理由不明の涙
ふと、涙が出た。理由は、分からなかった。
その人が不意にいった。
「そう言えば、ネットを見たけれど、あなたの友達の名前が載っていたわね。あなたの名前は、いくら探しても無かったけど」
私は突然のことに驚きながら、何とか、「う、うん」
と答えた。
あの人も付け足したようにいった。
「その子はね、個人でも優勝したし、団体でも男子より結果が良くて総合優勝もしたんだから」
今度は、私は何も言えなくなって黙っていた。
その沈黙に気づいたのか、あの人が急に話を変えた。
「そう言えば、あの件、どうなった?
あの、今年の分の話。結局、どうなったの?」
その人はその話に上手くつられたようで、私の雰囲気には全く気付かないまま、
「ああ、それはね…」と話し始めた。
私はほっとしながら、あの人のみえみえの態度に腹が立った。
そんな、下手くそなフォローをするくらいなら、最初から話に乗らなければ良かったのに。
そう思いながら、私の目からは涙が出た。
その涙を、その人達には知られたく無くて、下を向いていた。
花粉症で良かった。この時期なら、鼻を啜っても
わからない。
原因は分かっていた。
大会が散々だったからだ。
苦しい程結果は悪く、焦って、不安になって、同期に泣き散らした。
その同期は、眩しい位の結果を出した訳だけれど。
どうやっても、結果が出ない。
焦って焦って焦って焦って、不安になって、どうしようもなく苦しくて、吐き気がした。
けれど、試合に出ずに逃げる方が出来なかった。
出ない方が、報われない様な気がした。
例えどんな結果が出ても。出る前から、こんな惨めな結果が出ることは、分かりきっていたけれど。
涙の原因は分かっていたけれど、理由は分からなかった。
その人に言われたのが、悔しかったから?
嫌なことを思い出したから?
また同じことを繰り返すかもしれないと、不安になったから?
もしくは、それら全部だろうか。
私はすっとその場を離れた。
涙が自分の服にぽつりと落ちて、染みをつくった。




