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魔王が復活しそうなので慣例に従って勇者を召喚したらチートすぎた上に個性が強かった  作者:


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リュネットの場合(後編)

 朱羅が人形のような少女を連れ去るという突然の展開にリュネットが呆然としていると、遠くから大声で名前を呼ばれた。


「リュネット様!」


 大声の元はウマに乗った団長であり、その後ろには大勢の騎士が走ってくる姿がある。


 その光景を見て女神のような女性が面倒くさそうにカミーユに言った。


「私たちも疲れたから休むってことにしといて。ついでに面会謝絶でよろしく」


「では、裏から城に入りましょう。オレール、フェリクス、あとは任せます」


「待て!報告は……」


 叫ぶオレールを無視してカミーユは女神のような女性と美少女を連れてさっさと姿を消した。


「リュネット様、お怪我はございませんか?」


 駆けつけてきた団長にリュネットは意識を戻して微笑みながら答えた。


「大丈夫です」


 団長は安堵の息を吐いて飛空艇にいるオレールを見た。


「何があった?勇者様方は無事か?」


 オレールは団長に敬礼をして報告した。


「魔物に襲われた経緯については直接王にご報告いたします。勇者様方はお休みになるため、カミーユとともに先に城に向かいました」


「わかった。任務ご苦労。他の者は片付けと飛空艇の移動準備をしろ」


 団長の指示で後ろに控えていた騎士たちが動き出す。


 その様子を見ながら団長はオレールに意地の悪い笑みを見せた。その表情にオレールが敬礼の手を下げて露骨に表情を崩す。


「なんですか?」


「いや、うちの連中がことごとく王都の勇者様にやられちまってよ。おまえなら良い試合が出来そうだからな」


「王への報告と休む時間ぐらいは下さいよ」


「わかっているって。だが、おまえまで負けたら我が隊の面目丸つぶれだからな。負けたときは、わかっているだろうな?」


 団長からの軽い脅しにオレールがため息を吐く。


「私を過信しないで下さい。王都の勇者様とは機会がありましたら手合わせ願いますよ」


 オレールの返答に団長が満足そうに頷く。


「そうしてくれ。おまえは我が国始まって以来の天才魔法騎士だ。とくに、その魔力は飛び抜けているからな」


 そう言って団長はどこか呆然としているリュネットに声をかけた。


「リュネット様も王族の中では有史以来の魔力の持ち主ですから。皇女でなければ女騎士団に推薦したいほどです」


「ありがとうございます」


 団長の言葉に素直に礼を述べるが心ここにあらずといった様子のリュネットにフェリクスが飛空艇から降りて声をかけた。


「リュネット様、何かお気になることがございますか?」


「朱羅様……いえ、王都の勇者様が連れて行かれた方は……」


 リュネットの言いたいことを理解したフェリクスは優しく微笑みながら説明した。


「王都の勇者様が連れて行かれたのはノゼの街の勇者様です。今回の勇者様は四人とも同じ世界から召喚されたお知り合いだそうです」


「まあ、そうだったのですか」


 素直に驚くリュネットにフェリクスが懐から小さな花を出した。


「リュネット様の笑顔にはどんな花も霞んでしまいますが、よろしければ受け取って下さい。バルダの海岸沿いでしか咲かないという珍しい花です」


 リュネットは小さな紫の花を受け取って微笑んだ。


「ありがとうございます」


 リュネットに笑顔が戻ったところでオレールがフェリクスの頭を叩いた。


「何をする!」


「王へ報告に行くぞ」


 フェリクスは痛む頭を押さえながらもリュネットには紳士の笑顔を向けて別れの挨拶をした。


「次にお会いするときは、お茶を飲みながらゆっくりお話をしましょう。では、また」


 二人の後ろ姿を見送るリュネットに団長が声をかける。


「リュネット様も城にお戻りください。失礼ながら、安全のために私がご一緒させていただきますが、よろしいですか?」


「はい。お願いします」


 いつもの微笑みを見せるリュネットに団長も笑顔で歩き出した。



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