漁 2日目 2
港まで歩いて5分。
昨日は薄っすらと空が明けかけていたけれど、今日は曇っているから、夜みたいに真っ暗だった。
「今日は雨になるな。風もあるようだし。ユズルどうする?」
マモルが言った。
「どうするって?」
意味がわからず僕はきいた。
「今日はやめにする?」
マモルが立ち止まって言った。
「僕がやめても、マモルは行くんだろ。だったら僕も行くに決まってるよ」
雨が降るからなんて理由でやめるわけにはいかない。そんなことしたら、また姉さんにばかにされる。やっぱりねって言われる。
だから、僕は意地でも船に乗らなきゃいけないんだ。
「メグミさん、心配しないかな?」
メグミさんっていうのは僕の姉さんだ。
マモルはいつも姉さんのことばかり気にしている。
マモルは姉さんのことが好きなんだ。姉さんはマモルより5つも年上なのに。
マモルにはもっと若くて、優しくてかわいいい子の方が似合う。マモルはもてるんだから、そんな子はマモルの回りにたくさんいるはずだ。
なのに、どうして姉さんなんだ。
マモルは姉さんと話しをする時、ぜんぜんマモルらしくなくなる。赤面したり、どもったりで、かっこ悪いったらない。いつもはかっこいいマモルなのに。姉さんを意識しすぎるせいだ。
だから、僕はマモルからメグミさんという名前を聞くたび、イライラする。
「マモルが気にすることはないよ」
僕はつっけんどんに言う。
「でも、心配かけるのはよくないさ」
「いいよ。姉さんは心配するのが好きなんだから」
「そんなわけないだろう」
マモルが笑う。
僕は余計に腹が立つ。
「姉さんだって自分の好き勝手にしてるよ。お酒飲みに行ったり、デートして朝帰りしたり」
「えっ」
マモルの顔色が変わった。
お酒飲みに行くのと、デートっていうのは本当だけど、朝帰りっていうのはうそだ。
「メグミさん、彼氏いるの?」
マモルが平静を装って言った。
「いるに決まっているよ。26にもなっていない方がおかしいんじゃないの?」
「そう、だよな。いない方がおかしいよな」
マモルは明らかにショックを受けている。
僕はマモルが落ち込んでいるのを見て、いい気味だと思っていた。




