懐かしい 2
家に帰ると、どの部屋も真っ暗で、姉さんは出かけているようだった。
僕は女の子のことですっかり浮かれていて、いい気分で鼻歌混じりに玄関のドアを開けた。
廊下を通ってキッチンを覗く。
「ちぇっ。何もない。おにぎりもないの?」
テーブルの上に何も置かれてないので、僕はちょっとがっかりした。
(冷蔵庫は?)
冷蔵庫を開ける。
(何にもない。姉さんは買い物にも行ってないんだな)
僕は牛乳をらっぱ飲みして、漬物をぽりぽりとかじった。
いつもお菓子が置いてある棚を開ける。
空っぽだ。
まあいいか。その内姉さんが何か買って帰ってくるだろうから。
姉さんがいないうちにシャワーを浴びよう。
僕は急いで裸になった。
腕に擦り傷ができていた。蹴られた腹の辺りを見ると赤くなって腫れている。
(別にどおってことない)
僕はシャワーの蛇口をひねった。
温かいお湯が気持ちいい。
あの子の手も温かった。
僕はじぶんの手の平を見つめた。
今度のは夢じゃない。
(僕は確かにあの女の子と手をつないだんだ。本当に。かわいい子だったな)
僕はひとりでにやにやした。
明日の夕方、女の子と会う約束をした。
明日になれば、またあの子に会える。
僕はその事しか考えていなかった。




