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ユズルの夏  作者: カワラヒワ
39/46

酒 5

(あーあ、僕も死ぬのかなあ。父さんや母さんや兄さんみたいに)


 死んだらみんなに会えるのかな。

 父さんも、母さんも、兄さんもあのままの姿で年を取ってないのかな。

 そうしたら、兄さんなんて僕より年下だ。

 僕の事を兄さんて呼ばそうかな。ははは・・。


 話したいことがいっぱいある。

 マモルのことも、ママさんのことも。

 お酒ばっかり飲んでる姉さんのことも。


 でも、天国ってどんなところだろう。

 きれいなところなんだろうな。花なんかがいっぱい咲いていて、美しい川が流れていたりして。


 何の苦しみも悲しみもない、幸せな世界なんだ。

 僕は死んだ方がいいんだ。その方が楽なんだ。


 みんなに心配ばっかりかけて、姉さんにも嫌われて、僕なんて生きてたってろくなことないんだから。


 もう、この世に何の未練もないんだ。

 ・・・・。


 いや! 違う!

 僕は本当は死にたくなんてないんだ。

 嫌な事があっても生きていたい。

 死んで楽になりたいなんて、全然思わない。

 姉さんに嫌われても。


 姉さん・・・。

 姉さんだって、僕が死んだら悲しむんだ。

 姉さんは泣き虫だから僕が死んだら泣くだろう。

 だって、船の事故の時あんな風に泣いたんだから。

 あれが本当の姉さんなんだ。


 姉さんは僕が死んだらよかったなんて言ったけど、本心じゃないって僕にはわかっていた。

 だから、僕は姉さんを憎んだりしなかった。

 姉さんがいつも僕のことを考えていてくれてること、小さい時から知っていた。

 きっと、姉さんは今も変わらずそうなんだ。


 姉さん・・・。

 無言電話のことは僕が悪かったよ。謝りたいんだ。ごめんって。


 僕は赤一色になったタオルから手を放すと、ベッドにもたれて天上を見上げた。


 マモルに会いたい。


 僕を探しに遠くまで行って、まだ帰って来ないマモル。

 家出なんかして、勝手に酒なんか飲んで、勝手に怪我してまた迷惑かける。ごめん。

 僕がここで死んだりしたら、さらに大迷惑だよな。本当にごめん。


 かっこよくて、優しくていつも頼りになるマモル。

 マモルは僕の兄さん以上に兄さんだった。


 僕はマモルみたいになりたかった。強くてたくましい漁師に。


 ああ、マモル早く帰ってきて僕を見つけてくれればいいのに。


 生きたいと思うのに僕は消極的過ぎる。


 助けてと叫べば、ママさんはすぐ気付いて、助けにきてくれるのに。


 洗面所からママさんの鼻歌が聞こえる。

 すぐ近くにママさんがいる。


 だけど、僕は自分から助けを呼ぶのはいやだ。

 矛盾しているよな。何でこんな時に意地をはる?

 僕の悪い癖だってわかっている。


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