酒 4
「ええっ!」
足を見た僕は驚いた。
太ももに大きなガラスが突き刺さっている。
なんで?
僕はぽかんとして、ガラスが突き刺さった太ももを眺めた。
幸いなことに僕は酔っていたから、痛みに鈍感になっているようだった。
もっとも、酔っ払ったお陰で、太ももにガラスが刺さったわけだけど。
(すごいことになっているなあ)
まるで他人ごとのように僕は呑気に構えていた。
血がほとんど出ていないから、本当にガラスが刺さっているんだろうかと思うくらいだ。
(とにかくガラスを抜かなきゃ)
僕は思った。
ガラスを持って引っ張ってみた。
「うわあっ!」
鋭い痛みが太ももから体中に伝わって、僕は思わず悲鳴をあげた。
痛い!
僕は急に酔いが覚めた気がした。
(早く何とかしないと)
僕は焦った。
僕は目をつぶって、力を込めてガラス片を引き抜いた。
「うっ」
血が勢いよく流れ出す。履いているマモルの短パンが赤く染まる。
僕は慌てて、首に巻いていたタオルで傷口を押さえた。
タオルはみるみる赤く染まっていく。
随分深く切れているに違いなかった。
こんなに血が出たら、僕は死んでしまうかもしれない。
頭はぼんやりしているのに、痛さと怖さで僕は震えた。
助けてって叫ぼうか、ママさんに。
だけど今、ママさんを呼んだら、酒を飲んだことがばれてしまう。
それにママさんは今、シャワーを浴びているから・・・。
死ぬかもしれないっていう時に、つまらない理由で助けを呼ばないでいる僕は、本当にばかだと思う。
でも、僕はいま以上に悪者になりたくなかったし、ママさんを驚かせて、心配させたくなかった。
自分で何とかできるなら何とかして、切り抜けたかった。
僕は傷を押さえる両手に力を入れた。こうやって押さえていれば、血が止まるかもしれない。
そうだ。タオルをきつく縛ろう。そうすればきっと血は止まる。
しかし、どうきつく縛っても、ぱっくりと切れている傷口から流れ出る血は、止まりそうになかった。




