火山といえば…
はっきり言って、だいぶ快適生活に近づきました。
丘の大木の近くに背の高い草を集めたベッドを作りました。
それだけじゃいつか降るかもしれない雨が心配だったから、森の奥深くで発見した巨大な葉っぱを摘んできて壁と屋根の代わりにしました。
後は木の枝とか蔦とかで補強して完成♪
とりあえず休憩スペースの確保ができたので、ここを拠点にいろいろ探りに行こうと思ってます。
自分凄い。自分を誉めるの。だって誰もいないから・・・。
あー、またヘコミ状態になるとこだった。
さて探検しよー、クロさん。
昨日の夜もクロさんはお帰りになって、昼になって帰ってきました。
家族が居るなら一緒に連れて行ってくれても良いじゃない。言ってもダメだったけどね。
それにしても、ホントに何にも居ないの。
ちょっと拍子抜け。
「クロさん、他の動物ってこの辺居るの?」
問いかけてもお返事は相変わらずありません。
クロさんも癒しだけど、他にも居たって良いと思うの。
怖いのは遠慮します。ホラーとかダメなんで。
「お、湖だー。これってあの丘から見えた湖かな。やっぱ黄色っぽい」
手を入れれば温泉並にあったかかった。
あ、火山もあるしね、湖じゃなくて温泉なんだ。
そうとわかったら無性に入りたくなってきて、匂いが気になってきた。
こちらにきてから当然お風呂にはいってないんだもの、温泉なんて見つけたら入りたくなるのはしょうがないよね。
ぽんぽん服を脱いでいく私をクロさんは止めもせず見ているらしい。
誰もいないと思うから、行動がだんだん大胆になっていく。
素足の先を水面に浸けるだけでどきどきした。
「クロさん?」
いきなり慌てたように忙しなく動き始めたクロさんを不思議に思いつつも足を入れれば、あっという間に胸までお湯に津かった。相変わらずクロさんは何でかわたわたしてる。
じんわりと染み渡るように体の力が抜ける。
頭も洗ってしまおうと、勢いよく潜れば、するどい歯が目前にあった。
と確認したと同時に後ろにすごい力で引っ張られた。
「ん、ぎゃいやあ!!!!!」
宙を飛ぶ私を追って鋭い歯を持った何かがジャンプした。脚の先数センチ先にある脅威に体が固まる。
シャー!!
私を庇うように立ちはだかった大きな黒い壁にジャンプしてきた生物が跳ね返った。
バッシャーン・・・
「なななな、なに!?クロさん!クロさーん!!」
目前の壁に張り付く。
壁はゆっくりと小さくなって、私の腕におさまった。
「クロさん、あああああれ」
ザパザパと浅瀬で身動きが取れない巨大生物。
私くらいなら楽勝で丸呑みできそうな大きな口
「ひいいいいい!!」
服と、クロさんを引っ掴んで逃走。
マッパ?
そんなの命のほうが大切よ!!
誰もいないんだからいいじゃない!
「はあ、はあ」
荒い息を落ち着かせて、抱えていたクロさんを落っことす。
ぽよんと可愛く跳ねたけど、気にしない。そんなことより怖かった。
「ひどいよ、クロさん。危ないなら言ってよー」
クロさんはじっとこっちを見ていた。
「…ごめん、助けてくれて、ありがとう」
今度から絶対クロさんに確認してから行動する、絶対!
私の反省が伝わったのか、クロさんは満足げにくるりと回った。
「ああ、でも温泉…お風呂…何とかして入りたーい」
温泉の中の巨大生物に気を付けながら入る方法を考え始めた私をクロさんは呆れたように見ていた。