タサキ 2
こんなところに連れてきて・・・。
僕はゾクリと寒気がした。
人通りのほとんどない路地裏だ。
タサキは急に僕を突き飛ばすと、何かわめきだした。
調子に乗りやがってとか、人がおとなしくしてりゃあ、とか時々聞こえたけど早口だったので何を言っているのかほとんどわからなかった。
僕がおずおずしていると、タサキは僕のTシャツの胸ぐらをつかんで、いきなり頬を平手で殴った。
僕が地べたに倒れ込むと、今度は背中を思い切り足で踏む。
僕はうっ、とうめき声を上げた。
「また、今度こんなことをしたら、ぶっ殺す!」
タサキが大声を張り上げた。
そして、僕のわき腹を蹴り上げた。
僕は腹を抱いてえびのように丸まる。
痛みで息もできないほどだ。目の中で星が飛んで、その後僕は、少しの間気絶していたようだった。
どれだけ時間がたったのか、もうタサキの声はしない。
薄目を開けると誰もいなかった。
僕はそのまま横になっていた。
口の中が切れたらしく、血の味がしている。
僕は抵抗もできない弱虫なんだ。
僕は悔しくて、自分に腹が立って、どうしょうもなくなって泣いた。声を立てないように腕で口をふさいで泣き続けた。
空には黒い雲が迫ってきていた。夕立がくるらしかった。
嵐になればいい。僕は思った。




