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第1話 月曜日:デートをしましょう①

 告白の回答に関してはこよみがひとまず引いてくれたことで助かったが、お試しで一週間付き合って答えを出すって言っても、俺はどうしたらいいんだろうな?

 何の自慢にもならないが、男女交際なんてしたことないぞ、俺。


「こよみちゃん、さっき言ってた1週間お試しってどんなことするの?」


 舞が小鳥のように小首を傾げてこよみに尋ねた。

 俺の男女交際に関する知識は舞と同じ水準だったのか……。これは拙いな。


「色々ありますけど、折角だから会えなかった何年か分デートしてほしいですし、私のご飯にも付き合って欲しいです」

「ふんふん。それでどうするの?」


 そして舞はなんでそれに興味津々なんだろうな。参考にする当てでもあるのかな。

 目の前で頷く舞に応えつつも、俺の方に向き直ってこよみが口を開いた。


「別に何もないですよ。ただ先輩には長いこと放っておかれたんでちょーっと長いこと先輩を独り占めにしたいです。……ね、先輩?」


 ……それは拉致監禁の上で拷問するとかそういう意味ですかね? いや、考えないようにしよう。

 ここまでの経緯を踏まえれば、ある程度は痛い目を見させられる覚悟はしている。それでも出来ればあっさり終わって欲しいものだが。


「とりあえず、授業始まるから行くぞ」

「「はーい!」」


 気付けばピロティを往く生徒たちの数もまばらになりつつあった。

 もうみんな教室に着いている頃だ。後数分の内に朝のホームルームが始まってしまうだろうに、こよみも舞ものんびりしたものだ。











「もういいから! 遅刻しても知らないぞ!」

「楓先輩は相変わらずからかいがいがありますね」

「知らん!」


 状況だけなら完全敗北だからそのまま全力で敗走する。もうこれ以上は乗ってやるものかと決意を固めてこよみの言葉を撥ねつける。


「楓って意外と不器用だったんだね。動画見た限りだともっとクレバーなピッチャーだと思ってた」

「逃げるのは苦手なんだよ」


 逃げた先に舞が回り込んでいたがそれも言葉少なに応えて後はシャットアウトし、制服の背中を掴んでくる2人分の重さを感じながらも全力で下駄箱まで敗走する。 

 何とも形容しがたい猫撫で声で2人揃って俺のことを呼んだりするがそれも無視する。こんないじめみたいな状況に付き合っていられるか。


「……すいません、本当に怒らせちゃいました?」


 次第に不安になったかのようにこよみが背中を引く力を弱め、俺を追い越し向き直った。俺を少し見下ろしてくる眼差しは真剣で、とてもふざけているようには見えない。


「そうですよね、先輩にだって言われたくないことくらい……」

「……別に後輩相手に昔話でムキになったりしねえよ」


 実は結構本気で嫌だったけど、それをここで言うのも流石に大人気ないか。まあ大人気というには俺まだ16歳だけどさ、それでもこよみに比べたら歳の分だけ大人だろう。4月生まれのこよみは俺と同い年だけど。


「ですよね、楓先輩はそんな小さいこと気にしませんよね!」


 表情が一変して思いっきり笑いながら俺の左肩を叩いてくるあたり、こいつ実は真剣な顔しながら心の中では舌出して俺の反応を見てやがったな! もう絶対信用しない!

 しかも、こいつ今さらっと俺が気にしてた過去の汚点を小さいこと扱いしやがったな。


「小さいとか言うな……」

「楓もボクみたいなこと言ってるね!」

「うるさい黙れ。黙ってくださいお願いします」


 実際のところ俯瞰してみればきっと俺の抱えている悩みや失敗の諸々なんて小さなものなんだろう。だがそれを抱えて悩み続ける俺では失敗や人の欠点も笑い話で流してしまうこよみのヒトとしての器のデカさに、きっと敵わないだろう。

 下駄箱で靴を上履きに替える。廊下の先に立っていたこよみがニッと笑って口を開いた。


「今日のお昼は一緒に食べましょうね。約束ですよ!」

「……ああ」

「約束ですよー!」

「ああ、分かってるから早く教室行け!」


 そこまで行ったところでこよみは下手くそなウィンクに投げキッスを俺にぶつけて1年生の教室に走っていった。なんだか朝から嵐の中でも走らされた気分だ。台風はもう先々週の日曜に通り過ぎたんだけどなあ。


「楓、朝から疲れてるね」


 舞がぼそりと呟いたが、お前も理由の一端だからな!?


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