漁 3
その日の夕方、僕はへとへとになって帰って来た。
もう、何もしたくないと思うほど。
漁師の仕事があんなにきついものだったとは、知らなかった。
それに、初めての日だからそんなに手伝えることもあまりないだろうし、今日は、見学という感じかななんて、甘くみていた。
そうしたら、全然違った。
マモルがあんなに人使いが荒いなんて。海上では、いつもへらへらしているマモルと大違い。
あそこまで厳しく、こき使われるとは考えていなかった。
『お前のお陰で今日は大漁だ』マモルはそう言って笑ったけれど、僕は骨まで疲れたって感じ。
『また、明日も頼むな』って、マモルはどうしてあんなに元気なんだ。
僕は家に帰るなり、自分のベットに倒れ、ぐーぐー眠り込んだ。
どれくらい眠ったのか、目が覚めたら部屋は真っ暗で、体を起こすと所々痛かった。
「いててて、ああ、もう、なんだよ」
僕は独り言を言って立ち上がった。
下の部屋で食器のかちゃ、かちゃ鳴る音がして、味噌汁の匂いがしている。
姉さんが夕食の準備をしているんだ。
僕は、姉さんに体が痛いなんてことを、悟られないようにしなくちゃいけない。
キッチンは行くと、姉さんはキャベツを皿に盛りつけているところだった。
僕は背筋を伸ばして食卓に着く。
「よく寝てたわね。よっぽど疲れたんでしょう。仕事、きつかったの?」
姉さんが冷やかすように言うから、ぼくはムッとする。
「まだ、慣れていないだけだよ。誰だって初めはそうさ。でも、今日一日でだいたいのことはわかったし、明日からはもっと楽になるよ」
僕は少しむきになって言った。
僕がマモルの漁について行くのを、姉さんはあまりいいように思っていない。今回よく許してくれたなと思っているくらいだ。だから、弱音なんかはいたら、もう行くなといわれそうだ。
姉さんがご飯を茶碗についでくれる。
僕はいたたきますと言って、箸をとった。




