ヘゼー家の二人
俺はルモーレと別れ、村の入り口の近くにある共同の畑に向かった。俺は畑を幼なじみのドビーと共に管理する立場にある為、楽ではない。ルモーレはよく、楽でいいよね、と言っているがこちらはかなり大変だ。
これまでに何人が逃げ、罰を受けたのかは分からないが、メンバーは毎年のように変わる。だからこそ、誰かが見ていないとダメなのだ。
「戻ったぞ、ドビー」
「ん」
ドビーは畑の側の小屋でうとうとしていた。こいつは、唯一名前のあるマリウスをとても信用しており、時折こうやってうとうとしているのだ。俺は軽く頭を叩き、起こす。
「いって! 」
「ほれ、休憩していいぞ」
「なら余計に起こすなよ……」
「昼ご飯、お前の母さんは一人だと食べれないだろ」
「……もう昼なのか」
「マリウスを過信しすぎだろ、本当」
「信用していないとかおかしいだろ、お前」
ドビーは吐き捨てるように言った。俺は不思議に思ったが、まあいいやと感じ、中央で買った昼ご飯を食べながら畑を見る。
マリウスは奴隷の中で唯一名前がある。彼は奴隷の中でリーダー的存在で、いつも明るい。畑作業を苦に思わないのか、せっせと働き、こちらに状況をよく伝えてくれる。
彼は高貴な出身だというのは分かる。言葉遣いや訛りが都会に近く、時折俺も混乱している。
「おや、あれは──」
村の入り口に現れたのは、ヘゼー家の奥様と娘。たった二人で、なぜ、使用人がいないのだろう。
「スピカ~、重すぎるわ~、持ってくれない? 」
「お母様、やっぱり使用人が必要ですわ。それか、誰かに手伝ってもらいましょう」
すると、休憩していたマリウスが、臆することなく二人の荷物を両手に持つ。もちろん、俺らはきょとんとなる。奥様も、スピカ様も。
「二人では大変ですから、ぜひ、手伝わせてください」
「あらあら、助かるわ」
「そうですわね」
マリウスは俺に何も言わず、屋敷のある丘に向かう。俺と奴隷達はそれを見守るしかなかった。
俺が昼ご飯を食べ終えたが、マリウスは一向に戻らない。夕時にまで戻らなかったら、シュモンさんに報告しよう。そして、厳罰を下してもらおう。
「いや~、さすがだよな、マリウス」
夕時に近づいてきてやってきたのは、ドビーだった。なんだ、と落胆した俺の肩をドビーはぽん、と叩いた。
「そろそろ交代するぞ」
「え、うん……」
マリウスが戻るまで見守りたかったが、仕方がない。俺は立ち上がり、家に帰ることにした。




