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ユズルの夏  作者: カワラヒワ
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家出 1

 長い時間経った気がする。


 時計も何も持っていないから、実際どれだけの時間が過ぎたのかわからない。けれど、

僕の体は疲れきっていたので、相当な時間歩きまわったはずだ。


 体を動かしたせいか僕の気持ちは、だいぶ落ち着いてきた。

 随分遠くまで来たんだろうな。でも、たかが歩ける距離だ。などと、まともなことを考えられるようになっていた。


 疲労が気弱にさせるのか、このまま行くと帰れなくなるかもしれない。

 そんな情けないことまで考えている。

 僕は家に帰りたくなった。


 だけど、姉さんは、もう僕を許してくれないだろう。

 僕は姉さんに、憎まれて恨まれてしまった。

 姉さんにとって僕は厄介者。

 もう、あの家には帰れない。


 僕はどこへいけばいい?

 マモルの顔が浮かんだ。

 マモルは僕のしたことを知ったら、僕を軽蔑するだろうか?

 僕は卑劣な無言電話なんかしてことを、初めて後悔した。


 僕はやっと、立ち止まった。

 体中が汗まみれだった。

 急に喉が渇いてきた。


 どこかに公園でもないかな。

 僕はまたふらふらと歩き出した。


 体が痛くて目が覚めた。

 公園のベンチは寝るのには硬すぎる。

 さっきまでセミの声がうるさいと思っていたのに、今は一匹もセミの鳴き声も聞こえない。

 辺りは真っ暗になっている。ベンチを照らす明かりが眩しかった。


(う~ん)

 僕は両腕を伸ばして伸びをした。風がここちよかった。


 さて、これからどうしょうか。

 僕は慌てることも、急ぐこともなかった。

 姉さんは僕を待っていてくれないんだから。


 それでも僕は、自分の家の方向はどっちだろうかと考えている。ちゃんと帰れるだろうかと不安になっている。


 来た道も覚えていないし、ここがどこかもわからない。

 僕は立ち上がって、風の匂いを嗅いでみた。

(あっちだ)

 潮の匂いがしたような気がした。

 僕は自分の勘に従って歩いて行くことにした。


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