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序章
エリ=ハド大陸には、女王と呼ばれる者が存在していた。
大陸全土を統治し、あまねくその名は轟いていた。
神の力を授かった女王は、八人の騎士によって守られ、宮殿の奥でただ静かに民のために祈りを捧げていた。
しかし、第五十八代女王――雪幻の女王が在位三年で崩御されたことで、情勢は変わってしまった。
神力によって自然の脅威から大陸を守ってきた雪幻の女王は、次の女王を定めることなく逝去されたために、女王を失った大陸は荒れたのだ。
地は揺れ、風は渦を巻いて人々に襲いかかり、大雨は洪水となってすべてを奪っていった。
人々は次なる女王の誕生を願い、恋いこがれたが、十数年の月日が流れた現在も女王の座は空席だった――。