夢
僕は海に来ていた。
海は静かで空は晴れ渡って、入道雲が遠くに浮いている。太陽は真上にあるのに、ちっとも暑く感じない。
僕は膝まで水に浸かっていた。隣には女の子がいて、僕と同じように水に浸かっている。
あれっ、このやわらかな感触は? 僕はハッとして自分の手を見下ろした。
女の子と手をつないでいる。
女の子と手をつなぐなんて、小学校の一、二年の時以来なかった。
普通なら恥ずかしく思うはずなのに、全然そう思わない。変だとも思わないし、日常のことみたい平気だ。見ず知らずの子なのに。
女の子は、ふふっと笑って僕を見つめている。
誰だろう。どこかで会ったかな。
小さなえくぼが右の頬にある。長い真っ直ぐな髪は少し茶色で、風になびいて揺れている。
顔に見覚えはなかったけど、どこか懐かしい感じがした。
あっ、あの時の女の子!
いつかの夜に一人でいた白いワンピースの女の子だ。
あの時と同じ白いワンピースを着ている。
僕はなんだかほっとして、女の子に微笑みかけた。
僕たちは手をつないだままで歩き出す。
すごく幸せな気分だった。
そこで目が覚めた。
やっぱり・・・。
窓の外は薄明るくなっていて、僕はベッドの上だった。
そりゃあそうだろうなあ。あんな事、夢でなければ起こりそうにない。なあんだ。
でも、どうしてあんな夢を見たのだろう。
昨日はあんな悲しい気持ちで、眠ったはずなのに。
よくもこんないい夢が見られたものだ。僕は苦笑する。
かわいい子だったな。もっと夢を見ていたかったのに残念だ。
僕の手には、女の子の手の温かさがまだ残っているみたいだった。
僕は横になったまま、しばらくの間、自分の手を眺めていた。




