分ほど経つがオークキングが迫って来ている気配がなくなる。


アーガルはようやく精神を持ち直して状況を把握するためにもう一人の男と休憩をしていた。



「すまない、迷惑をかけた」


「いや、古い仲のレーツさん死んだんですから仕方ないですよ」



お互いに無言に一瞬なるがすぐにそれどころではないと思い直して話し始める。



「とりあえず、これはギルドに報告しなきゃいけねぇ」


「はい、なんとか巻けたようですから今からゆっくり慎重に進んでいきましょう」


「あぁ、仇を打てないのは悔しいが今はそうするしかない」



アーガル達はそう纏めると再び進み始める。

先程より余裕があり、しっかりとした足取りで進んでいく。


そうして、何時間もかけて進んでいく。



「アーガルさん!抜け道までもうじきです!そこに行けば…」


「どうした?」



先に進んでいた男が立ち止まる。

それを見て疑問に思ったアーガルは男に急いで追いつく。



その時、アーガル達の目には抜け道を見ることができなかった。

あまり使われる抜け道でもない。

それに自然にできたもので隠れて進む分にはいいが耐久面に難があった。


しかし、アーガル達の目にそれが映らなかったのはそんなことが理由ではなかった。



「嘘…だろ?」


「はは、自分達はもう既に生き残ることすらできなかったんですね…」


「いや、まだ…」



アーガルが慌てて絶望する男に引き返そうと言おうとしたがそれは意味なさなかった。



「なんだよ…何で…こんなことが…」



アーガルは涙を堪えられなかった。

そう、既に男の胸には剣が生えており…



死んでいたのだ。




そう、いつの間にか後ろにいたオークキングに刺されて…。



**



ようやく終わった。

何もかもが成功した。

俺の行ったことは限りなくクズに近い。


それでも、俺はそれをやらなくてはならなかった。


短期間で強くなるためもある。

そして…



「その顔が見たかったよ、アーガル君」



俺はそう言って顔を歪ませる。

その瞬間、頭が混乱したように意味が分からなそうに俺をアーガルは見ていた。


それも当然であろう。


オークキングが気が付けば『名無し』の少年になっていたのだから。



「お……なのか?」


「何を言ってるのか分からないな?」



アーガルの呟きに俺はわざとらしくそう言う。



「お前なのか!俺の仲間を…ギルドの冒険者を殺したのは!」



アーガルは激昂したように大声で叫ぶ。

そして、俺に向かって剣を振るって来る。


しかし、その剣は俺に届くことはなかった。



「まだ、立場を理解できていないようで」



そう、アーガルはオーク達に押さえ付けられて暴れられないようにされたのだ。



「そうそう、今君が言ったことだが…」



俺は思い出したようにそう前置きをしてしっかりとアーガルの顔を見据える。



「どうだっていいだろう?」



俺がそう言うとアーガルは再び暴れ出す。



「テメェ!ふざけんな!何がどうだっていいだ!テメェせいで一体どれだけの冒険者が死んだと思ってやがる!…」



喚き散らすアーガルを見て俺は思いっきり顔面を殴る。



「少し黙れ。お前は俺にそれを言うのか?

よりにもよってスラム狩りとか言って俺の仲間を殺してきたお前がそれを言うのか?」



次に顔面に蹴りを入れる。

そして、何発か殴った後に俺は落ち着きを取り戻して話し始める。



「どうだ?惨めか?辛いか?辞めて欲しいか?痛いか?苦しいか?」


「…こんな…程度…」


「そうか、嬉しいよ」



俺はそう言って次は股間を蹴る。

それは一度ではなく何度も。



「そうだよ!そうじゃなくちゃ!お前らは俺たちの仲間に何をした?確か火で炙っていたこともあったよな!他にも指を一本一本切り落とすんだっけ?仲間が味わった分、受けろよ!」



しかし、俺はそれを実行しようとは思わなかった。

もっと、別のもっと醜くこの男には死んでもらわなくては…。



「…ハァ…ハァ…気は済んだか?」


「いや、まだだよ。

最後に君には絶望してもらおっか?」



俺はそう言って剣を鞘から抜く。



**アーガル視点




「…ぅぅ」



俺が目を覚ますとそこは森の中だった。

記憶がない。

いや、正確にはあるのだが何か抜けてるような気がする。



「確か…名無しに!」



俺はそれを思い出すと強い憎しみが湧いて来る。

しかし、今の俺は生きている。

見逃したのか…それとも夢だったのか判断が付かない。

それでも、あの名無しを殺さなくては気が済まない。



「とりあえず、ギルドに報告しに行くか…ハハッ、俺を生かしたことが間違いだったな!名無し!」



俺はそう言って町へと向かう。



「おっさん、ちょっと通るぜ!」



門番にそれだけ言って俺は急いで冒険者ギルドへと向かう。



「待て!貴様!よくもぬけぬけと!」



後ろからそんな叫び声が聞こえた。

それはわずかに俺の中を不安にさせた。



「ギルド長!いい報告があるぜ!」



俺はそう言ってギルド長の部屋に入った瞬間のことだった。

俺は思いっきり殴られて吹き飛ばされる。



「…っつ、いきなりなんだよ!」



俺がそう叫んだ瞬間、俺は気がついた。

周りには何人もの冒険者が俺を囲んで武器を構えていた。



「一体…何が?」


「よくもまぁ、ぬけぬけとそんなことを言えたな!この大犯罪者が!」



ギルド長の剣幕に俺は混乱する。

犯罪者?一体、誰のことだ?



「とぼけたような表情をしおっても無駄だ!

貴様がオーク達を下手に突き回してこの町に送り込んだことはもう既にこの町の全員知っている!」


「待ってくれ!違うんだ!」


「今更、何も聞きたくない。

ちょうどよく衛兵が来たことだ…せいぜい、自分の行いを後悔するんだな」



俺はギルド長にそう言われて衛兵に捕まる。

スキルが強くてレベルの高くない俺のステータスでは衛兵に逆らうこともできずに連行されて行く。






そうして、気が付けば俺は牢屋に入れられていた。

何もない空虚な中で俺は考えていた。


何でこんなことになったんだ。



俺が何をしたって言うんだよ…俺はただ…



何で誰も俺を助けてくれないんだよ…


どうして、俺がこんな目に…俺は何もしてない…俺は何もやってない…なのに…何で…



「どうやら、俺からのプレゼントは喜んでもらえたようだね」



その瞬間、声が聞こえた。

俺はふと、牢屋の外を見ると一人の少年が佇んでいた。



「お前は…名無し…」


「そうだよ、犯罪者君」


「誰が犯罪者だ!お前だろ!お前のせいで俺が…」



その瞬間、俺は思わず声を止めた。

何故か酷くこの少年が怖くなったのだ。

何故だ…。



「あぁ、いいよ。この絶望感…ようやくこの表情を見れた。だから、もう要らないね…さようなら…アーガル君」



その瞬間、少年は俺に剣を突き刺した。

その際、俺は確かに聞いた。



『名狩り』



と。





**名無し



あれから数日が経ち、アーガルの処刑がつい先程執り行われたようで町ではその噂で持ちきりだった。

因みに公開処刑ではなかったようで噂では今日執り行われるとだけ聞いた。


そんな中、俺はギルドで依頼を受けていた。



「はい、今日の報酬です」



受付の人がそう言って笑顔で報酬を渡してくる。

俺はそれを受け取り、住処に戻る。


そこは俺とアディグラーダが確かに暮らしていたスラムの家。



そこで俺は一人で座り込む。



「くそっ!ムカつく!」



最近、俺はずっと苛立っていたことがあった。

それは…



自分が殺した人間のことだった。



実際、俺はある程度、スラム狩りを行ったことのある奴らを主に殺していた。

しかし、そこに無関係の者がいないと言えば嘘となる。

無関係の人間は俺が調べた限り半数はいた。



そう、俺は傲慢にも後悔してるのだ。

それを決意し、行ったのにもかかわらず後悔をだ…。

罪悪感までもが俺に襲いかかる。



「俺がそんなことを考えちゃいけないんだよ!」



俺は思いっきり地面を叩きつける。

決して自分は善人であってはいけない。

手段を選ばないで目的を達成させようとするクズだ。

そんな俺が罪悪感なんて持ってはいけない。


人の命を弄んだ自分はそんな資格なんてない。


それなのに…俺の罪悪感と後悔は消えることが無かった。



「くそっ、どうすればいいんだよ」



俺がそう呟いたその時だった。

一人の少女が俺の前に現れた。

その少女は俺がゴブリンを狩った時に助けた少女だった。



「あの!こ、この前はありがとうございました!こ、これはお、お礼の品物です…」



俺の目の前には簡単な甘いお菓子だった。

何がなんだかわからなくなるが辛うじて俺はそれを貰ってはいけないと思い口に出そうとする。

しかし、俺の声はわずかに出そうとして止まった。



「あ、あの、これは私の勝手で…か、勝手に押し付けてるようですが…あ、あの時は助けてくれてありがとうございました」



少女はそう言って逃げるように去っていく。

ただ、俺は呆然としていた。



「何だよ…何なんだよ…くそっ…」



何もかもが崩れ去るような感覚があった。



「俺は悪人になりきれないのかよ!」



俺は涙を流してお菓子を咀嚼する。

ダメだったのだ。



「あぁ、俺の方こそありがとう…だから、済まない」



そして、食べ終えて涙を拭う。

俺は前を向く。

俺の結論は決まった。



「それでも止まる訳にはいかない…だから、これ以上…ここに迷惑は掛けたくない」



俺はそう呟いて荷物を持ち歩き出す。

そうして、門のところに行くと門番の人に止められる。



「今日は依頼かなんかか?」


「いや、旅に出ようと思ってね…ちょっと遠くまで」



門番の質問に対して俺はそう答えて町を出て行くのだった。

これはタイトル詐欺だって?

いや、違うよ!

主人公がクズなだけだよ!(そんなクズな主人公書いた本人談)


しかしまぁ、どことなく打ち切り臭を漂わせてますがまだ続きますよ!


こんなおかしな作品ですが評価などをしてくださると嬉しいです!


p.s

主人公の能力について一切触れてないのは気にしないで…そのうち触れるから。

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