9/46
事故の後
僕は泳げないわけじゃなかった。なのに、なんて、ぶざまだったんだろう。いくじのない自分が恥ずかしかった。
マモルがいなかったら、僕は死んでいたかもしれない。そう考えると、またいっそうみじめに思えた。
マモルが悪かったんじゃないのに、助けてくれたマモルが何で謝るんだ。溺れたのを笑ってくれた方がどんなに気が楽か。
僕は自宅のドアを開けた。
ママさんが一緒に病院は行こうというのを、断って帰って来た。
本当はマモルに付き添って、病院に行きたかったけど、マモルの顔を見ているのがつらかったし、僕は怪我もしていないから。
マモルの怪我も大したことないって、他の人が言っていた。ママさんが付いていることだから、僕がいてもしょうがない。
船から落ちたのことは、ちょっとショックだったけど、この事で、もう、マモルの船に乗って漁の手伝いができなくなったことが残念だった。
姉さんはほら見ろって顔をして、あんたは勉強していたらいいのよ、って言うんだろうな。
僕はそれが悔しくてならなかった。
たった一日しか船に乗れなかった不運を恨んだ。




