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白衣に銃弾  作者: 狗山黒
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 結局爆発に巻き込まれた俺達は入院を余儀なくされた。贔屓の闇医者トカゲも仲よく入院である。レオンカヴァルロ御用達の裏にもつながっている普通の病院で生活している。退屈だが、死ななかっただけましだ。

 双子はこっぴどく叱られた。いくらドミヌスとはいえ、ネガティウスとオプティムスの過剰摂取を交互にすれば体への負担が大きい。半分くらいは俺の責任でもあるが、俺へのお説教はなかった。双子からの恨めしい視線を感じたので、新たな武器の購入で手をうってもらった。

 仕事もできないし(喜ばしいことに)家事もしなくていいので、暇で仕方なかったからトカゲに話を聞くことにした。

 トカゲの一族は、代々研究員の家系らしく、トカゲもそれにのっとり研究員としてあそこで働いていた。ところが十九の夏、母親が父親の実験体になったことで嫌気が差し、逃げ出したそうだ。薬の入手ルートは秘密だが、ドミヌスへの薬の安価での提供は罪滅ぼしのようだ。

 アザレアはトカゲが産みだし、生き残った数少ない被験体だった。トカゲの母の冷凍卵子に聖の遺伝子を組み込み、どこかの馬の骨の精子と受精させた。だから、アザレアにはトカゲの面影があるのだ。発信機を埋め込んだのもトカゲだ。だからすぐに抜き取れたのだ。

 アザレアがヴィオラに恋してるのも知っていたらしい。さすが産みの親だ。

 ヴィオラは所長に似せて造られた人工知能で、試験管時代から幼少期までの被験体の世話をするように造られたそうだ。同時に機密事項の漏洩を防ぐためのセキュリティーでもあったから、自爆装置を備えていたのだ。

 トカゲはアザレアのヴィオラへの恋をやめさせたかった。所長がそれを利用し、アザレアをさらに改造するのが分かっていたからだ。自分の息子同然の奴が他人の手にかかるのが嫌らしい。それは自分で改造できるならいいってことか、と思ったが口をつぐんでおいた。

 所長がアザレアを探しているのを知って、研究所に潜りこんだそうだ。双子の誘拐がほぼ同時だったのはただの偶然で、同時期にアザレアが研究所に来ることも計算外だったらしい。あの挑発は俺達を逃がすための算段だったそうで、察しの悪さに申し訳なくなった。だが、まあ結果オーライだろう。

「所長、ラベンダ=ポムも生きのびてるはずだ。あれはそうそう死なない。研究所での実験はすべて、彼女のためだ。永遠の美、不死の肉体、全知全能。彼女がそれらを手に入れるための実験でしかない。あの人は恐ろしい人だ。俺達研究員は少なからず、実の家族でさえ犠牲にすることがあるが、あの人はそんなもんじゃない。腹を痛めた実の息子さえ、彼女にとってはモルモットでしかない。地上、特にこの辺りを実験道具の転がる庭くらいにしか思ってない。おそらくそれはこれからも続く。お前らもシフォン(ここ)に居続けるなら、警戒しろよ」

 トカゲはベッドに縛り付けられたまま、そう語った。

 一番回復が早かったアザレアは沈海さん宅で世話になることになった。聖の遺産としての能力を遺憾なく発揮できるし、何より不器用すぎて医者の助手としては使えないようだ。

 退院するころには、アザレアのヴィオラへの恋はすっかり冷めていた。

「ベッドの中でしばらく考えたんだ。俺のヴィオラへの想いは恋じゃない。母親を知らない俺が母性にすがってただけなんだ。トカゲと話してそう思った」

 トカゲと何を話したかは知らないが、彼の顔は晴れやかだったのでまあいいだろう。

 おかしな薬の投薬をやめたからか、アザレアには毛が生えてきた。杏色を基調としてるがアザレアピンク、かなりきついピンクの毛だった。目に痛い。

 双子のいい組手の相手になるのか、三人はよくつるんでいた。正直、ガキ共がじゃれついているような感覚だ。

 退院後、アザレアに会いに沈海さん宅へ行けば、ヴェロニカさんはいた。

「研究所を壊したのね」

 と言われたので肯定する。

 研究所を破壊したが、それは依頼でもなんでもないので金は入らないし、体を傷つけ、変に俺達の名前を広めるだけだった。なんて無駄だったのか。

「カルヴァドスの研究所……ラベンダ=ポム……」

 話をすると、ヴェロニカさんは心当たりでもあるのか、一人呟いた。沈海さんも訝しげな顔をしているし、レオンカヴァルロの組員も顔をしかめた。

 聞いても答えてくれないだろうから、その日もお優しい仕事をもらって帰った。

 未だ実家に居座るしかない俺達に、大佐も話を聞いてきたが、やはり顔をしかめた。一体なんだというのか。カルヴァドスは弱小マフィアではないが、言うほど有名ではない。それとも所長が有名だったのか。

 俺達がよくアザレアに会いに行くように、アザレアもよくうちに来た。母も大佐も彼のことをまったく気にせず、おそらく厄介の種になるだろう彼を受け入れていた。

年も実際に双子と変わらないらしく、顔こそ似てないが三つ子のようだった。

俺は四人兄弟の長男になったのだった。

 最近沼にはまりました、狗山です。

 爬虫類顔っていうより爬虫類が好きです。ピンク髪は女の子でこそ価値があると思いますが、ピンクの似合う男も好きです。

 今回もふざけました。またふざけたいです。

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