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モラトリアム  作者: キョロ
6/7

《1ー4》

インターホンが鳴る。

涼子が来るには、ちょっと早い気がするな……


恵一はマンション正面玄関のモニター起動する。

「だれ?」

ちぃが眠たそうに瞼を擦りながら起き上がる。

「ワタさん」

「今日来るって言ってたっけ?」

「知らね」


渡部悠太郎。通称「ワタさん」

クラスメートだがグループが違うから、この部屋にいるメンパーほど、からみはしない。

別に仲が悪いわけじゃないし、ちょくちょく遊びにも来るから、俺たちの仲じゃ準レギュラーって感じ。


恵一はモニターの通話ボタンを押した。

「おーい。早く開けてー」

マンションの正面玄関はオートロックだ。

こちらで開錠のボタンを押さないと中には入れない。

「うちセールスはお断りなんですけど……」

「セールスじゃねーよ。はよ開けて」

見た目がセールスマンみたいなんだよなぁ…

入学した頃よりはラフにはなってきたが、シャツに黒ズボン。これが渡部ないつものコーディネートだった。


「今日は白シャツ着てたからセールスマンだと思ったよ」

「おい、こら。同い年!」

「あーはいはい。開けたから入ってこい」

「ったく……」


「ワタさんなんだろうね」

「さぁね。ゲームでもしに来たんじゃない?」


ドンドンドン!


玄関の扉を叩く音。

あ、鍵閉めたまんまだ。

「わりーわりー」


ガチャッ


「ったく、ラインしたろ……」

「え、マジ?」

オレはスマホをポケットから取り出し通知を見る。

10分前にワタから連絡が来てた。

「寝てたし!」


「もういいや…」

「ってか、なに?」

「いや、ただ遊びに来ただけ」

「んだよ!」

「感情の起伏が激しすぎる!」

丁寧にツッコミを入れる渡部。

こういうトコあるよなぁこいつ。


「一緒に来れば良かったやん」

「セリフ覚え悪い奴がウチにはいるから……」

「えー稽古してたのーマジメー」

「で、どう?いけそう?」


ワタさんは首を横に振って、うんざりした様子でベッドの縁に腰掛ける。

「ワタさんもついてないよねぇ、ビッグ4と一緒なんてさ」

さっきまで寝てた美咲がワタが腰掛けるのと同時に起き上がっていった。


「オレもそっちと同じグループが良かったわ」

ビッグ4とは、俺たちのクラスにいる手を焼いているクラスメートだ。色々問題は山積みなのだが、一番はセリフ覚えが悪いこと。

1週間の話じゃない、もう2ヶ月も前に台本を渡されているのに、全く覚えていないのだ。


「緊張してセリフがとんじゃうんだろう」

光輝がさりげなくフォローを入れるが、それを遮り渡部は言い放った。

「声優目指してて緊張でセリフがとぶ。ってバカだろ!」

「まぁまぁ……」

「愚痴なら聞いてやるから……」

恵一と光輝が渡部をなだめようと側に寄ろうとした時。


ピンポーン


「りょーちゃんじゃない?」

梨絵が嬉しそうに言う。

恵一は小走りで玄関のモニターに向かい。モニターを起動した。

「開けてー」

涼子がオートロックを指差しながら、モニター越しに言う。

「荷物あるから早く開けてー」

「うーい」


その様子を見て渡部が

「ここは、おまえらのグループの集会所か!」

と、ツッコむ。


その通りだ。

合鍵作って渡しておいた方が、楽なんじゃないかって最近は思う。


そんな俺を他所に梨絵がソワソワしだす。

「はぁー久々だなぁ……」

「お前、ホントりょーの事好きだな」

「だってー」


女子のあの仲がいい感じってなんなのかね?

オレは梨絵を見て思った。


ガチャッ


「おつかれー」

扉が開くと同時に梨絵が嬉しそうに出迎える。

片手に大きな袋を持った涼子が梨絵を小動物のように扱いながら部屋入ってくる。


「はい、これお土産」

「何コレ?」

「店長が持って行っていいって、朝の売れ残り」

「おぉー!」


涼子はパンの製造工場でバイトしてる。

バイトの内容は様々で、直営店の売り子やパン生地の製造や整形などが主だ。

涼子が差し出した袋の中にはパンがぎっしり詰められていた。

「店長太っ腹だなぁ!」

「今日の晩御飯はパンだね!」

カップルのテンションが上がる。


「今日バイト終わるの早かったね」

「うん。なんか暇だから帰っていいって」

「いいのかよ。時給もったいないんじゃない?」

「ちょっと今日はバイトの気分じゃなかったし」

ちょっとだけ涼子は照れくさそうにしていた。


「あ、そういえば台本」

涼子が辺りを見渡す。

「あぁ……ココにあるよ」

渡部がベッドの枕元を指差す。


「ちょっと、りょーちゃん。1人で泊まったの?」

「うん。終電なくなっちゃって……」

ちぃが涼子に質問してからオレを睨んだ。


おいおい……何もしねーよ……


「何してないよね」

ジロりとちぃが更に睨む。


「何もしねーよ」

「大丈夫だって、こいつチキンだから手なんて出せないよ」

「……光輝、フォローするなら、ちゃんとしてくれ……」


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