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【落とし物について】

 いつもの場所で、いつもの時間に、いつもの夕暮れに背を向けて、いつものように君が現れる。

 その日、いつものように君に笑顔を見せたら、急に涙が止まらなかった事について。

 青春にしては、重たく、強く、儚い思い出。

 

 時は戻る…

 今から2年前の高校一年の夏、僕は恋をした。


 ドラマやマンガのようなときめく出会いではなかったけど、ただ君の事を知ってしまった為に、蒸し暑い夏の太陽が僕の胸まで暑くした。


 僕の名前は晴風(はれかぜ) 正也(まさや)

 これと言って、主張できる事はないが、強いて言えば、趣味は読書、以上。

 この日も学校が終わり、借りていた歴史小説の本を図書館へ返そうと、教室を後にし、青春に胸を踊らせている同級生の間をすり抜けながら、次に借りる本への期待に胸を踊らせていた。


 

 急な登場で申し訳ないが、私の名前は咲山(さきやま) 美穂(みほ)、高校一年生。

 まわりから見たらメガネをかけて地味で暗い子なんて、良く言われている。

 だがあんまり気にしていないわ。

 だってメガネを取ったらそれなりの部類に入る、美貌だと思っていますから。

 ただ、むやみやたらに話すのが嫌いってのは事実。

 暗いって言われても仕方がないわね。

 趣味はなし。

 好きなことわざは、飛んで火に入る夏の虫。

 この日も学校が終わり、訳あって近くの図書館まで行く事になった。

 教室にため息を置き去りにして、私の隠れた美貌に気付かれないように、鈍感な同級生の間をすり抜け、後ろから私を呼び止める王子様のようなメンズ、というありえないであろう恋のスタートに胸を踊らせていた。


 俺は下駄箱に靴を入れ、校門へと向かう。

 私は下駄箱にラブレターという願望を、靴と一緒に放り込み、校門へと向かった。


 「蒸し暑いなぁ、脱水症状になりそうだ。」

 俺はそう言って、バックをあさり、昼に買った、ペットボトルのお茶を飲み干した。


 

 「なんか素敵な出会いでも転がってないかなぁ。」

 私はそう言って、教室に置き去りにした、ため息のストックをまた一つ消費した。

 「あれ、なんか落ちてる。財布?」

 こ、これは運命の忘れ物?その時、制御するのが困難な笑みを浮かべ、10種類近くの妄想、じゃなくて願望が私の頭の中に渦巻いた。

 私はとりあえず図書館に用事を足し、交番に届ける事にした。

  

 

 俺はお茶を飲み干して、あと10分近くで図書館に着こうというところで20メートル近く離れている背後に、不審な女性をとらえた。

 「なんか笑ってるよ…」

 その女性は多分僕の高校の制服を着た、メガネをかけて、地味そうな女の子。

 自分でも制御しきれてない薄ら笑いを浮かべていた。

 なんというか、暑さに火照っていた体が凍りついて震えた。

 「ヤバイ、多分今目があった…」


 

 私は流行る気持ちを押さえ、ただ、恐怖した。

 何故なら、20メートル近く前方で、私を見つめ小刻みに震えてる男がいるのだから。

 しかも同じ高校の制服、まっまさかストーカー?

 前方からのストーカースタイルは聞いたことがないわ。

 とうとう私の美貌に気付いてしまったのね。

 でも残念ねストーカーさん、今の私は止まらないわ、だってこの財布という出会いの鍵を握ってしまったから。

 私は、もはや制御不可能になった笑みと恐怖を混合した表情を浮かべ、一歩足を踏み込んだ。「えっ!?逃げた!」



 僕は走った。

 そして逃げた。全力で。

 焦った。あれはヤバイ顔をしていた。

 後ろを振り返らず全力疾走で駆け抜けた。

 そして、自分はこんなに走れたんだと、もしこれが100メートルのタイムアタックなら自己最高記録をゆうに越えていたと気付いた。

 僕はそのままノンストップで図書館までたどり着いた。

 どうやら追ってきてはいないようだ。

 図書館に入り、生徒手帳に挟んでいた図書カードを取り出してある事に気付いた。

 「財布が…ない。」

 

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