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モラトリアム  作者: キョロ
7/7

《2ー1》

なんか始まりが前と一緒な感じになってしまった……

朝から続いた演技指導の授業が終わる。


「つかれたぁ」

口々に生徒たちはつぶやく。

恵一は教室の隅においた自分のカバンへタオルを取りに行く。


普段はクーラーが付いているのだが、発表中、空調がうるさくて声が聞こえない。と講師がクーラーを切ったのだ。


今日は午前中、各々で稽古したのち、午後から発表だった。

午後の一番日が照っている時間にクーラー無しとか拷問だろ……



「なぁ……ちょっといいか?」

渡部が汗を拭いているオレに話しかけてきた。

「ちょっと俺たちの芝居観てくれん?」

「え、なんで?」

「いや、先生すぐ帰っちゃったからダメ出し貰えてないんよね」

「うん」

疲れからか渡部が何を言ってるかオレは理解できないでいた。


「ダメ出ししてくれん?」


え?なに?どういうこと?


「観た感想でいいからさ、教えてくれん?」

「どうした渡部?」

「あーいや……恵一にさ、ダメ出しして貰おうと思って」

横から光輝が入ってくる。


「昨日さ、思ったんだけど…」

「うん」

「お前、見る目あるなって」

「どういうこと?」

昨日、アレからオレたちは渡部の愚痴を聞きて、来季のアニメの話で盛り上がって……

オレが昨日の事を思い出していると渡部が語気を強めて言った。

「セリフ合わせしたとき、的確にダメ出ししてたじゃん」


「あぁー」

「え?でもそれのどこが見る目あるに繋がるの?」

どうやら光輝もオレと同じでよくわかってない。


「ダメ出しなんて誰にでもできるさ、」

「あぁ、誰にでもできる。ただお前は精度が高いって、そう思ったんだ」


渡部は昨日のオレを引き合いに語り出した。

聞けばなるほどと納得しそうな気になってきた。

だが、そんな渡部の演説に横ヤリが入る。


「やめといた方がいいと思うけどね」

「ちぃ…」

汗を拭きながら梨絵と美咲がゆっくりとこちらに向かってきた。

「私たちは「恵一君」がどんな人がわかってるし、渡部君も大体はわかってるかもしれない。でもほかの4人はどうかな?」


まぁ確かに渡部以外の4人とあまり絡む事がないな…


「あぁ……確かに、こいつ容赦ないからなぁー」

光輝が梨絵の話に加わった。

「いや、真剣に考えてダメ出ししてくれてるんだろうな。ってのはわかるんだけど…」

「結構ストレートにズバズバ言っちゃうから」

「みさき、最初ちょっと泣いてたもんね」

「うぇ⁉︎な、泣いてないし」


「評価してくれるのは嬉しいけどさ…」

「ねぇ今のままじゃダメだって思ったの。だからお願い」

ビッグ4の1人、麻理恵がやってくる。


「……めんどくさいなぁ……」

「なぁ頼む。気になった所を指摘してくれるだけでいい」


どうしたもんかね……

ちらりとちぃを見る。そっぽを向かれた。

自分で決めなきゃな…んーめんどくさいなぁ……


「1回だけな。あとどーなっても責任はとらないぞ」

「あぁそれでいい」


渡部がほかのメンバーを呼びに行く。

「よかったのか?」

「めんどくさいでしょ」

「同じクラスっていっても、一応ライバルなんだよ」

ちぃが言うのももっともだ。

「媚び売っといて損はないだろ。あとから恨まれてもいやだし……」

「優しいのはいいけど、ちょっとは考えなよ」

「わかってるよ」


「思いっきり泣かしちゃったら?」

笑いを隠しながらみさきが脇をつつく。


「準備できたよー」

渡部が教室の奥から声をかける。

「よーし。こっちで合図を出すから、それきっかけで始めてください」


教室内の空気が張り詰めていく。


「よーい……ハイ!」

大きく手を叩き恵一は合図を出した。

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