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魔王が復活しそうなので慣例に従って勇者を召喚したらチートすぎた上に個性が強かった  作者:


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時空間管理人が現れた場合

 広間の中心には黒い球体が浮かんでいた。

 その前に二つの人影があるが、天井から降り注ぐ光で逆行となっており、人影の顔は見えない。


 二つの人影に気が付いたオレールとフェリクスが一行の前に素早く出てきて身構えた。


「下がって下さい」


「魔物の可能性があります。ここは私たちが……」


 フェリクスの話を無視した蘭雪が二人の間を抜けて歩いていく。


「蘭雪様!?お待ち下さい!」


 フェリクスが慌てて止めようとするのをオーブが止める。


「知り合いだから」


「は?」


 フェリクスの間抜けな声を聞きながら蘭雪は二つの人影に声をかけた。


「久しぶりね、セレナ、暗夜」


 蘭雪に声をかけられた二人は足首まで隠れる長いマントを羽織っていた。


 セレナと呼ばれた十代後半ぐらいの少女が無邪気な笑顔で手を振ってくる。

 その容姿はまさしく太陽の恵を受けた花の化身と言わんばかりの輝きと愛らしさに溢れていた。

 腰まで伸びている柔らかな金髪に澄み切った空のような青い瞳。そして、この美形揃いの一行に混じっても見劣りしない顔立ち。


 一方の暗夜と呼ばれた二十代前半ぐらいの青年は落ち着いた雰囲気を持ち、黒髪、黒瞳と相まって夜深けの闇のようだ。

 鋭く隙がないため、無邪気で明るい少女と比べると対極であるが、例にもれず顔は美形だ。


 二人の容姿を見てカミーユは思わず呟いていた。


「類は友を呼ぶ、ですか?」


 羨望を通り越し半ば呆れているカミーユを無視して、セレナが蘭雪に話しかける。


「久しぶり。元気だった?」


「元気よ。セレナは相変わらず可愛いわね。あなたたちが来るとは思わなかったわ」


 蘭雪の言葉に暗夜が答える。


「白雅がどうせなら顔見知りが行ったほうがいいだろう、と私たちに指令を出したのです」


「で、本音は?」


 オーブの質問に暗夜は表情を変えずに淡々と言った。


「セレナで蘭雪さんのご機嫌をとって、さっさと終わらせてこい、です」


 言葉の内容に普通なら文句を言う場面であろう蘭雪が笑った。


「よくわかっているじゃない。ごつい男や、むさいおっさんより見目麗しい女の子のほうがいいもの」


 和やかに話をしている四人にカミーユが声をかけた。


「盛り上がっているところ悪いのですが、そこのお二人は何者ですか?」


 カミーユの質問にオーブは答えることなく黙って二人を見た。


 自分で自己紹介しろというオーブの視線に暗夜がため息を吐きながら言った。


「私たちは時空間管理人です。異時間や異世界に迷い込んだ人やモノを元の世界に戻すなど、時空間の管理をしています。このたびは蘭雪さんより強制的に異世界に召喚されたという連絡をいただきまして、現状をこちらで調査していたところ、この異世界と繋がる穴の存在を確認しました」


 そう言って暗夜が黒い球体を示す。


「私たちはこの穴を封じるために派遣されたのですが、思ったより厄介な代物でして。本来、私たちの存在を知られてはならないのですが、あなた方の協力が必要なため、ここでお待ちしておりました」


 突然の説明にこの世界の住人である四人の思考が停止する。


 一行の後方にいた朱羅が暗夜に訊ねた。


「この世界で魔物と呼ばれているのは、その穴を通って出てきた異世界の生物ということか?」


「だと思われます。向こうの世界にも時空間管理人を置いて、こちらに余計なものが来られないようにしましたので、今回はあまりこちらの世界には現れていないと思います」


 その説明に比較的早く立ち直ったカミーユが頷いた。


「それで今回は魔物の目撃例と被害が少なかったのですね」


 納得しているカミーユにフェリクスがかみつく。


「なに悟ったように言っている?魔王は?私たちが封印するべき魔王はどこにいるのだ?」


 セレナがニッコリと微笑んで黒い球体を指差しながら言った。


「魔王って、これのことだと思うよ。で、お願いがあるんだけど、その封印っていうのをしてもらえないかな?このままだと不安定で穴が塞げないの。封印をしてもらえたら穴が安定して私たちでも塞ぐことが出来るから」


 小首を傾げて上目使いでお願いをしてくるセレナにフェリクスの顔が赤くなる。


 その光景にカミーユが目を丸くした。


「あのフェリクスが女性に押されるとは……」


「当然よ。セレナの可愛らしさにフェリクスが勝てるわけないわ」


 蘭雪の言葉が耳に入ったフェリクスが慌てて手を振る。


「け、決して見惚れていたわけではありませんから。ふ、封印ですね。わかりました。早急にしましょう」


 たどたどしく動き出したフェリクスにセレナが最上の笑顔を向ける。


「ありがとう」


 思わずその笑顔を見てしまったフェリクスの動きがまたしても停止する。


 オーブが苦笑いをしながら言った。


「あれが計算でなく無意識だっていうんだから質が悪いよな」


「すみません」


 素直に頭を下げる暗夜の肩をオーブが叩く。


「ま、頑張れ。オレたちに迷惑がかからない程度にな」


「そのようにしま……」


 そこまで言いかけて暗夜はセレナからの無言の視線に気がついた。セレナから先ほどまでの無邪気な笑顔が消えている。


 その意味を悟った暗夜は真剣な表情のまま早口で言った。


「すみません。姿を消します」


 暗夜が言い終わると同時に二人がマントを被る。すると二人の姿が綺麗に消えた。



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