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わたしと運勢の管理人  作者: 椎名忍・四谷伊織
集う、同業者達
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接触

 今日も雨だ。テレビでは梅雨入りだとかなんとか言っていた気がする。確かに、窓から覗く空は重い雲に覆われていて晴れそうにない。


 あれから壬影に大きな動きはないようだ。"神狩り"の開幕宣言の後、僕達は弱った地の修復作業に力を貸した。

いつもより沢山歩いたし、長い時間力を使った。そのせいか、未だに身体の疲れはとれていない。

連日の雨もあり、自分のテリトリーの見回りすら、やる気が起きない。


 しかも、今日の水瓶座ぼくの運勢はビリから2番目だった。尚更、悪い予感がする。


 「ミキくん、おはよう!」


 占いのコーナーも終わり、ただ流れ続けるテレビを眺めていると、助手がこの応接室へ顔を出した。


 「今日の朝ごはんは……ぎゃあっ!!!」


 そしてキッチンへ続くのれんを潜るやいなや大声を出す衣羽。


 「うるさいんだけど」

 「なんじゃあ、朝からうるさいのう」


 朝早くからの騒音にクレームが相次ぐ。


 「あっ、あのっ!違くてっ!さ、さ、さるが…っ!!」

 「"さる"じゃと?何を寝惚けておるのじゃ?」


 …まさか。僕の中の嫌な予感が増す。


 「まっ、まことじゃ!猿じゃ!猿がおる!!」


 衣羽に続いてキッチンへと入った色葉の声でそこに居た何かが実在している事を理解する。


 そして、それと同時だった。僕のテリトリーに2つの気配が入ったことを感知した。

これで僕の悪い予感は、またしても当たってしまったわけだ。


 猿といい、事前連絡アポ無しの侵入といい、彼奴等やつらしかいない。


 「ああっ!パンがっ!」

 「待たぬか泥棒猿!我の朝飯じゃぞっ!!」


 キッチンで一暴れし、その猿は窓から出ていったようで二人が外に向かって叫ぶ声が聞こえる。


 ((猿…か。…"アイツ"だな))


 同じく気配を察知し、目を覚ましたツチが眠そうに話した。


 「………そうみたいだね」


 土地テリトリー全土で運が不足した場合、他の土地より分けてもらい改善させる方法がある。弟子メイの所を修復する際に、状況報告も兼ねてその協力要請をしたのだ。


 ((まあ、壬影の名前も出てる。いくらメイの名で伝えても師であるお前の所に誰かしらは来るだろう))


 僕だってそんなことは予想していた。


 「でも、まさか、一番最初に"さる"が来るとは思わなかったんだ」


 申の管理人(あのひと)は大の蛇嫌いだ。しかも"脳筋"。小難しい事を考える前に行動する人。もし、動いたとしたら真っ先にメイの所に行くだろう。と、予測していたつもりだった。


 ((…誰かに入れ知恵されたな))


 「まあ、大方予想はつくよ。ここに"双子"を派遣したあたり、"とり"だろうね…」


 ((…ま、頑張るんだな。相棒))


 そう言ってツチは実体を現すと、騒ぎのあるキッチンへと入って行った。


 いつまでも重い気分ではいられない。壬影あいつが動き出した以上、自分一人ではどうにも出来ないし、避けては通れぬ道だ。同業者達全員が苦手な訳ではないが…。


 「…それでも、最初の接触が双子あいつらなのは…気が重いな」


 そう吐き出して、僕はいつものパーカーに袖を通した。




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