白い少年1
朝陽だけが差し、あまり明るくは無い部屋に白い少年は居た。その白い肌と白い髪に陽が当たり、彼の身体に光が吸い込まれているようにも見える。
そんな姿とはまるで正反対の真っ黒なソファに深く腰を掛けた少年。一見、幻想的な光景なのだが。
今まで眠そうにしていた少年はおもむろにテレビを付けた。チープな音楽が幻想を掻き混ぜる。
「それでは、今日の占いのコーナーです!!」
それは、朝の情報番組を締める占いのコーナーのスタートだった。これまで眠そうだった少年の眼の色も変わり、食い入る様に見つめている。
「本日一番の運勢は、水瓶座のアナタ!今年一番の良い日となるでしょう!」
「む、まじか…」
「何事も早めに行動に移すとさらに良い結果へとつながるでしょう!ただし……」
「こりゃ大変だ。早くお仕事してくるか」
食い気味に反応した少年は、眠気も吹き飛んだ顔で立ち上がる。ほんの少し早足でその部屋の奥にある寝室への扉を開け、準備をし始めた。
だが彼は大事な所を聞き逃していた。アナウンサーの軽快な声で水瓶座の運勢の続きを読み上げる。
「ただし、おかっぱに赤いピアスをした人物に要注意!面倒事を運んできてしまうでしょう!」
少年が準備を終え、部屋に戻るまでほんの1、2分だったが占いのコーナーはもちろん終わっていた。
黒いソファに同化するようにかかっていた、彼には大きすぎるサイズのパーカーを羽織る。
次の番組の開始の音楽が流れ始めていたが、躊躇なく消すと軽い足取りで少年は玄関へ向かう。
外は最高の一日のスタートに相応しい真っ青な空が、そびえ立つビルの間から覗いていた。