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魔王が復活しそうなので慣例に従って勇者を召喚したらチートすぎた上に個性が強かった  作者:


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紫依の場合

 簡素ながらも、しっかりとした作りのテーブルと椅子が並んだ部屋で黒髪の少女は空になった皿を前に合掌して一礼していた。


「ごちそうさまでした。で、先ほどのお話をまとめると、周期的に復活する魔王に対して、この世界では異世界から魔力の高い人間を勇者として召喚しているのですね?そして、この国の魔力の高い人と一緒に、召喚された土地の石碑と、魔王が封印されている城を封印して平和を維持している、ということでよろしいでしょうか?」


「はい、その通りです」


 神官長が笑顔で頷くが、少女は少し首を傾げた。


「それでは私と一緒にこの地の石碑を封印する方がおられるのですよね?どなたですか?」


 神官長が隣に座っているオレールを紹介した。


「それは、こちらのオレール殿になります。オレール殿の魔力は高く、魔法騎士団に在籍されております。魔法もさることながら剣技もこの国では指折りの強者です」


 その説明に少女がにこやかに微笑む。


「それは素晴らしいですね」


 天使のように無垢で美しい微笑みを見ても、オレールは表情を変えることなく悠然と立ち上がった。そして、そのまま椅子に座っている少女の横まで歩いてくると片膝をついて頭を下げた。


「オレール・ベルトランと申します。不詳ながら私が封印をご一緒させていただきたく存じます」


 いかにも騎士らしい堅物な行動に少女が困ったように椅子から立ち上がる。


「顔を上げて下さい、オレールさん。こちらこそご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします」


 神官長が感動したように声を震わせながら言った。


「さすが勇者様。なんと、お優しいお言葉」


 少女はオレールを立ち上がらせると神官長に視線を向けた。


「勇者様はやめて下さい。私の名前は紫依(しい)と申します」


「では、紫依様」


 神官長の言葉を紫依が止める。


「様もやめて下さい」


「いえ、そういうわけにはいきません。この世界では勇者様は神に等しい存在。無礼のないようにしなければなりません」


 これだけは譲りそうにない神官長の雰囲気に紫依は諦めたように頷いた。自分の意見を貫いた神官長は満足そうに話の続きを始めた。


「今日はお疲れでしょうから、お休みになって下さい。明日、この地の封印をおこないまして、明後日、バルダの街へ向けて出発をされたらよいでしょう」


 神官長の提案を紫依がバッサリと切る。


「いえ、今からこの地の封印をしましょう。石碑はどちらですか?」


「ですが……」


 止めようとする神官長に紫依は人形のように愛らしい笑顔を向けた。


「魔王の復活にこの世界の人たちは不安を感じているんですよね?私が封印をすることで、その不安が軽くなるというのでしたら、すぐにしたほうがいいと思います。私なら大丈夫ですから」


 言葉の内容に神官長が歓喜のあまり両手を震わせながら胸の前で手を組んだ。


「やはり勇者様は文献通りの方だった」


 今にも紫依を拝みだしそうな神官長を置いてオレールが声をかける。


「紫依様。突然、異世界に召喚されたことに対して戸惑いや疑問はないのですか?少し時間を置いて現状を考えられた方がよろしいかと思いますが」


 淡々と諭すように話すオレールに紫依が当然のように説明をする。


「私が出来ることなど限られています。そんな私の力が必要であるというのであれば、私はそれに応えたいのです。それは私がいた世界であろうと、異世界であろうと同じことです」


「なんと、ご立派な信念……」


 神官長が目に薄っすらと涙が浮かべたまま感慨にひたっている。


 一方のオレールは軽く頭を下げて事務的に述べた。


「そこまでお考えでしたとは失礼致しました。では、こちらへどうぞ。封印の方法は行きながら説明いたします」


 二人は神官長を置いて部屋から出て行った。



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