漁 2日目 1
朝はやっぱり昨日と同じように、マモルに起こされた。
「俺の体はこの時間に起きるようにできてんの」
そう言ってマモルは笑った。
マモルは中学を卒業してから、漁師のおじさんと一緒に船に乗って仕事をしていた。
でも、その4年後、おじさんは急死してしまった。
それからマモルは、しばらくは人の船に乗って漁を手伝っていたけれど、19歳で独り立ちをした。
何人かの人たちに、まだ早いと言われていたみたいだけれど、その人たちを説き伏せたんだからすごい。
僕には到底できないことだ。
マモルは男らしくてかっこいい。
だから、僕はマモルに憧れているし、尊敬している。
そんなマモルが時々、死んだ兄さんとだぶって見える時がある。
きっと兄さんが生きていたら、マモルみたいに頼りになっただろうと思うから。
マモルと兄さんは同級生で幼馴染みだった。
2人は仲がよくてよくお互いの家を行ったり来たりしていた。僕もたまに仲間に入れてもらって遊んだ。
幼かった僕の記憶の中にも、兄さんの笑い顔や声が、今も残っている。けれど、それはアルバムの写真と同じで、兄さんはいつまでも12歳のままだった。
でも、マモルは僕と同じように年をとったし、背も伸びたし、日に焼けてたくましくなって大人になった。
きっと僕はマモルの中に兄さんを見ている。
『あの人は、あんたの兄さんじゃないのよ』
昨夜、姉さんが言ったことを思い出す。
姉さんが心配するのも無理もないのかもしれない。
だけど、なぜマモルのことを兄さんと思っちゃいけないのだろう。
僕は、マモルのベッドに腰かけて、ぼんやりとマモルが服を着替えるのを見ている。
「ん? 何?」
マモルが目をぱちくりしながらきく。
「べ、別に何でもない。あっ、布団、たたまなきゃ」
僕は慌てて布団を押し入れに押し込んだ。
振り向くとマモルが笑っている。僕は恥ずかしくなってうつむいた。




