酒 3
酔っ払ったようだった。飲み過ぎたんだ。
胃がむかむかしてきて気持ちが悪い。
部屋の中がぐるぐる回って、目をつぶっても頭の中が回っている。
耳鳴りもしてきて、頭が痛い。
僕はマモルのベッドに腰かけて、じっとしていた。
僕の考える力はゼロに近かった。
だけど、こんなところをマモルに見られたらやばいな、そういうことだけは、ちゃんと頭が働く。
瓶をもとのところに戻して、布団に入ってしまえば、マモルは僕が酒を飲んだことに、多分気付かないだろう。
僕はそう考えて瓶を持って、立ち上がった。
ふらふらして足元がおぼつかない。
真っ直ぐに行きたいのに、右に左に足が勝手に向きを変える。
手を伸ばせば机に手が届くはずなのに、なぜか遠い。
僕は吐きそうになって、口元に手をやった。
そうしたら、ガシャーン! と大きな音がした。
僕が持っていた酒瓶が床に落ちて、割れた音だった。
フローリングの床は残っていた酒で、水浸しになり、割れたガラスも散らばっている。
「あーあ」
僕は言った。
大きな音がしたから、ママさんがびっくりしてここへ来るだろうと思った。
僕は怒られるのを覚悟して、しばらく待っていた。けれど、ママさんは来ない。
まだ、風呂に入っていてガラスが割れた音も聞こえなかったんだ。
(かたずけてしまおう)
僕は思った。ガラスの破片に手を伸ばす。
距離感がつかめない。ガラスが拾えない。
僕の体は変にゆれて、バランスを失い、前のめりに倒れ込んでしまった。
ははは、何をやっているんだ。僕は苦笑いをしながら体を起こした。
立ち上がるために足に力を入れようとしたけれど、全然力が入らない。
どうしたんだろう。




