表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
羽ばたけ、小鳥たちよ  作者: 神崎美柚
日常が崩れたその日─表─
5/7

隣国の事情

 夕方に家に戻っても、待っているのは孤独だけである。俺には、両親がいない。記憶は朧気だが、5年前におそらく自殺したのだ。

 夕飯の時間まですることと言えば、貸本屋から借りてきた本を読むことだ。この村唯一の娯楽である読書。そしてそれは同時に、村人の学習の手段でもある。

 今読んでいるのは、隣国・オーガストニア王国の歴史小説。この村の山を越えた先にその国はあるが、山があまりにも険しい為、国に行く為には村は通れない。俺が生きている間に行けるかどうかすら怪しい。

 この歴史小説に書かれていることは全て事実だとされているが、あまりにも人外じみた人が多いので疑いたくなる。これは少し誇張して書いたものだろう、と俺は思う。


「今の国王はウェイリヒ4世なのか……」


 貸本屋からはついでに隣国についての本を幾つか借りた。そして、隣国についての知識は段々と豊富になっていく。

 この国と違うのは、王様が絶対的権力者であるということと、細かすぎる身分制度があるということだ。


「勉強になるけど、ルモーレは当たり前のように知っているんだろうなあ」


 となると、自慢する相手は限られてしまう。ドビーならば、生まれてからずっとこの村から出たことがないはずだ。

 夕食の席ではこれを自慢しよう──と思っていたら、ドアがノックされた。誰なのだろうか。


「あ、ジョナサン兄さん」

「先ほど領都から帰ってきて貸本屋に行ったが、隣国についての本、お前が借りてしまったと聞いたぞ」

「あ、もしかして読みたかった? 」

「まあな」


 ルモーレも、ドビーも、そして俺も一人っ子だった。そして幼い頃よく遊んでくれたのはジョナサン兄さんだった。そのときからついつい、お兄ちゃんみたいだと思っていた。

だからこそ、今でもジョナサン兄さんと呼んでしまうのだ。

 ジョナサン兄さんは中に入ってきて、ソファに座る。俺はお茶を出す。


「この村では歴史なんてそうそう興味持たないと思うんだが……ああ、そうか、ルモーレに感化されたんだな」

「まあそんなところかな。何不自由なく暮らせてるけれども、外に目を向けるのもいいなって」

「ほう。そうだ、隣国のこと、気になったか? 人外みたいな奴らばっかだろ」

「ああ。でも、あれって嘘なんだよな? いわゆる誇張した歴史物語──」

「いや、本当のことだ」


 その言葉に驚いた。あり得ない。あんな人たちがいたら、この国も保てないはずだ。


「まず、今の国王の祖父、ウェイリヒ1世が素手で敵を5000ほど倒したという話だが、これは事実だと聞いたことがある」

「えっ」

「隣国では武器に頼らない戦術というのが編み出されていてな、ウェイリヒはそれを知らない敵を欺いた」

「じゃあ、2世と3世の決闘は」

「それもだ。ちなみに二人はとても仲が悪い為、決闘という名の殺し合いが行われた。そして最終的には3世が兄である2世を殺してしまった。4世はそんな2世の息子で、父親の敵をわずか15歳でとったという恐ろしい話もある」

「だからころころと王様が……」

「そうだ。それと、3世には跡継ぎとなる息子も娘もいない。味方だった貴族等は王様に何を言われるか分からないから、もちろん離れた。メルッサ王国の事情はともかく、隣国の事情は恐ろしいものだな」


 そのようなことが日常茶飯事で行われているのも、また事実なのだろう。本当に、恐ろしいものだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ